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「だからうちに残ってる彼の荷物はなるべく早くそちらに送りとどけるようにしますと言ったんだけど。でもその人ずうっと泣いてるだけなの。手のつけようがないの」
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8(1)
部屋から昔の共同経営者に電話をかけた。僕の知らない誰かが電話に出て僕の名前を聞いて、それからまた別の誰かが出て僕の名前を聞いて、それからやっと彼が出てきた。忙しそうだった。我々が話をするのは殆ど一年振りだった。彼を意識的に避けていたわけではない。ただ単に話すことがなかったのだ。僕は彼に対してずっと好意を持っていたし、今でもそのことには変わりはない。でも結局のところ、彼は僕にとっては(そして僕は彼にとっては)「もう通過してしまった領域」に属していた。僕が彼をそこに押し込んだわけではない。彼が自分でそこに入り込んだわけでもない。我々はそれぞれに違う道を歩んでいたし、その二本の道はなかなか交わらなかった。それだけのことだった。
元気か、と彼が訊いた。
元気だ、と