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千曲川的素描之三  岛崎藤村

(2014-07-06 15:35:04)
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岛崎藤村

情感

千曲川

日本散文

分类: 岛崎藤村专辑
千曲川的素描之二  岛崎藤村

翻译:王志镐

 麦   畠 

 青い野面(のら)には蒸すような光が満ちている。彼方此方の畠側にある樹木も活々とした新緑を着けている。雲雀、雀の鳴声に混って、鋭いヨシキリの声も聞こえる。 

 

火山の麓にある大傾斜を耕して作ったこの辺の田畠はすべて石垣によって支えられる。その石垣は今は雑草の葉で飾られる時である。石垣と共に多いのは、柿の樹だ。黄勝な、透明な、柿の若葉のかげを通るのも心地が好い。

 

      麦田

 

绿色的旷野充满蒸蒸日上的阳光。这里那里的田边,树木披上了生机勃勃的新绿。云雀、麻雀的叫声混杂在一起,尖锐的苇莺的叫声清晰可闻。

火山脚下,大斜坡上开垦出来的周围耕地,全部由石墙支撑着。这石墙目前正被杂草的叶子遮盖着。与石墙一起占多数的是柿树。经过由淡黄色的、透明的柿树嫩叶形成的树荫,心情十分舒畅。


 小諸はこの傾斜に添うて、北国街道の両側に細長く発達した町だ。本町、荒町は光岳寺を境にして左右に曲折した、主なる商家のあるところだが、その両端に市町、与良町が続いている。私は本町の裏手から停車場と共に開けた相生町の道路を横ぎり、古い士族屋敷の残った袋町を通りぬけて、田圃側(たんぼわき)の細道へ出た。そこまで行くと、荒町、与良町と続いた家々の屋敷が町の全景の一部を望むように見られる。白壁、土壁は青葉に埋もれていた。

 

小诸是一个沿着斜坡分布在北国街道的两侧的细长而发达的小镇。本街、荒街以光岳寺作为境界,向左右曲折而过。这里是以商铺为主的地方,它们的两端连接着市街、与良街。我从本街后面与停车场一起开发的相生街的路上横穿过去,从古老的土族宅地留下来的袋街穿越而过,再从田圃一侧的小道走出来。走到这里,就可以瞭望到和荒街、与良街一起延伸的一户户的宅地,这是小镇全景的一部分,白壁、土墙被绿叶笼罩着。


 田圃側の草の上には、土だらけの足を投出して、あおのけさまに寝ている働き労(つか)れたらしい男があった。青麦の穂は黄緑に熟しかけていて、大根の花の白く咲き乱れたのも見える。私は石垣や草土手の間を通って石塊(いしころ)の多い細道を歩いて行った。そのうちに与良町に近い麦畠の中へ出て来た。 

 

田圃一侧的草地上,我们迈步前进,脚上沾满泥土。那里仰天躺着一个看上去因为劳动而累坏了的男子。青青的麦穗已熟到黄绿的程度,白色的萝卜花盛开着,到处可见。我从石墙和长满草的堤坝之间通过,在铺满小石子的小道上步行。这时候,我从靠近与良街的麦田里走了出来。


 若い鷹は私の頭の上に舞っていた。私はある草の生えた場所を選んで、土のにおいなどを嗅ぎながら、そこに寝そべった。水蒸気を吹くんだ風が吹いて来ると、麦の穂と穂が擦れ合って、私語(ささや)くような音をさせる。その間には、畠に出て「サク」を切っている百姓の鍬(くわ)の音もする……耳を澄ますと、谷底の方へ落ちていく細い水の響も伝わってくる。その響の中に、私は流れる砂を想像してみた。しばらく私はその音を聞いていた。しかし、私は野鼠のように、独りでそう長く草の中には居られない。乳色に曇りながら光る空なぞは、私の心を疲れさせた。自然は、私に取っては、どうしても長く熟視(みつ)めていられないようなものだ……どうかすると逃げて帰りたく成るようなものだ。 
 で、復た私は起き上がった。微温い風が麦畠を渡って来ると、私の髪の毛は額へ掩い冠さるように成った。復た帽子を冠って、歩き廻った。

 

雏鹰在我头上盘旋,我选择了一处长满草的场所,一边闻着泥土的味道,一边在这里随便躺了下来。水蒸汽冒了出来,风刮了过来,麦穗和麦穗互相摩擦着,窃窃私语着。这时候,传来了正在田里刨“垄”的老百姓的铁锹的声音……侧耳倾听,传来从谷底方向落下的细细的流水声。在这流水声中,我幻想着溪流边的沙滩,许久许久,我听着这流水声。可是,我像野鼠一样,一个人在这样高的草丛中呆不住。乳白色的云,阳光明媚的天空,使我感到疲倦了。大自然是我无论如何要久久凝视的地方……可又是我反常地要从那里逃回来的地方。

这样,我再一次爬了起来,微微有点温暖的风从麦田里吹过来,我的头发在额头上披着,帽子也快被吹跑了,我再一次戴好了帽子,到处走动。

 
 畠の間には遊んでいる子供もあった。手甲をはめ、浅黄の襷を掛け、胸をあらわにして、働いている女もあった。草土手の上に寝かされた乳呑児が、急に眼を覚まして泣出すと、若い母は鍬を置いて、その児の方へ馳けて来た。そして、畠中で、大きな乳房の垂れ下がった懐をさぐらせた。私は無心な絵を見る心地がして、しばらくそこへ立って、この母子の方を眺めていた。草土手の雑草を刈取ってそれを背負って行く老婆もあった。 

 

在田地之间,有小孩在玩耍着。一个戴着手套,袖子上系着淡黄色的带子敞着怀的女子正在干活。睡在长着杂草的田埂上的婴儿突然睁开眼睛哭了起来。年轻的母亲扔下了锄头,朝婴儿的方向奔来。然后,在田头露出耷拉着的大乳房喂起孩子来。我见了这幅天真烂漫的图画,心情觉得很舒畅,在那里站了一会儿,朝着母子的方向张望着。田埂上,一个背着割来的杂草的老婆婆走了过来。


 与良町の裏手で、私は畠に出て働いているK君に逢った。K君は背の低い、快活な調子の人で、若い細君を迎えたばかりであったが、行く行くは新時代の小諸を形造る壮年(わかもの)の一人として、土地のものに望を嘱されている。こういう人が、畠を耕しているということも面白く思う。

我从与良街后面的田里走出来,遇到了正在干活的K君。K君是一位个子矮矮的,外表乐呵呵的人,虽然刚迎娶了年轻的妻子,可是作为将来构成小诸新时代的一个壮年人,对土地寄托着希望。像他这样的人还在耕作着田地,我觉得这样的事真是有趣。

 
 胡麻塩頭で、目が凹んで、鼻の隆い、節々のあらわれたような大きな手を持った隠居が、私達の前を挨拶して通った。腰には角の根つけの付いた、大きな煙草入をぶらさげていた。K君はその隠居を指して、この辺で第一の老農であると私に言って聞かせた。隠居は、何か思い付いたように、私達の方を振返って、白い短い髯を見せた。 

 

遇到了胡麻盐头。他眼睛深凹,鼻子隆起,有一双的关节突出的大手,一个人隐居。他在我们面前寒暄了一番便走了过去,腰间别着烟荷包的角质挂坠,手里提着大大的烟枪。K君将他的隐居所指给我看,并对我说他是本地第一老农。在隐居的地方,他像是想起什么似的,朝我们的方向回过头来,让我们看见了他那雪白的短胡须。


 肥桶を担いだ男も畠の向を通った。K君はその男の方をも私に指して見せて、あの桶の底には必(きつ)と葱などの盗んだのが入っている、と笑いながら言った。それから、私は髪の赤白髪な、眼の色も灰色を帯びた、酒好らしい赤ら顔の農夫にも逢った。 

 

担着肥料桶的男子朝田地的方向走来。K君将那男子的方向指给我看,一面笑一面说,在那桶的底部有偷来的橘子和葱藏在里面。于是,我遇见了那个头发红白,眼睛里带有灰色的、看上去好喝酒的红脸农夫。

     古城の初夏 

 私の同僚に理学士が居る。物理、化学なぞを受持っている。 
 学校の日課が終った頃、私はこの年老いた学士の教室の側を通った。戸口に立って眺めると、学士も授業を済ましたところであったが、まだ机の前に立って何か生徒等に説明していた。机の上には、大理石の屑、塩酸の壜、コップ、玻璃管(ガラスくだ)などが置いてあった。蝋燭の火も燃えていた。学士は、手にしたコップを少し傾(かし)げて見せた。炭素はその玻璃板の蓋の間から流れた。蝋燭の火は水を注ぎかけられたように消えた。 

 

古城的初夏

 

我有一位同事有理学士学位,担任了物理,化学课的教学。

学校白天课程结束后,我在这位老年学士的教室附近经过,站在窗户边朝里张望着。学士的课虽然已到了结束的时候,却还在讲台前站对几名学生解说着什么。讲台上放着大理石的石屑,装盐酸的罐子,烧杯,玻璃试管等东西。蜡烛的火燃烧着。学士将手中的烧杯稍微倾斜着让大家看,二氧化碳从玻璃板的盖之间流了出来,将蜡烛的火像注入水似的吹灭了。


 無邪気な学生等は学士の机の周囲に集って、口を開いたり、目を円くしたりして眺めていた。微笑むもの、腕組するもの、頬杖突くもの、種々雑多の様子をしていた。そのコップの中へ鳥か鼠を入れるとすぐに死ぬと聞いて、生徒の一人がすっくと立上がった。 
「先生、虫じゃいけませんか」 
「ええ、虫は鳥などのように酸素を欲しがりませんからナ」 

 

思想单纯的学生聚集在学士的桌子周围,张着嘴巴,眼睛睁得滚圆地注视着。有的微笑着,有的手挽着手,有的托着腮,摆出种种不同的姿势。听说如果在这个烧杯中放入鸟儿或老鼠的话,马上就会死,有一个学生马上站了起来。

“老师,放入虫子的话也会死吗?”

“是啊,虫子和鸟儿等一样,也需要氧气呢。”


 問をかけた生徒は、つと教室を離れたかと思うと、やがて彼の姿が窓の外の桃の樹の側にあらわれた。 
「アア、虫を取りに行った」 
 と窓の方を見る生徒もある。庭に出た青年は茂った桜の枝の蔭を尋ね廻っていたが、間もなく何か捕えて戻って来た。それを学士にすすめた。 
「蜂ですか」と学士は気味悪そうに言った。 
「ア、怒ってる――螫(さ)すぞ螫すぞ」 

为这个答案打赌的学生突然离开了教室吧,我正这么想着,不一会儿他的身影在窗外桃树的一侧出现了。

“啊,他去捉虫子了!”

有的学生朝窗户方向看着。从庭院里走出来的青年在茂密的樱树的树丛里来回寻找着,不一会,捉了一只什么东西回来了,将它递给学士。

“是,蜜蜂吧?”学士顿时变了脸色,说。

“啊,发怒了——要刺人了要刺人了!”


 口々に言い騒いでいる生徒の前で、学士は身を反らして、螫されまいとする様子をした。その蜂をコップの中へ入れた時は、生徒等は意味もなく笑った。「死んだ、死んだ」と言うものもあれば、「弱い奴」というものもある。蜂は真理を証するかのように、コップの中でグルグル廻って、身を悶えて、死んだ。 
「最早マイりましたかネ」 
 と学士も笑った。 

在七嘴八舌吵吵嚷嚷的学生面前,学士反转身子,一副不想被蜜蜂刺的样子。把这只蜜蜂放入烧杯中的时候,学生们心怀叵测地笑了。有喊“死了,死了”的,也有喊“胆小鬼”的。蜜蜂像要证明这个真理似的,在烧杯中滴溜溜地转了几圈,身体拼命挣扎,死了。

“有谁最先认输吗?”

学士也笑了。


 その日は、校長はじめ、他の同僚も懐古園の方へ弓を引きに出掛けた。あの緑蔭には、同志の者が集って十五日間ばかりの矢場を造ってある。私も学士に誘われて、学校から直に城址の方へ行くことにした。 

 

这一天,由校长领着,和他的同事一起外出,朝怀古园方向去拉弓射箭。那绿荫之地,是汇集了诸多同志,只花了十五天修造的靶场。我和学十也被邀请,从学校一直朝古城旧址的方向走去。


 はじめて私が学士に逢った時は、唯こんな田舎へ来て隠れている年をとった学者と思っただけで、そう親しく成ろうとは思わなかった。私達は――三人の同僚を除いては、皆な旅の鳥で、その中でも学士は幾多の辛酸を嘗め尽くして来たような人である。服装なぞに極く関わない。授業に熱心な人で、どうかとすると白墨で汚れた古洋服を碌に払わずに着ているという風だから、最初のうちは町の人からも疎んぜられた。服装と月給とで人間の価値を定めたがるのは、普通一般の人の相場だ。しかし生徒の父兄達も、次第に学士の親切な、正直な、尊い性質を認めないわけに行かなかった。これ程何もかも外部へ露出した人を、私もあまり見たことが無い。何時の間にか私はこの老学士と仲好に成って自分の身内からでも聞くように、その抑えきれないような嘆息や、内に憤る声までも聞くように成った。 

当我刚开始遇到学士时,以为他只是一个到这里乡村来隐居的上了岁数的学者而已,未曾想到会变得这么亲近。我们——除了三个同事之外,大家都是旅途中的候鸟,其中学士是饱尝许多辛酸的过来人。连衣食等也无人照料。作为教书的热心人,不管什么时候都是那个样子:一件沾满粉笔灰的老式西装,不要钱似的乐呵呵地穿着,最初的时候常遭镇上人的白眼。按照服装和月薪来给人确定价值,是一般人的常规。可是学生们的父辈兄弟,对学士的亲切、正直、自尊等品性却没有渐渐认识,所以不和他往来。像他这样将一切都外露的人,我还未曾遇到过。不知从什么时候起,我与这位老学士成了好朋友。我似乎从自己的身体内听到了那抑制不住的叹息、以及内心的愤怒的声音,我就这样与他成了好朋友。


 私達は揃って出掛けた。学士の口からは、時々軽い仏蘭西語なぞが流れて来る。それを聞く度に、私は学士の華やかな過去を思いやった。学士は又、そんな関わない風采の中にも、何処か往時の瀟洒なところを失わないような人である。その胸にはネキタイが面白く結ばれて、どうかすると見慣れない襟留なぞが光ることがある。それを見ると、私は子供のように噴飯したくなる。

我们凑在一起出门。在学士的嘴里,时常听到他滔滔不绝地讲法语。几次听了之后,我猜想学士曾有过辉煌的过去。我又从学士事不关己的风采中,看出他是一个在哪方面都不失往日潇洒的人。胸前的领带有趣地系着,使人看不惯的是,不管什么时候,领子上都有亮光光的污垢。只要看见他那个样子,我就会像孩子似的笑得要喷饭。


 白い黄ばんだ柿の花は最早到る処に落ちて、香気を放っていた。学士は弓の袋や、クスネの類を入れた鞄を提げて歩きながら、 
「ねえ、実はこういう話サ。私共の二番目の倅が、あれで子供仲間じゃナカナカ相撲が取れるんですトサ。此頃もネ、弓の弦を褒美に貰って来ましたがネ、相撲の方の名が可笑しいんですよ。何だッて聞きましたらネ――沖の鮫」 

白里透黄的柿子花已经到处落下了,散发出阵阵香味。学士提着弓箭袋以及里面放着松脂之类的提包,一边走一边说:“嘿,实话对你说吧。和我住在一起的第二个孩子,与他小时候的朋友老是要摔跤。近来,他作为褒奖获得了这弓弦。他的相扑名真是可笑,那个听说过——海上蛟龙。
 私は笑わずにいられなかった。学士も笑を制えかねるという風で、 
「兄の奴も名前が有るんですよ。貴様は何とつけたと聞きましたら、父さんが弓が御好きだから、よく当るように矢当りとつけましたトサ。ええ、矢当りサ。子供というものは可笑しなものですネ」 
 こういう阿爺(おとっ)さんらしい話を聞きながら古い城門の前あたりまで行くと馬に乗った医者が私達に挨拶して通った。

我笑得前俯后仰,学士也是笑得难以制止的样子。

“兄弟的小子也是个有名的人。问他你小子学了什么本事?因为他父亲爱好弓箭,经常在他面前给他当靶子。唉,学当箭靶子。孩子的事情真是好笑。

就这样一边听着阿爷的故事,一边走到古城门跟前,这时骑马的医生向我们打招呼后走了过去。

 
 学士は見送って、 
「あの先生も、鶏に、馬に、小鳥に、朝顔――何でもやる人ですナ。菊の頃には菊を作るし、よく何処の田舎にも一人位はああいう御医者で奇人が有るもんです。『なアに他の奴等は、ありゃ医者じゃねえ、薬売りだ、とても話せない』なんて、エライ気焔サ。でも、面白い気象の人で、在へでも行くと、薬代がなけりゃ畠の物でも何でもいいや、葱が出来たら提げて来い位に言うものですから、百姓仲間には非常に受が好い……」 

学士目送着他的背影,说:“那一位先生也是,鸡呀,马呀,小鸟呀,牵牛花呀——是个什么都弄的人。种菊花时节种菊花,哪里的乡村都经常有这么一个够格的医生,又是个奇人。‘怎么他的小子们,啊呀医生也好,买药的也好,一点也不通情达理。’真是气势凌人。然而,他却是个秉性有趣的人。无论是出诊还是去看病,都只收田里的农作物就可以了,他说如拿得出葱的话,也可以提来,非常受老百姓朋友的喜欢……


 奇人はこの医者ばかりでは無い。旧士族で、閑散な日を送りかねて、千曲川へ釣に行く隠士風の人もあれば、姉と二人ぎり城門の傍に住んで、懐古園の方へ水を運んだり、役場の手伝いをしたりしている人もある。旧士族には奇人が多い。時世が、彼らを奇人にして了った。 

奇人还不止这位医生,在旧土族中,闲暇地度日,去千曲河垂钓的隐士有之,与姐姐两人靠着城门住着,朝怀古园方向来送水的,在村公所帮忙的人有之。旧土族里奇人多的是。世世代代,他们充当着奇人。


 もし君がこのあたりの士族屋敷の跡を通って、荒廃した土塀、礎(いしずえ)ばかり残った桑畠なぞを見、離散した多くの家族の可傷(いたま)しい歴史を聞き、振返って本町、荒町の方に町人の繁昌を望むなら、「時」の歩いた恐るべき足跡を思わずにいられなかろう。しかし他の土地へ行って、頭角を顕すような新しい人物は、大抵教育のある士族の子孫だともいう。 

也许您经过这一带土族宅地的遗迹,被荒废的土墙,只剩下房基石,看得见桑田。听了许多离散家族的凄惨历史,回过头来瞭望本街、荒街方向镇上人们过着繁荣昌盛的生活,不由得想到,“时代”的步伐足以使人畏惧。但是来到其他的地方,正在显露头角的新人物,大抵是受过教育的土族的子孙罢了。


 今、弓を提げて破戒された城址の坂道を上って行く学士も、ある藩の士族だ。校長は、江戸の御家人とかだ。休職の憲兵大尉で、学校の幹事と、漢学の教師とを兼ねている先生は、小諸藩の人だ。学士なぞは十九歳で戦争に出たこともあるとか。 
 私はこの古城址に遊んで、君なぞ思いもよらないような風景を望んだ。それは茂った青葉のかげから、遠く白い山々を望む美しさだ。日本アルプスの谿々(たにだに)の雪は、ここから白壁を望むように見える。

现在,提着弓箭走在已破戒了的城址坡道上的学士,正是某个诸侯领地的土族。而校长则是江户的家臣。还有退休的宪兵大尉、学校的干事并兼任汉学的教师是也小诸领地的人。学士等人十九岁就因战争而外出了吧。

我在这古城遗迹游玩,眺望着您想象不到的美丽的风景。从这里茂密的绿树阴影下,望着远处白白的山峦,美丽无比。日本阿尔比斯山山谷中的积雪,从这儿望去像一堵白壁。


 懐古園内の藤、木蘭(もくれん)、躑躅(つつじ)、牡丹(ぼたん)なぞは一時花と花とが映り合って盛んな香気を発したが、今では最早濃い新緑の香に変わって了った。千曲川は天主台の上まで登らなければ見られない。谷の深さは、それだけでも想像されよう。海のような浅間一帯の大傾斜は、その黒ずんだ松の木の下へ行って、一線に六月の空に横わる光景が見られる。既に君に話した烏帽子山麓の牧場、B君の住む根津村なぞは見えないまでも、そこから松林の向に指すことが出来る。私達の矢場を掩う欅、楓の緑も、その高い石垣の上から目の下に瞰下(みお)ろすことが出来る。 

怀古园内的藤蔓、木兰、映山红、牡丹等一时间花丛相印,发出扑鼻的香味,此刻又最早变成了浓郁的新绿的香味。千曲河要到攀登至天主教堂才能看见,山谷的深处目前只能想像。像大海一样的浅间一带的大斜坡,从那黑黝黝的松树底下经过,可以看见一线横贯在天空的风景。我已经给您讲过的乌帽山山脚的牧场,B君住的根津村等已经看不见了,从这里可以指向松树林对面。我们的靶场被榉树、枫树的绿荫隐蔽着,从这高高的石墙上可以俯视下面的一切。


 境内には見晴らしの好い茶屋がある。そこに預けて置いた弓の道具を取出して、私は学士と一緒に苔蒸した石段を下りた。静かな矢場には、学校の仲間以外の顔も見えた。 
「そもそも大弓を始めてから明日で一年に成ります」 

境内有视野极佳的茶屋,取出了寄存在这里的弓箭等用具,我和学士一起沿着长满青苔的石阶往下走。在这个寂静的靶场,可以看见学校同事以外的面孔。


「一年の御稽古でも、しばらく休んでいると、まるで当らない。なんだか串談(じょうだん)のようですナ」 
「こりゃ驚いた。尺二ですぜ。しっかり御頼申(おたのもう)しますぜ」 
「ボツン」 
「そうはいかない――」 

“经过一年的练习,暂时在休息,完全射不中。不管怎样简直像开玩笑。”

“真是令人吃惊。不满一尺二寸的靶子。不一定靠得住。”

“一个小点。”

“这可不行——”


 こんな話が、強弓をひく漢学の先生や、体操の教師などの間に起る。理学士は一番弱い弓をひいたが、熱心でよく当った。

这样的话从挽着强弓的教汉语的老师和体育老师等人之间传了出来。理学士虽然拿的是最弱的弓,可是由于热诚而经常射中。

 
 古城址といえば、全く人の住まないところのように君は想像されたろう。私は残った城門の傍にある門番と、園内の茶屋とを君に紹介した。まだその外に、鶏を養う人なぞも住んでいる。この人は病身で、無聊(ぶりょう)に苦しむところから、私達の矢場の方へ遊びに来る。そして、私達の弓が揃って引絞られたり、矢の羽が頬を摺ったりする後方に居て、奇警な批評を浴びせかける。戯れに、「どうです。先生、もう弓は飽いたから――貴様、この矢場で、鳥でも飼え、なんと来た日にゃあ、それこそ此方のものだ……しかしこの弓は、永代続きそうだテ」こんなことを言って混返すので、折角入れた力が抜けて、弓も引けないものが有った。

 您也许可以想象到,所谓古城旧址,就是一个完全无人居住的地方。我给您介绍一下城门旁边的看门人,以及园内的茶屋。除此之外,还住着一个养鸡人。这个人拖着一个多病之身,由于无聊地而从那受苦的地方到我们靶场来玩。于是,每当我们将弓抡圆,将箭的尾翼贴在脸颊上的时候,他就站在后面,连连发出奇特的批评。他调侃地说:“怎么样,先生,弓已经拉满了吗——小子,这个靶场也养鸟,来日方长,那才是这里的猎物呢……可是这把弓似乎要永远传下去呢”为了回敬这样无理的话,好不容易积聚起来的力气跑掉了,有的人甚至连弓都拉不出来了。


 小諸へ来て隠れた学士に取って、この緑蔭は更に奥の方の隠れ家のように見えた。愛蔵する鷹の羽の矢が揃って白い的の方へ走る間、学士はすべてを忘れるように見えた。 
 急に、熱い雨が落ちて来た。雷の音も聞えた。浅間は麓まで隠れて、灰色に煙るように見えた。いくつかの雲の群は風に送られて、私達の頭の上を山の方へと動いた。雨は通り過ぎたかと思うと復急に落ちて来た。「いよいよ本物かナ」と言って、学士は新しく自分で張った七寸的を取り除しに行った。

对于到小诸来隐居的学士来说,从这里的绿荫可以看见更加深远的隐匿的人家。将珍藏的鹰羽做的箭收拢起来,朝白色靶子方向走的时候,学士看上去似乎将什么烦恼事都忘了。

 突然,热雨劈头盖脸地浇了下来,还可以听见雷声。浅间隐逸在山脚下,看上去就像一团灰色的烟雾。不知什么时候风将云团送了过来,我们朝头顶上的山上方向移动。正以为雨就要过去的时候,突然又下了起来。“雨终于下大了!”学士说,去把刚给自己竖起来的七寸箭靶拿了下来。


 城址の桑畠には、雨に濡れながら働いている人々もあった。皆なで雲行を眺めていると、初夏らしい日の光が遽(にわ)かに青葉を通して射して来た。弓仲間は勇んで一手ずつ射しはじめた。やがて復たザアと降って来た。到頭一同は断念して、茶屋の方へ引揚げた。 
 私が学士と一緒に高い荒廃した石垣の下を帰って行く途中、東の空に深い色の虹を見た。実に、学士はユックリユックリ歩いた。

古城旧址的桑田里,还有淋着雨干活的人。大家望了望云团移动的情况,初夏似的阳光透过绿色树叶射了过来。玩弓箭的伙伴抖擞精神,每人一箭开始射箭。箭矢再一次哗地落了下来。到头来却一起死心了,大家朝着茶屋的方向返回。

我和学士一起在高高的荒废的石墙下面往回走的途中,看见了东方天上色彩浓郁的彩虹。实际上,学士正不慌不忙地走着。

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