天延二年 [1] 、もがさ [2] の起りたるに煩ひて、前少将 [3] は朝に失せ、後少将 [4] は夕に隠れ給ひしぞかし。一日が内に二人の子を失ひ給へりし母北の方 [5] のおん心地はいかなりけむ、いとこそ悲しう承はりしか。後少将は年頃極めたる道心者にて御座ましけるを、生くべくも覚え給はざりければ、母上に申し給ひけるやう、「暂し法花経誦し奉らむの本意侍れば、必ず返りまうでくべし」と宣ひて、方便品 [6] を読み奉り給ひてぞ、失せ給ひける。その遺言を、母北の方、覚えて御座しければ、思ふに人のし奉りてけるにや、枕返し [7] なにやと、例のやうなる有様どもにしてければ、えかへり給はずなりにけり。後に、母北の方のおん夢に見え給へり。いかに悔しく覚しけむな。さて、後ほどへて、賀縁阿闍梨 [8] と申す僧の夢に、この君逹ふたりおはしけるが、この後少将は、いたう心地よげなる様にておはしければ、阿阇梨「君はなど心地よげにてはおはする。母上は君をこそは兄君よりはいみじく恋ひきこえ給ふめれ」と聞えければ

时雨とは蓮の花ぞ散り紛ふなに古里に袂ぬるらむ

など、うちよみ给ひける。

天延二年，因天花的流行，不幸感染后前少将在上午后少将在午后二人相继而亡，一天中连丧二子，这对母亲的心中是怎样的打击啊！真的是悲痛欲绝。因为後少将长年来就很是信奉佛道的，但好像因为觉得功力不够，便对母亲说：“我还有一个心愿，就是在这个世上要再读一遍法华经，那以后我一定会再回到这个世上的”，在念完法华经的方便品后也就西行了。由于老夫人被这个遗言弄得方寸大乱手足无措，也许在这段时间里是她这边的哪一个人处理的，只是采取了移枕等普通的做法，後少将最终也没能转圜就这样亡故了。后来老夫人做梦梦见了后少将，那心里是多麽的悔恨呀。如此，过了一段时期后，有一个叫賀縁的高僧梦见了这两位少爷，後少将看上去神情很是安定祥和，高僧就问道：“为什么你看上去好像很是轻松愉快？你母亲对你的担心可比你的哥哥更甚呢。”後少将吟诵道

在这莲花的花瓣宛若阵雨降落的净土上无忧无虑地生活着为什么娑婆世界还会有人为我而哭泣