雇用者責任保険を選択するか、それとも人身事故保険を選択するか?(『法律記事スクラップ』第151期)
(2025-04-23 09:11:42)分类: 法律记事 |
まず2つの事例を見てみよう。
A社は従業員の労災保険料の納付は行っておらず、団体意外(団体傷害)保険に加入していた。業務中に負傷した孫さんは、保険会社から保険金の支払いを受けた後、訴訟を提起し、A社に対し労災保険による補償を請求した。A社は孫さんがすでに保険会社から保険金を受け取っているため、二重賠償を受けるべきではないと抗弁したが、一審と二審の裁判所は最終的に孫さんの請求を認めた。
B社は従業員の労災保険料の納付は行わず、雇用者責任保険に加入していた。郭さんが業務中に負傷した際、B社は労災保険に加入していなかったため、両者は「B社が郭さんに労災賠償金として40万元を支払う」ことで合意した。その後、保険会社が36万元を支払い、B社は4万元を別途支払った。しかし、郭さんは「保険会社の賠償金は商業保険に基づいたものであり、36万元はB社が支払うべきだ」と主張し、両者の間で紛争が生じた。郭さんは訴訟を提起し、B社に対し労災保険待遇と経済補償金の全額支払いを請求した。一審裁判所は郭さんのすべての請求を認めた。二審裁判所は、「B社が加入していた商業保険は雇用者責任保険に属し、受益者は会社であるため、保険会社が支払った36万元はB社が賠償すべき金額と相殺することができる」と指摘し、経済補償金の支払請求を認めた判決を覆した。最高裁判所は郭さんの再審請求を棄却した。
上記の事例から、労災保険は法定保険であり、商業保険(特に人身事故保険)では代替することはできないことが分かる。企業が労災保険料の支払いを行っている場合、商業保険に加入するか否か、どのような商業保険に加入するかについては、企業の目的に合わせて選択する必要がある。
企業の目的が従業員に対する福利厚生の充実であれば、団体意外保険を選択するとよい。人身事故保険の受益者は通常個人であるため、従業員が直接保険金を受け取ることができる。また、その保障範囲は業務上の傷害や職業病に限らない。例えば、従業員が出張中、休憩時間を利用した登山中に事故に遭った場合、人身事故保険による補償を受けることができる。同じ状況でも雇用者責任保険では補償の対象とならない。但し、冒頭の事例1のように、業務中に負傷し、従業員が人身事故保険による補償を受けた後、企業に労災賠償責任を請求する場合は、認められることが多い。
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