赤い姫と黒い皇子2
(2017-02-21 20:26:27)
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文学 |
红公主与黑王子
小川未明
やさしい心のお姫さまは、片目であるという皇子の身の上をかわいそうにも思われました。そして、お嫁にいって、なぐさめてあげようかとも思われました。毎日のように、赤い姫君は、ぼんやりと遠くの空をながめて、物思いに沈んでいられました。すると、高い黒のシルクハットをかぶって、黒の燕尾服を着て、黒塗りの馬車に乗った皇子の幻が浮かんで、あちらの地平線を横切るのが、ありありと見えるのでありました。
同时,心地善良的公主对独眼王子的遭遇很是同情。还想着嫁过去的话,要好好安慰他。每天,红公主殿下都望着远方的天空发呆,若有所思。突然,公主眼前清晰地看见那位王子头戴黑色的高礼帽,身着黑色的燕尾服,乘坐黑漆漆的马车穿过地平线。那只是王子的幻影。
雨の降る日も、この黒塗りの馬車は駆けていきました。風の吹く日も、黒のシルクハットをかぶって燕尾服を着た皇子を乗せた、この馬車の幻は走っていきました。
即使是下雨天,那黑漆漆的马车也一直驰骋着。起风时,那马车的幻影也还是搭载着一身黑色燕尾服和头戴黑色高礼帽的王子奔走过来。
お姫さまは、もう、どうしたら、いちばんいいであろうかと迷っていられました。
公主已经完全不知如何是好了。
「ああ、こうして、幻にうなされるというのも、わたしの運命であろう。」と、あるときは、思われました。
有的时候,公主感叹起:“啊!或许就这样被陷入幻影里,也是我的命运吧!”
「わたしさえ、我慢をすれば、それでいいのだ。」と、あるときは考えられました。そのうちに、皇子のほうからは、たびたび催促があって、そのうえに、たくさんの金銀?宝石の類を車に積んで、お姫さまに贈られました。また、お姫さまは、二ひきの黒い、みごとな黒馬を皇子に貢ぎ物とせられたのです。
“我只要克制住自己就好了。”公主时而这样认为。不久,王子不停派人催促婚事,还把一满车的大量金银珠宝赠送给公主。对此,公主将两匹英俊的黑马作为回礼献给王子。
いよいよ、赤い姫君と黒い皇子とがご結婚をなされるといううわさがたちました。そのとき、一人のおばあさんの予言者が、姫君の前に現れて申しあげたのであります。このおばあさんは、これまでいろいろなことについて予言をしました。そして、みんなそれが当たったというので、この国の人々からおそれられ、よく知られていました。
很快,红公主殿下与黑王子将结婚的消息传得沸沸扬扬。这时,一位老婆婆出现在公主面前,声称是预言者。这位老奶奶,在此之前预言了许多事情。而且全都猜中了,所以受到全国百姓的敬畏,广为人知。
「このご結婚は、赤と黒との結婚です。赤が、黒に見込まれている。お姫さま、あなたは、皇子に生き血を吸われることとなります。この結婚は不吉でございます。もし、ご結婚をなされば、この国に疫病が流行します。」と、おばあさんの予言者はいいました。
“这件婚事,是红与黑的结婚。红会被黑吸收。公主殿下,您的鲜血会被王子吸走。这是不吉利的婚事。如果成婚的话,全国会瘟疫肆虐的。”老婆婆预言道。
お姫さまは、これを聞いて、心配なされました。どうしたらいいだろうかと、それからというものは、毎日、赤い、長いそでを顔にあてては、泣いて悲しまれたのであります。
公主一听,焦虑不安,手足无措。每天用长长的红袖子擦拭一脸的哭泣和哀伤。
皇子とお姫さまの、約束の結婚の日が、いよいよ近づいてまいりました。お姫さまは、どうしたらいいだろうかと、お供の人々におたずねになりました。
距离两人的婚期越来越近了。公主开始向下人们征求意见。
このとき、黒いシルクハットをかぶって、燕尾服を着た皇子を乗せた、黒い馬車の幻が、ありありとお姫さまに見えたのであります。お姫さまはぞっとなされました。
这时,公主眼前又清晰地浮现出幻影了,那位王子头戴黑色的高礼帽,身着黑色的燕尾服,驾着黑漆漆的马车。公主直打哆嗦。
「なんでも執念深い皇子だといいますから、お姫さまは、早くこの町から立ち去って、あちらの遠い島へお逃げになったほうが、よろしゅうございましょう。あちらの島は、気候もよく、いつでも美しい、薫りの高い花が咲いているということであります。」と、お供のものは申しました。
“王子殿下对您是何等执着,所以,公主殿下还是尽早离开城镇,到远方那座岛上躲避一下,会更稳妥啊!那岛上,气候宜人,花儿遍地芳香。”一名下人回话说。