その山越えはてて野の池 [1] のほとりに行きつきたるほど、日は山の端にかかりたり。「今は宿とれ」とて、人びとあかれて、宿もとむる。「所はしたにて、いとあやしげなるげすの小家なむある」といふに、「いかがはせむ」とて、そこに宿りぬ。皆人びと京にまかりぬとて、あやし男ふたりぞ居たる。その夜もいも寢ず。この男出で入りしありくを、奥の方なる女ども、「などかくありかるぞ」と問ふならば、「いなや、心も知らぬ人を宿し奉りて、かまばし [2] もひきぬかれなば、いかにすべきぞと思ひて、え寢でまはりありくぞかし」と、寢たると思ひて言ふ。聞くに，いとむくむくしくをかし。

翻越那座山来到野池附近时，太阳便也已经落下山头了，我就说了：“如此的话，那就在此住下吧。”大家便分头去找住宿处。“这里前不着村后不着店的，只有很是粗劣的下人的小屋。”“那也没办法的呀。”只得将就住在这里了。这户人家说是家里的人都到京城去了，只有相貌猥琐的男人似乎还有谁两个人在。那天晚上我也睡不着，这男人一会儿出去一会儿进来的不消停地打转着，在里面的女人（他家的）就问：“为什么一直这样来回走着呀？”“啊呀，一想到家里还留宿有什么来历也不清楚的人，万一家里丢失了瓦罐什么的那可是怎么办？便怎么也睡不着了，只得四处巡视了。”他以为我们都睡着了如此说着。我听了这些话觉得非常的生气，但也觉得特别的好笑。

また聞けば、侍従の大納言 [3] の御むすめ [4] ，なくなりたまひぬなり。殿の中将 [5] のおぼしなげくなるさま、わがものの悲しきをりなれば、いみじくあはれなりと聞く。上りつきたりし時、「これ手本にせよ」とて、この姬君の御手 [6] を取らせたりしを、「さ夜ふけて [7] 寢ざめざりせば」など書きて、

鳥辺山 [8] 谷に煙の燃え立たばはかなく見えし我と知らなむ

と言ひ知らずをかしげにめでたく書きたまへるを見、いとど涙を添へまさる。

又听到别人说侍从大納言家的小姐故世了。每逢想到（身为丈夫的）藤原有家唉声叹气的样子，联想到自己诸事都感到悲哀的时候，便打心里觉得感同身受。这是上京都的时候（有人向我）送来的这位小姐的手迹，说：“把这个做摹本吧”，上面写的是“如果夜深了突然不能醒来……”等等、

如果日后鳥边山的深谷腾起烟气希望你知道那是行将就木的我升遐的雲霞所化

写得确实很好，似有未尽绵绵旨意，看了这个更加使我泪流不止了。

唐土 [9] ケ原といふ所も、砂子のいみじう白きを二三日行く。夏は大和撫子 [10] の、こくうすく錦をひけるやうになむ咲きたる。これは秋の末なれば見えぬといふに、なほ、所どころはうちこぼれつつ、あはれげに咲きわたれり。唐土ケ原に大和撫子しも咲きけむこそなど、人びとをかしがる。