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病房里的花龙舌兰水莲寺田寅彦日本散文 |
分类: 寺田寅彦专辑 |
病房里的花
得病的前四五天,顺便去了趟三越花行,买回来一小盆秋海棠花。在书房的书桌上与书架并排放着,每天晚上在灯光下凝视着它,如有空的话,还想给它照一张像,结果尚未如愿就住院了。
入院那天,妻子与很多要用的东西一起将花盆带来了,放在紧靠病床旁边铺了大理石的放药瓶的茶几上。周围只有灰色的墙壁和纯白的窗帘围绕着,如说到色彩的话,仅有涂着纯红色的橱柜,以及病床头部闪闪发光的铜制的床架,除此之外什么也没有了,使阴郁冰冷的病房马上变得温暖热闹起来。尽管躺着,看着好像用宝石做成的血红的花蕾和天鹅绒般带有光泽的绿叶从灰色的墙壁那里投射过来,真有一种耀眼的美感。
病室の花
発病する四五日前、三越へ行ったついでに、ベコニアの小さい鉢を一つ買って来た。書斎の机の上へ書架と並べて置いて、毎夜電燈の光でながめながら、暇があったらこれも一つ写生しておきたいと思っていたが、つい果たさずに入院するようになった。
入院の日に妻がいろいろの道具といっしょにこの鉢を持って来た、そして寝台のすぐ横にある大理石を張った薬びん台の上に載せた。灰色の壁と純白な窓掛けとで囲まれたきりで、色彩といえばただ鈍い紅殻塗りの戸棚と、寝台の頭部に光る真鍮の金具のほかには何もない、陰鬱に冷たい病室が急にあたたかくにぎやかになった。宝石で作ったような真紅のつぼみとビロードのようにつやのある緑の葉とを、臥ながら灰色の壁に投射して見ると全く目のさめるように美しかった。
龙舌兰
如果一天湿漉漉的,人的心里就像被催人消沉的蒙蒙细雨弄得烦恼不已,从静悄悄的月黑夜沉闷阴湿的空中,哪里传来汽笛长长的音波。直到刚才,“绿叶茂盛的樱树街市”上,邻居家反复演奏的风琴才停下来,不一会儿门铃响了,屋檐下,绽出嫩叶的樱树上的水珠,在无风的情况下啪啦啪啦掉了下来。“春雷响了,明天也是这样的天气吗?”厨房那边,老婆婆一个人在自言自语。心中感受到了从大地的低空尽头传来的沉闷的轰鸣,白天读过的悲惨小说啦,邻居家的“绿叶茂盛的樱井”啦,现在心里被搅得更乱了。就像平日一直做的那样,在桌子上用胳膊支着脑袋,凝视着什么也没有的墙壁,追寻着很久以前没有下文的梦幻的影子,觉得好像想起什么,又有想不起来的事情,陶醉在其中,雷声这一次听起来更近了,突然想起来,同时,清清楚楚浮现在眼前的,是被淋了雨的龙舌兰花盆。
竜舌蘭
一日じめじめと、人の心を腐らせた霧雨もやんだようで、静かな宵闇の重く湿った空に、どこかの汽笛が長い波線を引く。さっきまで「青葉茂れる桜井の」と繰り返していた隣のオルガンがやむと、まもなく門の鈴が鳴って軒の葉桜のしずくが風のないのにばらばらと落ちる。「初雷様だ、あすはお天気だよ」と勝手のほうでばあさんがひとり言を言う。地の底空の果てから聞こえて来るような重々しい響きが腹にこたえて、昼間読んだ悲惨な小説や、隣の「青葉しげれる桜井の」やらが、今さらに胸をかき乱す。こんな時にはいつもするように、机の上にひじを突いて、頭をおさえて、何もない壁を見つめて、あった昔、ない先の夢幻の影を追う。なんだか思い出そうとしても、思い出せぬ事があってうっとりしていると、雷の音が今度はやや近く聞こえて、ふっと思い出すと共に、ありあり目の前に浮かんだのは、雨にぬれた竜舌蘭の鉢である。
睡蓮
可不是,睡莲一定有眼睛,因为它没有手,不知道是在水面上方五寸还是三尺。如果它在水面之上六尺的话,好不容易为开花作的准备不就白费了吗?根据经济的原理来支配自然界,在这里不就体现出来了吗?
这是做了一次试验,来看看有没有价值。我发觉这种花真是有一点儿厉害哪!
睡蓮
睡蓮を作っている友人の話である。この花の茎は始めにはまっすぐに上向きに延びる。そうしてつぼみの頭が水面まで達すると茎が傾いてつぼみは再び水中に没する。そうして充分延び切ってから再び頭をもたげて水面に現われ、そうして成熟し切った花冠を開くということである。つまり、最初にまず水面の所在を測定し確かめておいてから開花の準備にとりかかるというのである。
なるほど、睡蓮には目もなければ手もないから、水面が五寸上にあるか三尺上にあるかわからない。もしか六尺も上にあったら、せっかく花の用意をしてもなんの役にも立たないであろう。自然界を支配する経済の原理がここにも現われているのであろう。
このつぼみが最初に水面をさぐりあてて安心してもぐり込んだ後に、こっそり鉢をもっと深く沈めておいたら、どういうことになるか。
これは一度試験してみる価値がありそうである。花には少し気の毒なような気はするが。