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寺田寅彦  花物语(二)

(2010-07-24 14:08:21)
标签:

花物語

青空文库

寺田寅彦

日本散文

分类: 寺田寅彦专辑

花物语(二)

寺田寅彦

翻译:王志镐

五.芭蕉花

 

  天一放晴,就突然热起来。从早上起,一直在写一封信,做什么都没精神。几次试着跪坐在书桌前,马上苦不堪言,终于躺了下来。凉风不时吹过,屋檐下玻璃的风铃叮当作响。凉床前,罩式蚊帐中俊坊的脸红彤彤的,脑袋从枕头上滚落下来,脸朝下躺着。我走出套廊,庭院里已有一半阴影,阴影和日光的边界,蚂蚁在转着圈爬进爬出。前几天,从上田家要来的大理花刚要发芽的样子,却不长大。防雨套窗前,芭蕉伸出了巨大的叶片,其中一棵开出了今年的花。肥大而厚实的花瓣只打开了三瓣四瓣,也许等都开放了,就腐朽了吧,好像已经有一点儿枯萎了。有两三只蚂蚁爬在上面。俊坊突然哭了起来,我张望了一下,他坐在蚊帐里哭着,将手脚伸了出来。妻子从厨房 飞奔出来,男孩自己抱着牛奶瓶,放在伸出来的膝盖上,咬着奶头咕嘟咕嘟不息气地喝着。一边将泪汪汪的双眼在父母的脸上均等地扫视着,一边喝着牛奶。喝完了,似乎想起什么似的,又哭了起来,看上去还未睡醒呢。妻子背负着阿俊,站在套廊上说:“芭蕉花,孩子啊,芭蕉花开了呀!这一朵多么大啊!结出果实来,那果实不能吃啊!”孩子停止哭泣,指着芭蕉花说:“摸!摸!”妻子又说:“是啊!只有人在花还未开就死去了呢!”一边摇着背上的孩子,一边说“妈!”孩子也仿效着说“妈!”我们两人都笑了,孩子也笑了。于是又指着芭蕉花说“摸!摸!”

 

 

     五 芭蕉の花

 

晴れ上がって急に暑くなった。朝から手紙を一通書いたばかりで何をする元気もない。なんべんも机の前へすわって見るが、じきに苦しくなってついねそべってしまう。時々涼しい風が来て軒のガラスの風鈴が鳴る。床の前には幌蚊帳(ほろがや)の中に俊坊が顔をまっかにして枕(まくら)をはずしてうつむきに寝ている。縁側へ出て見ると庭はもう半分陰になって、陰と日向(ひなた)の境を蟻(あり)がうろうろして出入りしている。このあいだ上田(うえだ)の家からもらって来たダーリアはどうしたものか少し芽を出しかけたままで大きくならぬ。戸袋の前に大きな広葉を伸ばした芭蕉(ばしょう)の中の一株にはことし花が咲いた。大きな厚い花弁が三つ四つ開いたばかりで、とうとう開ききらずに朽ちてしまうのか、もう少ししなびかかったようである。 蟻(あり)が二三匹たかっている。俊坊が急に泣き出したからのぞいて見ると蚊帳(かや)の中にすわって手足を投げ出して泣いている。勝手から妻が飛んでくる。坊は牛乳のびんを、投げ出した膝の上で自分にかかえて乳首から息もつかずごくごく飲む。涙でくしゃくしゃになった目で両親の顔を等分にながめながら飲んでいる。飲んでしまうとまた思い出したように泣き出す。まだ目がさめきらぬと見える。妻は俊坊をおぶって縁側に立つ。「芭蕉(ばしょう)の花、坊や芭蕉の花が咲きましたよ、それ、大きな花でしょう、実がなりますよ、あの実は食べられないかしら。」坊は泣きやんで芭蕉の花をさして「モヽモヽ」という。「芭蕉は花が咲くとそれきり枯れてしまうっておとうちゃま、ほんとう?」「そうよ、だが人間は花が咲かないでも死んでしまうね」といったら妻は「マア」といったきり背をゆすぶっている。坊がまねをして「マア」という。二人で笑ったら坊もいっしょに笑った。そしてまた芭蕉の花をさして「モヽモヽ」といった。

 

野玫瑰

  那是在夏天的山路上旅行的时候发生的事。越过山顶,风突然停止了,变得奇热无比。沿着狭窄的山谷之间阶梯式并列着的、穿插在山田边上的小道,蜻蜓的翅膀在闪闪发光,不时有蛇从手边的地方爬出。覆盖着山谷的漆黑天空,不时有白云飘过。喉咙奇疼难忍。道旁田地边上,小水沟流淌着,带着金色阳光的水面,覆盖着青色的表皮,反射着暗淡的光芒。在行进之中,横切道路一侧通向山内的长着茂密树林的小道,发现落在田里的清泉的细流时,却毫无理由地高兴起来。立刻将穿着草鞋的脚浸在了水里,一股凉气浸透了全身。稍稍拨开树丛走入道路一旁,这里只有很特别的栎树、橡树,黑黝黝的,茂密无比。长满苔藓的地方,螃蟹在爬行着。从悬崖上渗出的水,从美丽的凤尾草的叶端滴落下来,落入下面岩石低洼处的水坑,多余的水溢出来,钻到苔藓下面流走了。小小的竹舀子浮在水面,被水珠敲打着。我紧紧抓住舀子,品尝着美味的、冰冷的、使人断肠的泉水。离开悬崖底下不远处,有一株大大的野玫瑰,盛开着洁白的花朵。我靠近它,吸着它那强烈的香味,摘了一小枝。觉得有人的迹象,瞅了一下,直到现在一直没注意,在茂密的树阴里,有一个砍柴的女子正在休息。她将背负的柴火倚靠在绝壁上,裹着绑腿的脚正要跨出的样子,一动不动地向这边看着。因为之前没想到,我惊奇地回头看着。缝补过的衣服,短短的下摆用绳腰带扎着。洁白的布手巾扎在眉心,下面的黑发垂在额头。不用多想,一定是一张美丽的脸。这不是能在都市见到的健全的脸色,多少被阳光晒过,更显美丽。当我正视着她那毫不畏惧的黑眼珠时,总觉得有一种被盘问的感觉,不由得懦弱地鞠了个躬。蝉鸣叫着,酷热更加厉害了。带着刚才摘的野玫瑰,又走了两三条街,从对面走上来一位背负着柴火的年轻人。背负着与身高不成比例的柴火,晃晃悠悠地走来。健壮黑红的脸,裹着缠头巾,腰间磨的飞快的镰刀熠熠生辉。在相交叉的时候,他说了句“麻烦您了!”并朝我的脸看了一眼。不一会,他又回过头来看,年轻人已攀到了清泉近旁,即使在那边也回过头来,朝这里看着。不知是什么原因,我将手里拿着的野玫瑰扔在地上,急急忙忙地朝前面清泉那边走去。

 

     六 野ばら

 

夏の山路を旅した時の事である。峠を越してから急に風が絶えて蒸し暑くなった。狭い谷間に沿うて段々に並んだ山田の縁を縫う小道には、とんぼの羽根がぎらぎらして、時々蛇(へび)が行く手からはい出す。谷をおおう黒ずんだ青空にはおりおり白雲が通り過ぎるが、それはただあちこちの峰に藍色(あいいろ)の影を引いて通るばかりである。 咽喉(のど)がかわいて堪え難い。道ばたの田の縁に小みぞが流れているが、金気を帯びた水の面は青い皮を張って鈍い光を照り返している。行くうちに、片側の茂みの奥から道を横切って田に落つる清水(しみず)の細い流れを見つけた時はわけもなくうれしかった。すぐに草鞋(わらじ)のまま足を浸したら涼しさが身にしみた。道のわきに少し分け入ると、ここだけは特別に樫(かし)や楢(なら)がこんもりと黒く茂っている。 苔(こけ)は湿って蟹(かに)が這(ほ)うている。 崖(がけ)からしみ出る水は美しい羊歯(しだ)の葉末からしたたって下の岩のくぼみにたまり、余った水はあふれて苔の下をくぐって流れる。小さい竹柄杓(たけび

しゃく)が浮いたままにしずくに打たれている。自分は柄杓にかじりつくようにして、うまい冷たいはらわたにしむ水を味おうた。少し離れた崖の下に一株の大きな野ばらがあって純白な花が咲き乱れている。自分は近寄って強いかおりをかいで小さい枝を折り取った。人のけはいがするのでふと見ると、今までちっとも気がつかなかったが、茂みの陰に柴刈(しばか)りの女が一人休んでいた。背負うた柴を崖(がけ)にもたせて脚絆(きゃはん)の足を投げ出したままじっとこっちを見ていた。あまり思いがけなかったので驚いて見返した。継ぎはぎの着物は裾短(すそみじ)かで繩(なわ)の帯をしめている。白い手ぬぐいを眉深(まぶか)にかぶった下から黒髪が額にたれかかっている。思いもかけず美しい顔であった。都では見ることのできぬ健全な顔色は少し日に焼けていっそう美しい。人に臆(おく)せぬ黒いひとみでまともに見られた時、自分はなんだかとがめられたような気がした。思わずいくじのないお辞儀を一つしてここを出た。 蝉(せみ)が鳴いて蒸し暑さはいっそうはげしい。今折って来た野ばらをかぎながら二三町行くと、向こうから柴を負うた若者が一人上って来た。身のたけに余る柴を負うてのそりのそりあるいて来た。たくましい赤黒い顔に鉢巻(はちまき)をきつくしめて、腰にはとぎすました鎌(かま)が光っている。行き違う時に「どうもお邪魔さまで」といって自分の顔をちらと見た。しばらくして振り返って見たら、若者はもう清水(しみず)のへん近く上がっていたが、向こうでも振りかえってこっちを見た。自分はなんというわけなしに手に持っていた野ばらを道ばたに捨てて行く手の清水へと急いで歩いた。

 

常山的花

 

  还是在上小学的时候,为了收集昆虫,与朋友做了伙伴。我死乞白赖地向母亲要了破蚊帐做捕虫网,不畏夏伏天猛烈的太阳,扛在肩上,每天出去捕捉虫子。蝶蛾与甲虫类最多栖息在城山之中,在漫长的白天,整天都有。在二园三园的草原,有大量珍贵的蝴蝶和蚱蚂。稍微走进草木茂密处,树干上可以发现各种各样的甲虫。金花虫、金龟子、磕头虫的种类有许多。草木强烈的清香扑鼻而来,我心情激动地走着,寻找着这样的虫子。捕捉来的虫子用热水和樟脑杀死,漂亮地排列在用点心盒做的标本箱中。随着标本箱的增加,觉得乐不可支。捕捉虫子回来,身上汗水如洗桑拿似的,脸上如火燎似的。怎么会如此喜欢虫子,母亲至今还数落着我过去的一个故事。岁月流逝,趣事重提,当时发现和捕捉珍贵虫子的强烈喜悦依然如旧。曾经进入城山山脚下,面对着沟渠的黑暗丛林中,有一株高大的常山木,树梢上开满了偏桃红色的花。散落的花随风飘落,散布在水边和腐朽的沉船上,美不胜收。这根树干上,到处有虫子蛀入的洞穴,洞口被细小的木蠹及其粪便一起毁坏了,一股臭味扑鼻而来。在树干的高处,巨大而漂亮的独角仙竖立着威严的犄角停了下来,发现的时候真是高兴。我的标本箱中,好的独角仙已经一只也没有了,我心里蹦蹦跳着,举起了网兜。网兜一点点达到目标,洋洋得意地捉住了第一只,急忙放入腰间挂着的昆虫笼子,怀着隐藏不住的喜悦走出了森林。一直来到三圆石阶的下面,遇到一位从对面沿着树阴走来、手里牵着一个小孩、撑着一把美丽的蝙蝠伞的女子。她是城里小康家庭的妻女俩吧。撑着伞的手挎着一个药瓶,一只手牵着孩子走着。大大的新麦秸帽子的细绳系在孩子可爱的下巴底下,穿着洁白的西式服装。她看见了我提着的昆虫笼子,便抛开了母亲的手过来瞧,然后瞪大了眼睛,朝母亲的方向跑去,她将袖子用力向上拉,想了想,又过来瞧昆虫笼子。尽管母亲早已过来招呼,她却怎么也不肯离开我的旁边。强迫拉着她走到山路的正中间,她涨红了脸,终于哭了出来。母亲照样无计可施,一味斥责着。这时,我打开昆虫笼子的盖子,将独角仙引出来,并在路边拔了一根相扑草,牢牢地系在独角仙的犄角上。然后,说了声“来啊!”将它放到了孩子的手中。孩子停止了哭泣,脸上现得又是害羞,又是高兴的样子。母亲很吃惊,一边斥责孩子,一边向我道谢。我不知为什么也变得害羞起来,一边一声不吭地摇了摇昆虫笼子,一边跑了起来。又像是高兴,又像是舍不得,那是一种从来没有的感觉。从那以后,屡次走过常山森林下面,再也没有见过像那次那样漂亮的独角仙,也再也没有遇到过那次见过的娘儿俩。

 

 

  七 常山の花

 

まだ小学校に通(かよ)ったころ、昆虫(こんちゅう)を集める事が友だち仲間ではやった。自分も母にねだって蚊帳(かや)の破れたので捕虫網を作ってもらって、土用の日盛りにも恐れず、これを肩にかけて毎日のように虫捕(むしと)りに出かけた。 蝶蛾(ちょうが)や甲虫(かぶとむし)類のいちばんたくさんに棲(す)んでいる城山(しろやま)の中をあちこちと長い日を暮らした。二の丸三の丸の草原には珍しい蝶やばったがおびただしい。少し茂みに入ると樹木の幹にさまざまの甲虫が見つかる。玉虫、こがね虫、米つき虫の種類がかずかずいた。強い草木の香にむせながら、胸をおどらせながらこんな虫をねらって歩いた。 捕(と)って来た虫は熱湯や樟脳(しょうのう)で殺して菓子折りの標本箱へきれいに並べた。そうしてこの箱の数の増すのが楽しみであった。虫捕りから帰って来ると、からだは汗を浴びたようになり、顔は火のようであった。どうしてあんなに虫好きであったろうと母が今でも昔話の一つに数える。年を経ておもしろい事にも出会うたが、あのころ珍しい虫を見つけて捕えた時のような鋭い喜びはまれである。今でも城山の奥の茂みに蒸された朽ち木の香を思い出す事ができるのである。いつか城山のずっとすそのお堀(ほり)に臨んだ暗い茂みにはいったら、一株の大きな常山木(じょうざんぼく)があって桃色がかった花がこずえを一面におおうていた。散った花は風にふかれて、みぎわに朽ち沈んだ泥船(どろぶね)に美しく散らばっていた。この木の幹はところどころ虫の食い入った穴があって、穴の口には細かい木くずが虫の糞(ふん)と共にこぼれかかって一種の臭気が鼻を襲うた。木の幹の高い所に、大きなみごとなかぶと虫がいかめしい角(つの)を立てて止まっているのを見つけた時はうれしかった。自分の標本箱にはまだかぶと虫のよいのが一つもなかったので、胸をとどろかして網を上げた。少し網が届きかねたがようよう首尾よく捕(と)れたので、腰につけていた虫かごに急いで入れて、包

みきれぬ喜びをいだいて森を出た。三の丸の石段の下まで来ると、向こうから美しい蝙蝠傘(こうもりがさ)をさした女が子供の手を引いて木陰を伝い伝い来るのに会うた。町の良い家の妻女であったろう。傘を持った手に薬びんをさげて片手は子供の手を引いて来る。子供は大きな新しい麦藁帽(むぎわらぼう)の紐(ひも)をかわいい頤(あご)にかけてまっ白な洋服のようなものを着ていた。自分のさげていた虫かごを見つけると母親の手を離れてのぞきに来たが、目を丸くして母親のほうへ駆けて行って、袖(そで)をぐいぐい引っぱっていると思うと、また虫かごをのぞきに来た。母親は早くおいでよと呼ぶけれども、なかなか自分のそばを離れぬ。しいて連れて行こうとすると道のまん中にしゃがんでしまってとうとう泣き出した。母親は途方にくれながらしかっている。自分はその時虫かごのふたをあけてかぶと虫を引き出し道ばたの相撲取草(すもうとりぐさ)を一本抜いて虫の角(つの)をしっかり縛った。そして、さあといって子供に渡した。子供は泣きやんできまりの悪いようにうれしい顔をする。母親は驚いて子供をしかりながらも礼をいうた。自分はなんだかきまりが悪くなったから、黙ってからになった虫かごを打ちふりながら駆け出したが、うれしいような、惜しいような、かつて覚えない心持ちがした。その後たびたび同じ常山木(じょうざんぼく)の下へも行ったが、あの時のようなみごとなかぶと虫はもう見つからなかった。またあの時の親子にも再び会わなかった。

 

八.龙胆花

  有一位同年级同学藤野。在去暑期夏令营参加丛林演习时,经常与我在同一组,走着去作测量等工作。他看上去病泱泱的,个子瘦长,因此比起身体来,脑袋很小,经常排在前面做步行队列的排头兵。他不爱说话,始终呆呆地像是在考虑着什么事情,在其他一般来说很快活的伙伴之中,他不受欢迎。我看着这男孩的脸,不知为什么心里好像有点可怜他。关于这男孩的过去和现在的情况,本人对别人从不提起,也从未从别人那里听到什么。有一年夏天,在丛林演习的林间道路铺设实施进行中发生了一件事。藤野与另外三四个人编成一组,在山间小屋里一起生活了两个星期。说是山间小屋,其实只是在山崖的斜坡上将圆木横着垒起来,在这上面铺上席子和杉树叶,下面垫上一层木板,在黑暗中用毛毯裹着无所事事地躺着。小屋的角落里,用收集来的石头垒起了炉灶,这里是来往的樵夫做饭的地方。做完一天的工作回来,从悬崖小道上抬头看见从小屋里冉冉升起的青烟,别提有多高兴。即使是这样的小屋,也给人以回家的感觉。一到夜里,从天井的圆木吊下来的灯被群集的小虫追逐着,我们经常将饼干罐头放在正中间,一边进行必要的计算和制图,一边爬在地上闲聊着。经常谈论学校的传闻,还有模仿教授们的言行,大家大笑着,热闹非凡,还有活灵活现、奕奕如生的色情故事和即时新闻。在这种场合,藤野对别人讲的故事不听不闻,脸上现出不安的神情,似乎在考虑着什么,有时从衣袋里拿出练习笔记本,不停地写着什么。有一天夜里,半夜醒来,山里静悄悄的,月光照在炉灶上。小屋的外面有走路的脚步声,我从席子的缝隙偷偷望出去,看见青色的月光下,藤野在信步而行。每天一起床,一吃完浇上酱汤的饭,他就带上经纬仪和旗杆出门了。到了目的地,他放下器械,开始轮流观测。藤野在别人当班时,有时坐在树墩子上,有时躺在草丛中,总是好像在思考着什么。终于轮到他当班了,他急忙出来用器械观察,以极其热心的程度阅读度数,不管什么目标,都经常不出任何读数上的差错。一旦等着做笔记的他的伙伴发现观察错了目标或提醒他读数有错,他的脸便涨得通红,感到非常羞耻,变得战战兢兢。嘴里说着失敬了、失敬了,大家都想尽量不让藤野去阅读,可是行不通,还是轮流去阅读。于是有一次不知为什么错了五回,这一次他感到非常羞耻,一脸悲伤。而且抱着裤子的膝盖陷入沉思。就这个样子,两星期时间大部分过去了,像是在即将撤退回去之前几天,一天下着倾盆大雨,大雾弥漫,什么工作也没有。正当我们在小屋闭门不出,倒头大睡时,藤野的笔记本落在了我的旁边,我毫不在意地捡起一看,只见里面夹着一枚画着山里的许多龙胆花的书签,有各种各样乱涂的画。其中在画家的女人头上有几朵银杏花,还有“命运”之类的字用各种各样的书写体大量地、漫不经心地涂写着。脸冲上睡着的藤野起身一看,连一下子变白了,但什么也没说。

 

 

 

     八 りんどう

 

同じ級に藤野(ふじの)というのがいた。夏期のエキスカーションに演習林へ行く時によく自分と同じ組になって測量などやって歩いた。見ても病身らしい、背のひょろ長い、そしてからだのわりに頭の小さい、いつも前かがみになって歩く男であった。無口で始終何かぼんやり考え込んでいるようなふうで、他の一般に快活な連中からはあまり歓迎されぬほうであった。しかしごく気の小さい好人物で柔和な目にはどこやら人を引く力はあった。自分はこの男の顔を見ると、どういうわけか気の毒なというような心持ちがした。この男の過去や現在の境遇などについては当人も別に話した事はなし、他からも聞いた事はなかったが、何となしに不幸な人という感じが、初めて会うた時から胸に刻みつけられてしまった。ある夏演習林へ林道敷設の実習に行った時の事である。藤野のほかに三四人が一組になって山小屋に二週間起臥(きが)を共にした。山小屋といっても、山の崖(がけ)に斜めに丸太を横に立てかけ、その上を蓆(むしろ)や杉葉(すぎば)でおおうた下に板を敷いて、めいめいに毛布にく

るまってごろごろ寝るのである。小屋のすみに石を集めた竈(かまど)を築いて、ここで木こりの人足が飯をたいてくれる。一日の仕事から帰って来て、小屋から立ちのぼる青い煙を岨道(そばみち)から見上げるのは愉快であった。こんな小屋でも宅(うち)へ帰ったような心持ちになる。夜になると天井の丸太からつるしたランプの光に集まる虫を追いながら、必要な計算や製図をしたり、時にはビスケットの罐(かん)をまん中に、みんなが腹ばいになってむだ話をする事もある。いつもよく学校のうわさや教授たちのまねが出てにぎやかに笑うが、またおりおり若やいだなまめかしいような話の出る事もあった。こんな時藤野は人の話を聞かぬでもなく聞くでもなく、何か不安の色を浮かべて考えているようであるが、時々かくしから手慣れた手帳を出してらく書きをしている。一夜夜中に目がさめたら山はしんとして月の光がの所にさし込んでいた。小屋の外を歩く足音がするから、蓆のすきからのぞいて見ると、青い月光の下で藤野がぶらりぶらり歩いていた。毎朝起きるときまりきった味噌汁(みそしる)をぶっかけた飯を食ってセオドライトやポールをかついで出かける。目的の場所へ着くと器械をすえてかわるがわる観測を始める。藤野は他人の番の時には切り株に腰をかけたり草の上にねころんだりしていつものように考え込んでいるが、いよいよ自分の番になると急いで出て来て器械をのぞき、熱心に度盛りを読んでいるが、どういうものか時々とんでもない読み違いをする。ノートを控えている他の仲間から、それではあんまりちがうようだがと注意されて読み違えたことに気がつくと、顔をまっかにして非常に恥じておどおどする。どうも失敬した失敬したと言い訳をする。なるべく藤野には読ませぬようにしたいとだれも思ったろうが、そういうわけにも行かぬのでやはり順番で読ませる。すると五回に一度は何かしら間違えてそのたびに非常に恥じて悲しい顔をする。そしてズボンのひざをかかえていっそう考え込むのである。こんなふうで二週間もおおかた過ぎ、もう引き上げて帰ろうという少し前であったろう。一日大雨がふって霧が渦巻(うずま)き、仕事も何もできないので、みんな小屋にこもって寝ていた時、藤野の手帳が自分のそばに落ちていたのをなんの気なしに取り上げて開いて見たら、山におびただしいりんどうの花が一つしおりにはさんであって、いろんならく書きがしてあった。中に銀杏(いちょう)がえしの女の頭がいくつもあって、それから Fate という字がいろいろの書体でたくさん書き散らしてあった。仰向きに寝ていた藤野が起き上がってそれを見ると、青い顔をしたが何も言わなかった。

 

九.楝树花

  有一年夏天,我因为脑子不好,在亲属的照料下,去乡下玩了大约有一个月。屋前流淌着发出响声的清澈的水沟。狭窄的村间小道的对面一侧,是一片青田,对面可以看见德川家族以前的小小城迹的丘陵。老式的带房顶的门廊近旁,高大的楝树伸展着茂密的树枝,为太阳咄咄逼人的道路准备了清凉的遮荫伞。一天,在酷暑中出了门,到树阴中的木桶屋里,为吊水桶和木桶安箍。清扫干净的道路上,到处是削下来的青竹碎屑和刨花碎屑,楝树花撒了一地。修木桶的是一位有一脸黑麻子的怪癖的男子,布手巾下面的汗衫里,露出黑黑的胸毛、强壮的手腕挥动着木槌。槌子的声音在对面的丘陵中回响着,响遍整个寂静的村子。稻田里,强烈的阳光耀眼地照射着,田野看上去似乎在酷暑中睡着了。朝着这边的罗宇屋走来一个人,将行李卸在修木桶的屋子旁边。他穿着老式样的、由于过于瘦小而胸前合不拢的小仓布西服,腰以下是日本式瘦筒裤绑腿,赤脚穿着草鞋。一顶旧礼帽一直盖到眉梢,脑袋剃得光光的,好像是个僧人。“今天又在捕鲣鱼吗?”罗宇屋的搭话说。修木桶的回答“哪能捕呢?这些日子即使捕,也都要用汽船装运到上游去,这儿的河口是排卵的。”一边说一边通通地敲着桶。正在门廊的房梁上筑巢的燕子从田野飞回来,又飞了出去。罗宇屋的叼着烟袋嘴,很钦佩似的眺望着,说:“鸟类中再没有比燕子更让人钦佩了。”将前面搁置的话题又提了起来。说是村子里的老房子,燕子从去年开始筑巢,有一天主人对燕子戏言道:“您长年在我家借宿,偶尔也该送一个礼物给我,怎么样?”于是,第二年燕子回来的时候,正好赶上主人在吃饭,飞过膳食上面时,落下了一粒小小的树种。主人一点也没有注意,将它抛到了庭院里,马上在这里长出了奇妙的树木。不论是谁都要去看一看,这可是一棵从未听说的奇怪的树。在这棵树的成长过程中,树枝上也好,树叶上也好,都粘附着一大片令人作呕的毛虫,看上去怪可怜的主人将这棵树拔起来,劈成烧洗澡水的引火柴。这时,城里的医生正好经过,也为这遗憾的事情而叹息。在问了是怎么回事之后,说这好像是我国求之不得的麝香啊!

说到这里,他一个人讲完了,煞有介事地样子吹着烟锅。修木桶的一边砰砰敲着木桶,一边一声不吭地听着,这时看了一下自己这边,露出奇怪的眼神,问道:“那么这所谓的麝香,是这树的事情呢,还是毛虫的事情呢?”“嗯,这……麝香还有许多种类嘛!”他这样回答,还说这是谁也弄不明白的事情。修木桶的再怎么问,也得不到回答。敲木桶的声音在对面的丘陵中回响着,楝树花啪啦啪啦地散落在地上。

(明治四十一年十月,子规)

 

     九 楝の花

 

一夏、脳が悪くて田舎(いなか)の親類のやっかいになって一月ぐらい遊んでいた。家の前は清い小みぞが音を立てて流れている。狭い村道の向こう側は一面の青田で向こうには徳川以前の小さい城跡の丘が見える。古風な屋根門のすぐわきに大きな楝(おうち)の木が茂った枝を広げて、日盛りの道に涼しい陰をこしらえていた。通りがかりの行商人などがよく門前で荷をおろし、門流れで顔を洗うたぬれ手ぬぐいを口にくわえて涼んでいる事がある。一日暑い盛りに門へ出たら、木陰で桶屋(おけや)が釣瓶(つるべ)や桶のたがをはめていた。きれいに掃いた道に青竹の削りくずや鉋(かんな)くずが散らばって楝(おうち)の花がこぼれている。桶屋は黒い痘痕(とうこん)のある一癖ありそうな男である。手ぬぐい地の肌着(はだぎ)から黒い胸毛を現わしてたくましい腕に木槌(こづち)をふるうている。槌の音が向こうの丘に反響して静か

な村里に響き渡る。稲田には強烈な日光がまぶしいようにさして、田んぼは暑さに眠っているように見える。そこへ羅宇屋(らうや)が一人来て桶屋(おけや)のそばへ荷をおろす。古いそして小さすぎて胸の合わぬ小倉(こくら)の洋服に、腰から下は股引脚絆(ももひききゃはん)で、素足に草鞋(わらじ)をはいている。古い冬の中折れを眉深(まぶか)に着ているが、頭はきれいに剃(そ)った坊主らしい。「きょうも松魚(かつお)が捕(と)れたのう」と羅宇屋が話しかける。桶屋は「捕れたかい、このごろはなんぼ捕れても、みんな蒸気で上(かみ)へ積み出すからこちらの口へははいらんわい」とやけに桶をポンポンたたく。門の屋根裏に巣をしているつばめが田んぼから帰って来てまた出て行くのを、羅宇屋は煙管(きせる)をくわえて感心したようにながめていたが「鳥でもつばめぐらい感心な鳥はまずないね」と前置きしてこんな話を始めた。村のある旧家につばめが昔から巣をくうていたが、一日家の主人がつばめに「お前には長年うちで宿を貸しているが、時たまにはみやげの一つも持って来たらどうだ」と戯れに言った事があった。そしたら翌年つばめが帰って来た時、ちょうど主人が飯を食っていた膳(ぜん)の上へ飛んで来て小さな木の実を一粒落とした。主人はなんの気なしにそれを庭へほうり出したら、まもなくそこから奇妙な木がはえた。だれも見た事もなければ聞いた事もない不思議な木であった。その木が生長すると枝も葉も一面に気味の悪い毛虫がついて、見るもあさましいようであったので主人はこの木を引き抜いて風呂(ふろ)のたきつけに切ってしもうた。その時ちょうど町の医者が通りかかって、それは惜しい事をしたと嘆息する。どうしてかと聞いてみると、それはわが国では得がたい麝香(じゃこう)というものであったそうな。ここまで一人でしゃべ

ってしまってもっともらしい顔をして煙を輪に吹く。ポンポン桶をたたきながら黙って聞いていた桶屋(おけや)はこの時ちょっと自分のほうを見て変な目つきをしたが、「そしてその麝香(じゃこう)というのはその木の事かい、それともまた毛虫かい」と聞く、「ウーン、そりゃあその、麝香にもまたいろいろ種類があるそうでのう」と、どちらともわからぬ事をいう。桶屋はしいて聞こうともせぬ。桶をたたく音は向こうの丘に反響して楝(おうち)の花がほろほろこぼれる。

 

(明治四十一年十月、ホトトギス)

 

 

 

 

 

 

 

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