『ふろ場の散髪』_椎名誠_Jp-Cn_《综合日语教程》第五册_L5_読み物
(2018-06-06 10:07:39)
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椎名 |
分类: ③日汉-文学翻译 |
『ふろ場の散髪』 椎名誠_著 |
《浴室里的碎发》 Anlan_翻译 |
夏は少年にとって大きな脱皮の季節なのであろう。ひと夏を過ぎると、少年はまた一つ変わっていくのだ。 Anlan_入力_2018 |
夏天对于少年而言是一个蜕变的季节吧。每过一个夏天,少年就变了一个样。 Anlan_翻译_2018 |
七月に夏のシベリア横断の旅から帰ってきたあたりで、岳が急に大人びてきているのに気がついた。すでに声変わりし、顔つきになんとはなしの「男の意志」のようなものが表れてきた。一年前の夏、三宅島でつりをした時に見た無邪気なあどけなさ、といったものはもうあまり見られなくなっていた。 Anlan_入力_2018 |
七月我带着小岳来了一次横贯西伯利亚的旅行。那之后,小岳就愈发有了大人的模样,就连脸上都些微透出了些“男子的坚毅”。去年夏天带他去三宅岛时那般天真无邪模样,已经几乎见不着了。 Anlan_翻译_2018 |
私は今までずっとふろ場で刈っていたしろうと床屋を嫌がるようになったのは、そのシベリアの旅から帰ってすぐのころだった。ぼさぼさにのびた頭を見て、私はいつものように「そろそろ頭刈ろうか。」と気軽な感じで言ったのだ。 Anlan_入力_2018 |
我们家一直以来由我来给小岳剃头,而这次西伯利亚之旅归来不多久,他却不愿意让我来剃头了。那次我见他一头乱蓬蓬的头发,如往常一般随口对他说“差不多该剃啦” Anlan_翻译_2018 |
すると岳は「まだいいよ。」と、私の顔を見ずに言った。 その時はその頭の話をしなかった。二回目は夏休みに入る直前だった。坊主からそのまま三ヶ月ほどのばしっぱなしにしている岳の髪の毛は、頭のてっぺんからすその方まで同じ長さでのびてしまっているので、すその毛が耳に覆いかぶさるほどになっていた。 Anlan_入力_2018 |
听到我说要剃头,他头也没回丢下一句“没关系。” 既然他这么说,当时我就没再提剃头的事儿。在等提起已经是放暑假之前的时候了。小岳三个多月没有理发,原来剃了个光头,现在齐长的头发已经留到领口,完全把耳朵给盖住了。 Anlan_翻译_2018 |
「さあ、そろそろ頭刈ろう。」 と、私は言った。すると岳はその時も私の顔を見ずに「まだいいよ。」と言ったのだ。しかしその頭はもうどこから見ても「まだいいよ。」という状態ではなかった。だれが見ても「もうだめだ。」というようなむさ苦しいかつら頭になっていたのである。 Anlan_入力_2018 |
“来,该剃头啦。”我说到。小岳依旧头是也不回得答道“没关系。”可是那个脑袋怎么看都不像是“没关系”。厚重邋遢的头发跟人偶的发髻似的扣在脑袋上,让谁见了都一定觉得“该剃头啦”。 Anlan_翻译_2018 |
「まだいいよじゃないよ。来い。いっしょにふろ場に来い!」 と、私は何だか妙にいら立ちながら、私を見ようとしないやつの顔をにらみつけた。 Anlan_入力_2018 |
“什么没关系啊。过来,跟我去浴室。” 我莫名地来气,瞪着他,而他依旧没有看我一眼。 Anlan_翻译_2018 |
岳は私の勢いに圧倒されたのかそれ以上抵抗することなく、素直に私の後についてきた。 「そんなみっともない顔しててどうするんだ。」と、わたしは階段を下ろしながら言った。岳はふくれっ面をしていたが、黙って私の言うことを聞いた。 Anlan_入力_2018 |
大概是迫于我的威吓,小岳不再抵抗,跟着我去了浴室。 “你这一脸邋遢的想干嘛呀。”一起下楼的时候我责备道。小岳只是一脸不痛快,默默地跟着。 Anlan_翻译_2018 |
いつものようにふろ場の流しの腰掛に座らせ、わたしはトレーナーのうでをまくった。そして岳に「シャツを脱げ。」と言った。しかし岳は私に背を向けて、腰掛に座ったまま、動こうとしなかった。いつもだったら、私が電気バリカンの用意をしている間に、彼は素早く着ているものを脱ぎ、パンツ一枚になって私に背中を向け、おとなしく頭を刈られるのを待っているのである。 Anlan_入力_2018 |
和往常一样,我让他坐在搓澡的小板凳上,自己则卷起棉毛衫的袖管,说到“把衬衫脱了。”但是他背对着我坐着,一动不动。往常的话,他总是不等我说,在我准备电推刀的时候就利索地脱得只剩一条裤衩,背对着我老老实实地坐着等着剃头。 Anlan_翻译_2018 |
三~四年生のころは、よほど寒い真冬のころのほかは、パンツも脱いだ素っ裸にさせてバリカンを使った。しろうと床屋の問題点は刈った髪の毛がやたらにあっちこっちに散らばってしまうことで、終わった後は思い切りよくシャワーを全身にかけて洗い流してしまう、という方法をとっていたからだ。流れ落ちた髪の毛が排水口に落ちないようにタイルの上から素早くかき集めるのも岳の仕事だった。 Anlan_入力_2018 |
小学三到4年级为止,除非天寒地冻的大冬天,都是让他都是光着屁股剃头。在家里理发最大的问题就是碎发会掉得一身,非得剃完头之后用淋浴好好冲一冲才能把身上的碎发冲掉。而小岳的要做的就是尽快把冲到地上的碎发扒到一处捡起来,免得堵住排水口。 Anlan_翻译_2018 |
「シャツを脱げよ。」 と、その日私は岳に言った。 「脱がないでやると、そのシャツはもう着られなくなるぞ。」 とわたしは追いうちをかけるようにして言った。しかし岳は黙ったままだった。そしてかたくなに→り動こうとしなかった。 Anlan_入力_2018 |
“快把衬衫脱了。”那一天我又对小岳说了一遍。 “不脱掉的话,这件扯衫就没法穿啦。”我又一次命令道。可是小岳一声不吭,动都不动一下。 Anlan_翻译_2018 |
私は彼が腹を立てているらしい、ということを知って、私自身も少し腹を立て始めていた。そこでシャツを着たままでいいから構わず刈ってしまおう、と思った。 Anlan_入力_2018 |
我知道他在闹情绪,而我也开始有点生气了。干脆穿着衬衫剃头好了,我这么想着, Anlan_翻译_2018 |
電気バリカンのプラグを差し込み、少し空回しをした後、岳の頭をわしづかみにし、首の後ろからバリカンを入れていこうとした。するとその時、岳は片手でわしづかみにしている私の手首を逆に握り、頭だけクルリと振り返るとそのまま私をにらみつけた。それは岳には珍しく本当に怒っている、という顔だった。 Anlan_入力_2018 |
把电推刀接上电,举到空中,另一只手摁住小岳的脑袋,准备从后边往上推。就在这时候,小岳反手抓住了那只摁住它脑袋的手,转回头来瞪着我。看他的样子,他是真的生气了,这可十分少见。 Anlan_翻译_2018 |
「なんだ!」 と、私は言った。 「おとうはよ、こんなふうに勝手に自分の好きのように人の頭を刈っていっておもしろいか!」 と、岳は言った。いつになく強い調子だったので、わたしは少しおどろいてしまった。 「どういうことだ?」 と、わたしも成り行き上少し荒々しい口調で言った。 Anlan_入力_2018 |
“怎么了!”我问道。 “爸爸,你像这样随心所欲地把别人剃成光头,很好玩么!”小岳用平时少有的口气说到,让人觉得意外。 “什么意思?”我也不落下风提高调门说到。 Anlan_翻译_2018 |
「おとうはよ、いつも命令ばかりだよな。自分の好きなように命令ばっかりしてよ、命令を聞かないと怒ってよ、それで怒ってばっかりいてよ。」 と、岳は言った。そこまで言うと鼻の付け根のへんを赤くして、私をにらみつけながら不意にぼろぼろと大粒の涙をこぼし始めた。 Anlan_入力_2018 |
“爸爸,你总是在下命令。总是随心所欲地下命令,不听话就你就生气,每次都生气。” 小岳委屈地说到,说到这,鼻翼已经涨红,瞪着我,豆大的眼泪不住地落下来。 Anlan_翻译_2018 |
岳のそんな反応を見るのは初めてだったので、私はそこで本当におどろいてしまった。やつの頭をわしづかみにしていた手をはなし、同時に空回ししていた電気バリカンのスイッチを切った。 Anlan_入力_2018 |
我头一次见到小岳这副模样,吃了一惊,有些无所适从,松开摁在他头上的那只手,同时放下一直举在空中的电推刀,切掉电源。 Anlan_翻译_2018 |
「なんだ?坊主にされるのがいやなのか?」 と、わたしは言った。 「そんなこと言ってないよ。」 岳はわたしをにらみつけるのをやめ、さっきまでそうしていたように、ふろ場の窓に向かって頭をいくらか下げ、しばらく黙り込んだ。 Anlan_入力_2018 |
“怎么了?不喜欢剃光头吗?”我问到。 “不是。”小岳挪开视线,跟开始时一样背对我,面朝浴室的窗户稍稍低下头,默不作声。 Anlan_翻译_2018 |
「じゃあ何だって言うんだ。」 と、わたしは語気をあらくしたまま言った。 「何だっていうんだよ……。」 もう一度言った。 Anlan_入力_2018 |
“那是怎么回事。” 我依旧用高调门问道。 “你要说什么……”我追问了一遍。 Anlan_翻译_2018 |
しかし岳は何も答えなかった。黙っていることで、何となくやつの言おうとしていることがわたしに分かってくれるような気がした。わたしも少し黙り、次に何を言おうか考えた。しかし特に何か効果的な文句がうかんでくるということもなかった。そしてその気配はなんとなく一つのことに固まりつつある。 Anlan_入力_2018 |
小岳没有回答。我觉得他是想通过沉默让我懂得他的心思。我也稍许沉默,想着该说些什么。但是搜肠刮肚也想不到什么有意义的对话,只觉得周围压抑的气氛不断地凝作一团。 Anlan_翻译_2018 |
「もう坊主にするのがいやなのか?」 と、わたしはそのことをもう一度、今度は静かな口調で言った。岳は黙ったままだった。 「いやなのか?」 と、わたしはさらにもう一度言った。 「うん。」 と、岳はわたしに背中を向けたまま低い声で言い、足元のタイルを足の親指でゆっくりなぞった。 「じゃあどういう頭がいいんだ?」 と、わたしは言った。岳は何も答えず、妙に長い沈黙が続いた。不意に、 Anlan_入力_2018 |
“那以后再也不要剃光头了么?” 我只好重复之前说过的话。这回放缓了语气,可是小岳依旧默不作声。 “不剃光头了?” 我只好再说一遍。 “嗯。” 小岳背对着我,小声的应道,脚拇指在浴室的瓷砖上慢慢地来回划着。 “那要理成什么样?” 我又问道。小岳没有马上回答,沉默了良久。突然, Anlan_翻译_2018 |
「どうって……。」 と、岳が低くてかすれた声で言った。 「坊主じゃなけりゃ、どういうかっこうがいいんだよ。」 岳はすぐには答えず、右足の親指でゆっくり何度もタイルの一辺をなぞり続けた。それから前と同じ、低くてかすれた音で、 「別にどうっていうわけではないけれど、でも、とにかくこういうふうに頭を刈られるのはいやなんだ、もう……。」 と、岳は言った。 Anlan_入力_2018 |
小岳喃喃的说到:“我也不知道……” “不要剃光头的话,那到底要怎么理呢?”我问。 小岳不回答,继续用右脚拇指沿着瓷砖的边缘划来划去。过了一会才又喃喃的说到: “我也不知道要怎么理,但是,总之我讨厌被这样剃成光头……” Anlan_翻译_2018 |
「おれにバリカンでやられるのがいやだっていうわけか?」 と、わたしはいった。 岳はまたしばらく黙り込み、それからしゃべりながら、自分の言うことを、一つずつ確かめていく、というような感じで、 Anlan_入力_2018 |
“讨厌被我用电推刀剃成光头么?”我问到。 小岳又是沉默,然后逐句确认一般说到: Anlan_翻译_2018 |
「べつにおとうにやられるからいやだというわけではなくて、こうやって、突然おとうの気まぐれで、勝手にふろ場につれてこられて、それで、好きなように、おとうの、好きなように、どんどん、刈られていく、って言うのが、僕はいやなんだ……。」 と、言った。 Anlan_入力_2018 |
“我并不是讨厌爸爸给我剃头。只是,不喜欢像这样突然地,爸爸你心血来潮就把我叫来浴室,三下两下地,胡乱地把我剃成光头……” Anlan_翻译_2018 |
しゃべり終わると、岳はまた右足の親指でゆっくりタイルをなぞり始めた。しゃべっている時はそちらの方に自分の全神経を集中させるから、足でタイルをなぞり続けている余裕がなかったのかもしれないが、と私はその足の動きを見つめながら考えていた。それにしても岳の言っていることはなかなかに説得力があった。 「そうか……。」 と、わたしは言った。しかしだからどうすべきなのか、ということはその時点ではよくわからなかった。 「じゃあ、どうしたらいいんだ……。」 と、わたしはその次に言った。岳は何も答えなかった。 「今度からは床屋に行って床屋に刈ってもらうようにするか?」 と、わたしは言った。 「お前の好きなようにさ、お前の行きたい時に行って……。」 「うん。」 と、岳はわたしに背中を向けたままかすかに聞こえるような声で言った。 Anlan_入力_2018 |
说完,小岳的右脚又和刚才一样开始在瓷砖上划来划去。我看着小岳脚,大概是讲话的时候占用了所有的注意力,没有精力管脚上的动作了吧。话说回来,小岳的一席话确实在理。 “是么,”我说到。事实上,当下我也不清楚该怎么办才好。 “那今后怎么办呢?”我问道,而小岳并没有回答。 “下次我们就去理发店里让理发师来理头发吧?” 我接着问。 “随你,你想去理头发的时候我们就去……” “嗯。” 小岳背对着我低声地应道。 Anlan_翻译_2018 |
かくしてふろ場で岳の頭を刈る、というわたしの仕事はその年でおしまい、ということになった。ふろ場の散髪は岳が保育園に行っているころからやっていたので八年ほども続いたことになる。そして、それはわたしにとってけっこう楽しい仕事であった。 Anlan_入力_2018 |
这样一来在浴室里给小岳剃头那是最后一次。从小岳上托儿所开始我就一直给他剃头,一直剃了8年,实际上头还是挺享受这份任务的。 Anlan_翻译_2018 |
その日の夜、わたしは妻にこのことの顛末を簡単に話した。 「やっぱりなあ、だんだん反抗的になってきているよ。」 と、夜ふけのぬるいコーヒーを飲みながらわたしは言った。しかし妻の考え方はちがっていた。 「反抗、とかいうのではなくて彼の自立、というようなものじゃないかしらね。男の自立期になってきているのよ。」 と、妻は少しこうしゃくなことお言った。 Anlan_入力_2018 |
那天夜里,我和妻子讲了事情的始末,喝了一口放得不凉不热的咖啡说到: “男孩子啊,慢慢开始叛逆啦。” 妻子却不这么认为: “这可不是反抗,是独立,你说对不对。他呀到了开始独立的年纪啦。” 妻子是这么开导我的。 Anlan_翻译_2018 |
「そうか、自立期か……。」 反抗ではなくて自立、というふうに理解すると私は少しやわらかい気持ちになった。そうか、そういうことなのかもしれないな、とわたしはコーヒーをすっかり飲み干してから一人でうなずいた。 Anlan_入力_2018 |
“哦,开始独立的年纪啊……” 不是反抗,而是独立。这么想来我便觉得舒坦得多。这么一想,说不定确实是这么一回事呢,我把剩下的咖啡一口喝干,自己也认同了这么个说法。 Anlan_翻译_2018 |
《日语综合教程》第五册_pp.144-148 (文字転換あり) 入力_Anlan |
翻译自《初中日语国语教科书一》 2018/5/20誤植を訂正 |