一年入道殿 [1] の大堰川 [2] の逍遥 [3] せさせ給ひしに、作文 [4] の船、管弦の船、和歌の船と分たせ給ひて、その道に妙たる人 [5] びとを乗せさせ給ひしに、公任 [6] の大納言殿の参り給へるを、入道殿、かの大納言、いづれの船にか乗らるべきと宣はすれば、和歌の船に乗り侍らむと宣ひて、よみ給へるぞかし。

をぐら山 [7] 嵐 [8] の風の寒ければもみぢの錦きぬ人ぞなき

申し承るかひありて、遊ばしたりな。御身らも宣ふなるは、作文の船にぞ乗るべかりける。さてか许 [9] の詩を作りたらましかば、名の上がらむことも勝りなまし。口惜しかりけるわざかな。さても殿のいづれにとか思ふと宣はせしになむ、われながら心驕 [10] せられしと宣ふなる。

入道殿、御嶽 [11] に参らせ給へりし道にて、帥殿 [12] の方より便なき事 [13] あるべしと聞こえて、常よりも世を虞れさせ給ひて、平かに帰らせ給へるに、かの殿も、かかる事聞こえたりけり、と人の申せば、いと傍痛く思されながら、然りとてあるべきならねば、参り給へり。道のほどの物語などせさせ給ふに、帥殿いたく臆し給へる御気色のしるきを、をかしくも、またさすがにいとほしくも思されて、久しく双六 [14] 使う奉らで、いとさうざうし [15] きに、今日遊ばせとて、双六の盤を召しておし拭はせ給ふに、御気色こよなうなほりて見え給へば、殿をはじめ奉りて、参り給へる人びと、あはれになむ見奉りける。さばかりの事を聞かせ給はむには、少し凄しく持て成させ給ふべけれど、必ず人のさ思ふらむ事をば、押し返へし、懐かしく持て成させ給ふなり。いみじき御かけ物どもこそ侍りけれ。かやうの事さへ、帥殿は常に負け奉らせ給ひてぞ、罷でさせ給ひける。

有一年入道公组织在大堰川游船宴遊时，将来宾按所长分坐于精于作诗的船、音乐的船及和歌的船。在看到藤原公任大納言也来了，入道公就说了“公任大納言该上那条船呢？”公任大納言说：“乗和歌的船吧。”公任所吟诵的和歌是

两岸小仓山和岚山吹来的风已颇料峭无人身上不沾有飘来的枫叶简直像是身着锦衣

入道公说是您自己想乗和歌的船的，太好啦，您吟诵得真是太好了。您自己也说：“如果乘作诗的船就好了，而且如果写出和这首相同的诗的话，评价肯定会更高的，做了不无遗憾的事了。还有，入道公在问我‘打算乘哪一类的船呀’的时候，连我自己也不得不感到踌躇满志的呢。”

入道公在参谒御嶽的途中，有流言说伊周他们要策划什么企图报复的事，便吩咐道要比平时更严谨地警戒着。但平安归来后，伊周也好像因为有人说有这样一件事的流言而很担心，觉得又不能放任不顾，便去拜访入道公了。入道公在说了一路情况时，明显地看出伊周非常畏惧的样子。入道公既觉得有趣，又觉得可怜，便说：“好久没打双六了，觉得很不尽兴，今天就打一盘吧。”命人送来双六的盘，在擦拭棋盘的时候，因为看到伊周的神情似乎已经完全改变，入道公自此遂开始对那些前来这里拜见的人表示同情，觉得他们都很可怜。在听到了这么严重的流言的情况下，入道公稍微给与冷淡的待遇，那也是当然之举。但是入道公摈弃是普通人肯定会这样的做法，相反却是亲切的款待。好像是有很好的赌物的，就连这样的事（弈棋），伊周也总是输，只得退席了。