「ダンスダンスダンス」の翻訳(294)
(2017-08-22 19:48:07)
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「だからうちに残ってる彼の荷物はなるべく早くそちらに送りとどけるようにしますと言ったんだけど。でもその人ずうっと泣いてるだけなの。手のつけようがないの」
そういうと彼女は深い溜め息をつき、ソファにもたれた。
「何か飲みますか?」と僕は訊いた。
できたら熱いコーヒーが飲みたいと彼女は言った。
僕はとりあえず灰皿をかたづけ、テーブルの上に散らばった灰を雑巾で拭き、ココアのかすのこびりついたカップを下げた。そして台所をざっとかたづけ、湯を沸かし、濃いめのコーヒーを作った。台所はいかにもディック?ノースが働きやすいようによく整頓されていたが、死後一日を経ずしてそこにははっきりとした崩壊の様相がうかがえた。流しの中には無秩序に食器が放りこまれ、砂糖壷の蓋は開いたままだった。ステンレスのレンジにはココアがべっとりとこびりついていた。包丁はチーズか何かを切ったままの姿で放置されていた。
かわいそうな男だ、と僕は思った。一所懸命彼は彼なりの秩序をここに作りあげたのだろう。でも一日でそんなものはあとかたもなく消え失せてしまう。あっという間だ。人というものは自分にいちばん似合った場所にその影を残していく。ディック?ノースのそれは台所だった。そしてそれも、そのかろうじて残った不安定な影も、あっと言う間に消滅してしまう。
かわいそうに、と僕は思った。
それ以外の言葉を思いつけなかった。
僕がコーヒーを持っていくと、アメとユキは寄り添うように並んでソファに座っていた。アメは潤んだようなとろんとした目つきでユキの肩に頭を載せて休めていた。彼女は何かの薬物の作用で精神が後退しているようにさえ見えた。ユキは無表情だったが、母親が虚脱状態で自分にもたれかかっていることをとくに不快にも不安にも思っていないようだった。まったく不思議な親子だ、と僕は思った。二人が一緒になると、そこに何か奇妙な雰囲気が生まれる。アメだけの時とも違う、ユキだけの時とも違う何かだ。そこには何かしら近寄りがたいものがある。いったい何だろう?
アメは両手でコーヒー?カップを抱え、とても大事なものを飲むようにゆっくりとコーヒーを飲んだ。「おいしい」と彼女は言った。コーヒーを飲んでしまうと、アメは幾分落ち着いたようだった。目に少し光が戻ってきた。
「君は何か飲む?」と僕はユキに尋ねた。
ユキは無表情に首を振った。
“其中也说了,把他剩全的东西尽快地送到那里去。那个人一直在哭。也帮不上忙。”
然后她深深地喘一气,靠在沙发上。
“喝点什么呢?”我问道。
可以的话,想喝热咖啡。她说。
我赶忙收拾了烟灰缸,用抹布擦了散落在桌子上的灰尘,拿起䊀有可可茶渣滓的杯子。然后整理厨房,烧热水,做稍浓的咖啡。厨房的确是ノース轻松劳动的被收拾的地方。可是就在死后一天的时间,已经看出那里明显崩溃的样子。杂乱无章地把炊食具放在洗碗盆中,砂糖瓶开着盖放在那里。在不锈钢的烤箱里粘满了可可茶。菜刀刚切完奶酪那样放在那里。
太可怜的男人。我想。他拼命地在这里维持着他的秩序。可是在一天之内那样的痕迹彻底消失了。也就是瞬间。人想在自己最满意的地方留下其身影。应表现处那里是ノース的厨房。而且勉强留下的不安定的身影,也在瞬间消失了。
太可怜了。我想。
其它之外的语言再也想不起来了。
我拿着咖啡走过去,雨和雪紧靠在一起坐在沙发上。雨用湿润模糊的目光把头搭在雪的肩上。看上去她是在利用什么药物的作用使精神在后退。母亲呆然若失地靠在自己身上,雪无表情,也并没有不快不安地想这些事。我想这真是不可思议的母子。只要两个人在起,在那里就会产生一种奇妙的氛围。和只有雨自己时不同,和只有雪自己时也不同。在那里有一种想靠近的东西。那到底是什么呢?
雨两手捧着咖啡杯,特别是就像喝什么大事那样慢慢地喝着咖啡。“太好喝了。”她说。等喝完咖啡之后,雨有几分安静下来。在眼睛中有光恢复起来。
“你想喝点什么?”我问雪。
雪无表情地摇了摇头。