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寺田寅彦日记:上海香港游记(1908年)

(2009-09-20 19:03:51)
标签:

寺田寅彦

游记

日本散文

分类: 寺田寅彦专辑

 

旅日記から(明治四十二年)

寺田寅彦

翻译:王志镐

一 シャンハイ

四月一日
 朝のうちには緑色をしていた海がだんだんに黄みを帯びて来ておしまいにはまっ黄色くなってしまった。船の歩みはのろくなった。(とも)のほうでは引っ切りなしに測深機を投げて船あしをさぐっている。とうとう船が止まった。推進機でかきまぜた泥水(どろみず)が恐ろしく大きな(うず)を作って潮に流されて行く。右舷(うげん)に遠くねずみ色に低い陸地が見える。
 日本から根気よく船について来た(かもめ)の数がだんだんに減ってけさはわずかに二三羽ぐらいになっていたが、いつのまにかまた数がふえている。これはたぶんシナの鴎だろう。

             

一. 上海

 

四月一日

    清晨时分,绿色的大海渐渐带有黄色,最后完全变成了黄色。轮船的行进变得缓慢了,船尾方向接连不断地将测深机投下去,试探着船的吃水。船终于停了,螺旋桨搅拌出来的泥水形成了大得吓人的漩涡,随着海水奔流而去。船的右舷可见深灰色的低矮陆地。

    从日本出发,精力十足地跟船而来的海鸥的数量在渐渐减少,今天只剩两三只左右了,但是不知什么时候海鸥数量又增加了,那大概是中国的海鸥吧。


四月二日
 呉淞(ウースン)碇泊(ていはく)している。両岸は目の届く限り平坦(へいたん)で、どこにも山らしいものは見えない。
 シナ人の乞食(こじき)が小船でやって来て長い竿(さお)の先に網を付けたのを甲板へさし出す。小船の苫屋根(とまやね)は竹で編んだ円頂で黒くすすけている。艫に大きな飯たき(がま)をすえ、たきたての飯を(ひつ)につめているのもある。その飯の色のまっ白なのが妙に目についてしようがなかった。そしてどういうものか悲しいようなさびしいような心持ちを起こさせた。
 テンダーに乗って江をさかのぼる。朱や緑で塗り立てたジャンクがたくさんに通る。両岸の陸地にはところどころに柳が芽を吹き畑にも麦の緑が美しい。ペンク氏は「どこかエルベ河畔に似ている」と言う。……

四月二日

    在吴淞口停泊下来,两岸是一望无际的平地,一眼望不见类似山模样的东西。

    中国乞丐突然坐着小船驶来,长长的竹竿尖端挂着鱼网,从甲板上伸出。小船的茅棚是用竹子编的,圆顶,黑黝黝的。船尾放着很大的煮饭的锅,向灾民舍饭的柜子装满了饭。虽然这饭的颜色雪白,我却感到并不太妙。因此我想这是什么东西啊,心情变得很悲伤,很凄凉。

乘坐汽船顺江逆流而上,经过许多漆过红绿漆的(江堤),两岸陆地上到处是吐出新芽的柳树,田里是青青的麦苗,美极了。平克氏说了句:“到处都像易北河畔……”
 ……宿の小僧に連れられて電車で徐家(ジカウェイ)の測候所を見に行く。郊外へ出ると麦の緑に菜の花盛りでそら豆も咲いている。百姓屋の庭に、青い服を着て坊主頭に豚の尾をたらした小児が羊を(なわ)でひいて遊んでいる。道ばたにところどころ土饅頭(どまんじゅう)があって、そのそばに煉瓦(れんが)を三尺ぐらいの高さに長方形に積んだ低い家のような形をしたものがある。墓場だと小僧が言う。

…… 由旅店的伙计领着乘电车去看徐家汇气象台。一到郊外,只见麦苗青青,菜花盛开,蚕豆花也开了。在百姓家的庭院里,穿着青色衣服的主人头上垂着猪尾巴,小孩用绳子牵着羊在玩耍。道路两旁到处是土包,土包四周用砖砌成三尺左右高的、长方形的、低矮房屋形状的东西,伙计说那是墓地。


 測候所では二時に来いというからそれまで近所を見てあるく。向こう側にジェスウィトの寺院がある。僧院の廊下へはいって見ると、頭を大部分()って頂上に一握りだけ逆立った毛を残した、そして関羽(かんう)のような顔をした男が腕組みをしてコックリコックリと廊下を歩いている。黙っておこったような顔をしてわき目もふらず歩いて行ってまた引き返して来る。……異国へ来たという事実がしみじみ腹の中へしみ込んだ。

    自两点钟来到了气象台,从那时起就在附近走走看看。对面有天主教寺院。走进僧院的走廊一看,一个头上大部分头发都被剃掉,只剩头顶心一把倒竖着的头发,关羽脸模样的男子抱着胳膊,不停地点着脑袋在走廊里走着。一张沉默而似乎发怒的脸,目不斜视地走着,又返回来。……我只得将从异国来的事实深深埋在肚子里。
 寺院の鐘が晴れやかな旋律で鳴り響いた。会堂の窓からのぞいて見ると若いのや年取ったのやおおぜいのシナの婦人がみんなひざまずいてそしてからだを揺り動かして拍子をとりながら何かうたっている。

寺院的钟声以悠扬的旋律奏响,从会堂的窗户往里张望,年轻的,年长的,许多中国女人正跪着,摇晃着身体,一边打着拍子,一边在唱着什么。
 道ばたで薄ぎたないシナ人がおおぜい花崗石(みかげいし)を細かく砕いて(ふるい)()り分けている。雨が少し降って来た。柳のある土手へ白堊塗(はくあぬ)りのそり橋がかかってその下に文人画の小船がもやっていた。なんだか落ち着いたいい心持ちになる。……

    道路旁边,许多穿着单薄的中国人正将花岗石细细地凿碎并加以筛选。有点下雨了,栽着柳树的堤坝上架着涂有白漆的拱桥,下面还有文人画中的小船划过。不管怎样我平静下来,心情也好了起来。
 夜福州路(ふくしゅうろ)の芝居を見に行った。恐ろしく美々しい衣装を着た役者がおおぜいではげしい立ち回りをやったり、甲高(かんだか)い悲しい声で歌ったりした。(はやし)の楽器の音が耳の痛くなるほど騒がしかった。ふたをした茶わんに茶を入れて持って来た。熱湯で湿した顔ふきを持って来た。……少しセンチメンタルになる。

    晚上去福州路看歌舞伎。众多穿着极其华丽的差役一边频繁地走来走去,一边用高昂的声音唱着。伴奏乐器的嘈杂声将人的耳朵都几乎震聋了。在带盖的茶碗中倒了茶端来,又将在热水里烫过的擦脸毛巾拿过来。……我变得有点伤感。


 帰りに四馬路(スマロ)という道を歩く。油絵の額を店に並べて、美しく化粧をした童女の並んでいる家がところどころにある。みんな娼楼(しょうろう)だという。芸妓(げいぎ)輿(こし)に乗って美しい扇を開いて胸にかざしたのが通る。輿をささえる長い棒がじわじわしなっていた。活動写真の看板に「電光彩戯」と書いてある。

    回来路上,在四马路上走着。油画匾额在店里陈列着,到处都有浓妆艳抹的女孩站立着的店铺,这就是所谓的妓院。艺伎乘坐在轿子上,打开美丽的扇子遮在胸前,由长长的棍子抬着慢慢走过,活动照片的招牌上写着“电光彩戏”。
四月三日
 電車で愚園(ぐえん)に行く。雨に湿った園内は人影まれで静かである。立ち木の枝に(からす)の巣がところどころのっかっている。裏のほうでゴロゴロと板の上を何かころがすような音がしている。行って見るとインド人が四人、ナインピンスというのだろう、木の(たま)をころがして向こうに立てた棍棒(こんぼう)のようなものを倒す遊戯をやっている。暗い沈鬱(ちんうつ)な顔をして黙ってやっている。棍棒が倒れるとカランカランという音がして、それが小屋の中から静かな園内へ響き渡る。リップ?ヴァン?ウィンクルの話を思い出しながら外へ出る。木のこずえにとまった一羽の鴉が頭を傾けて黙ってこっちを見ていた。……ゴロゴロ、カランカランという音が思い出したように響いていた。

    乘电车去愚园(注1)。被雨浸湿的园内人烟稀少,非常寂静。树上的枝桠上到处筑有乌鸦窝。后面的木板上有什么东西发出咕噜咕噜的滚动声。走去一看,有四个印度人像在玩九宫球,这是一种将木制球滚向对面立着的类似于棍棒那样的东西将其击倒的游戏。他们阴沉着脸,一声不响地玩着,棍棒倒了就发出卡拉卡拉的声音,这声音从小屋中向寂静的园内传来。我一边想起了瑞普·凡·温克(注2)的话,一边走到了园外。树梢上还有一只乌鸦,歪着脑袋倾听着,一声不吭地朝这边瞧着。……咕噜咕噜,卡拉卡拉的声音还在响着,像是在沉思。

注1:上海愚园路这个名字是适合望文生义的。在1918年的上海地图上它的的确确是一个名为愚园的私家花园。

注2:小说《瑞普·凡·温克》(Rip van Winkle)是美国小说家及历史家华盛顿·欧文(Washington Irving, 1783-1859)的名篇。

(大正九年六月、渋柿)


     二 ホンコンと九竜

 夜の八時過ぎに呉淞(ウースン)を出帆した。ここから乗り込んだ青島(チンタオ)守備隊の軍楽隊が(とも)の甲板で奏楽をやる。上のボートデッキでボーイと女船員が舞踊をやっていた。十三夜ぐらいかと思う月光の下に、黙って音も立てず、フワリフワリと空中に浮いてでもいるように。

二.香港和九龙

           

    夜里八点多,船出了吴淞港。在这里搭乘的青岛守备队军乐队在船尾甲板上奏起了音乐。上层甲板上有男服务员和女船员在跳舞。我想是农历十三的夜里了吧,月光底下,沉默着一声不响,就像轻飘飘地浮在空中似的。

四月四日
 日曜で早朝楽隊が賛美歌を奏する。なんとなく気持ちがいい。十時に食堂でゴッテスディーンストがある。同じ事でも西洋の事は西洋人がやっているとやはり自然でおかしくない。

四月四日

    星期日,早上乐队奏响了赞美歌,不由得感到心情舒畅。十点餐厅有祈祷会,同样一件事,西洋的事情毕竟还是西洋人做起来更自然,更平常。

四月五日
 朝甲板へ出て見ると右舷に島が二つ見える。窓ガラスの掃除(そうじ)をしているかわいらしい子供の船員に聞いてみたが島の名もわからない、福州(ふくしゅう)の沖だろうという。

四月五日

    早上到甲板上一看,右舷有两个岛屿。试着向正在擦窗户玻璃的讨人喜欢的小船员打听岛的名称,说是不知道,是福州的海面吧。


 甲板の寝台に仰向きにねて奏楽を聞いていると煙突からモクモクと引っ切りなしに出て来る黒い煙も、(ふなばた)に見える波も、みんな音楽に拍子を合わせて動いているような気がする。どうも西洋の音楽を聞いていると何物かが断えず一方へ進行しているように思われる。

    仰天躺在甲板上的铺位上,听着奏乐,看着从烟囱里滚滚冒出的黑烟,看着船舷的波涛,我觉得大家似乎在合着音乐的拍子一起在摇动。我想一方面是因为听着西洋音乐却不知是什么曲子,一方面是因为船在行进中。
 黒服を着た顔色の赤い中年の保母が、やっと歩きだしたくらいの子供の手を引いて歩いている。そのあとを赫鬚(あかひげ)をはやしたこわい顔の男がおもちゃの(くま)を片手にぶら下げてノソリノソリついて歩く。ドイツ士官が若いコケットと腕を組んで自分らの前を行ったり来たりする。女は通りがかりに自分らのほうを尻目(しりめ)ににらんで口の内で何かつぶやいた、それは Grob ! と言ったように思われた。

    穿着黑色服装,脸色红润的中年保姆,牵着大概刚会走路的孩子的手走来,在他们后面,留着大胡子、面容憎恶的男人一只手拎着玩具熊慢吞吞地跟着。德国士官与年轻的情妇挽着胳膊在我的前面忽去忽来。女人经过时斜着眼睛瞪着我,嘴里嘟囔着什么,我想她是在说“Grob!(无礼)”吧。

四月六日
 昨夜雨が降ったと見えて甲板がぬれている。いかめしくとがった岩山が見える。ホンコンと九竜(くりゅう)の間の海峡へはいるのだという。山の新緑が美しい。山腹には不規則にいろいろな建物が重なり合って立っている。みんな妙によごれくすんでいるが、それがまたなんとも言われないように美しい絵になっている。それは絵はがきや錦絵(にしきえ)の美しさではなくて、どうしても油絵の美しさである。……

四月六日

    昨夜下了雨,一瞧,甲板上都湿了。看见了威风凛凛的尖锐的岩石。据说已经进入了香港和九龙之间的海峡。山上的新绿真美。山腰有许多不规则的建筑物重叠地竖立着,全都不可思议的污秽而暗淡,不用说这就成了美丽的画,这不是明信片和彩色木版画的美,一定是油画的美。……
 植物園では仏桑花(ぶっそうげ)、ベコニア、ダリア、カーネーション、それにつつじが満開であった。暑くて白シャツの胸板のうしろを汗の流れるのが気持ちが悪かった。両手を見るとまっかになって指が急に(ふと)ったように感じられた。
 ケーブルカーの車掌は何を言っても返事をしないですましていた。話をしてはいけない規則だと見える。急勾配(きゅうこうばい)を登る時に両方の耳が変な気持ちになる。気圧が急に下がるからだという。つばを飲み込むと直る。ピークで降りるとドンが鳴った。涼しい風が吹いて汗が収まった。頂上の測候所へ行って案内を頼むと水兵が望遠鏡をわきの下へはさんで出て来ていろいろな器械や午砲の装薬まで見せてくれる、一シリングやったら握手をした。……

    植物园里,朱瑾花、大丽花、康乃馨、还有杜鹃花都盛开了。大热天穿着白色衬衣,胸前汗流不止,心情变得很坏。两只看上去手通红通红的,感觉手指好像突然变粗了似的。

无论对缆车司机说什么他都不回答。看上去没有说话的规则可言。攀登陡峭的山坡时,两只耳朵的听力变得很反常。这是因为气压急剧下降的缘故,只有靠咽吐沫来解决。凉风一吹,将汗水都收敛了。请向导带着向山顶的气象站走去,水兵将望远镜从胳膊腋下拿出来,让我看了许多仪器设备以及装填午炮的火药,装完一桶就与我握手。

 夕飯後に甲板へ出て見るとまっ黒なホンコンの山にはふもとから頂上へかけていろいろの()がともって、宝石をちりばめた王冠のようにキラキラ光っている。ルビーやエメラルドのような一つ一つの灯は濃密な南国の夜の空気の奥にいきいきとしてまたたいている。こんな景色は生まれて始めて見るような気がする。……シナ人が(とう)寝台を売りに来たのを買って涼みながらT氏と話していると、浴室ボーイが船から出かけるのを見たから頼んで絵はがきを出してもらう。桟橋(さんばし)へあやしげな小船をこぎよせる者があるから見ていると盛装したシナ婦人が出て来た。白服に着かえた船のボーイが桟橋の上をあちこちと歩いている。白のエプロンをかけた船のナースがシェンケでポルト酒かなにかもらってなめている。例のドイツ士官のコケットもきょうは涼しそうに着かえて歩きまわっている。

    晚饭后,出来到甲板上一看,漆黑的香港山上,从山脚到山顶众多的灯都点亮了,就像镶着宝石的皇冠闪闪发光。宛如红宝石和绿宝石的一盏盏灯在南国之夜的空气中生气勃勃地闪烁着。我觉得这样的景色是有生以来第一次看见。……中国人来卖藤睡椅,买来一边乘凉,一边与T氏说话,看见浴室服务员下船外出,请他给买明信片。有人将形迹可疑的小船划向栈桥,一看,一位盛装的中国女人走了出来,还有身着白衣服的男服务员在栈桥上到处走动。系着白围裙的船上护士在酒吧里买了波尔多酒什么的,正在品尝着。德国士官的情妇今天也照例穿着乘凉服装走来走去。


四月七日
 朝食後に上陸して九竜(くりゅう)を見に行く。……海岸に石切り場がある。(がけ)の風化した柔らかい岩の中に花崗石(みかげいし)の大きな(かたまり)がはまっているのを火薬で割って出すらしい。石のくずを方七八()ぐらいに砕いて()り分けている。これを道路に敷くのだと見えて蒸気ローラーが向こうに見える。その煙突からいらだたしくジリジリと出る煙を見ても暑くて(のど)がかわく。道ばたを見るとそら色の朝顔が野生していた。……

    早饭后上岸去参观九龙。……这是在海岸的石头上开出来的一个场地,在风化的柔软岩石中将嵌入的大块花岗岩用火药分割出来,将石头的碎块砸成七八分立方左右,分选出来。我看到用这石头在铺路,还在对面看到蒸汽滚路机。从那烟囱里冒出滚滚的黑烟,热得使人喉咙干渴。再看路旁,紫色的牵牛花在野地里长着。在美丽的绿色草原上,有鲜红的点在走动,我想是印度人的头巾。……街道的树荫下有中国女人在领着西洋人可爱的孩子在玩耍。在那附近朱瑾花火一般盛开的门口,穿着一件衬衣的老年人在为树木浇水。

 

    气象台对面是兵营,印度人的士兵在做体操。在运动场的角落,树荫下乐队在练习,中国人印度人在悠闲地听着。在那后面中国车夫拼命叫喊着空车,向山下驶去。
 美しい緑の草原の中をまっかな点が動いて行くと思ったらインド人の頭巾(ずきん)であった。……町の並み木の影でシナの女がかわいい西洋人の子供を遊ばしている。その隣では仏桑花(ぶっそうげ)の燃ゆるように咲き乱れた門口でシャツ一つになった年とった男が植木に水をやっていた。
 測候所の向かいは兵営で、インド人の兵隊が体操をやっている。運動場のすみの木陰では楽隊が稽古(けいこ)をやっているのをシナ人やインド人がのんきそうに立って聞いている。そのあとをシナ人の車夫が空車をしぼって坂をおりて行く。


 船へ帰ると二等へ乗り込むシナ人を見送って、おおぜいの男女が桟橋(さんばし)に来ていた。そしていかにもシナ人らしくなごりを惜しんでいるさまに見えた。中には若い美しい女もいた。そしてハンケチや扇にいろいろの表情を使い分けて見せるのであった。十二時過ぎに出帆するとき見送りの船で盛んに爆竹を鳴らした。
 甲板へズックの日おおいができた。気温は高いが風があるのでそう暑くはない。チョッキだけ白いのに換える。甲板の寝椅子(ねいす)で日記を書いていると、十三四ぐらいの女の子がそっとのぞきに来た。黒んぼの子守(こもり)がまっかな上着に紺青(こんじょう)白縞(しろじま)のはいった(はかま)を着て二人の子供を遊ばせている。黒い素足のままで。
 ホンコンから乗った若いハイカラのシナ人の細君が、巻煙草(まきたばこ)をふかしていた。夫もふかしていた。

(大正九年七月、渋柿)

    回到船上,看着搭乘二等舱的中国人,许许多多的男女从栈桥上走来。看见了完全是中国式的惜别方式,其中不乏年轻的美女,因此让人见识了使用手帕和扇子的各种表情。十二点刚过,开船的时候,送行的船边响起了热闹的爆竹声。

    在甲板上的帆布下的日子多的是。气温很高,有风,所以不很热。换上了仅有的一件坎肩,坐在睡椅上写日记。一个十三四岁模样的女孩偷偷走来窥视。一个黑乎乎的小孩在白缟布的裤子上套着一件藏青的上衣,黑色的脚光着。

    从香港上船的年轻而时髦的中国女人细君,嘴里叼着香烟。她丈夫也叼着香烟。

 

(つづき)

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