(M3-37)【幼蚕文庫】ちいさな蓄音劇場

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m3-37浮森小狐丸オッカ |
分类: M3 |
壱、わたしを御食べ
編曲、ミックス:オッカ
作曲、作詞、歌唱:浮森かや子
何処かの森のなか 色とりどり行燈
ちいさな卓子と やまほどの椅子
いかれた御茶会 夢うつつの美徳
乱痴気騒ぎと いかれた仲間たち
あなたのお好きな御茶は淹れられないけれど
きまぐれに戴いた砂糖菓子は甘美でございました
"Eat me!"
たすけて これ以上おおきくなれば
天井に頭をぶつけ わたしの首は折れてしまう
"Eat me!"
たすけて 此れ以上おとなになんかなりたくない
いかれたしあはせなわたしを どうかころさないで
弐、月飼い
編曲、ミックス:Equinox
作曲、作詞、歌唱:浮森かや子
長い長い夜の下
月飼いの少年は
ひとつ、ふたつ、星数え
指に糸を掬びつけた
月ひとつ、ふたつ、みっつ
空に放り浮かべてる
あかに あおに くるくると
色彩を変え 大地照らす
枯れた木々の枝に橙の灯滲む
御終いになるまで 咲くことやめず
少年は歌をうたい 指先と月が踊る
語り継ぐ物語を夢へと誘うために
やがてくる夜明けまで
参、魔女狩り
編曲、ミックス:塚越雄一朗
作曲、作詞、歌唱:浮森かや子
彼女は今日も種をまく
愛しい人が居りました
彼の人も今は墓の下
わたしを置いて墓の下
まみえることもかなわない
人も世界も色を変え わたしだけが変わらない
愚かで夢見がちな儘 ふるびた恋慕も捨てられず
迫り来る足音 木炭と錆の匂い
変わらぬ彼女を裁く為 世界が揺れる
花煙る春 草木繋る夏 甘く実る秋 森が眠る冬
世界は急ぎ足 歩めない彼女
人々は叫んだ “あいつは魔女だ!”
肌に喰い込む鎖
神様の炎に焼かれても
あなたのもとへいけないのですか
罵声の響く広場 燃えさかる広場
我先と火を注ぐ 時代の操り人形
甲高い叫びが 晴れた空に消える
火種がなくなれば “もう誰も居ない”
二度三度 まばたく うつろな睫毛の羽音
四度五度 きしんだ 歪な骨の律動
柔らかな灰を退け 白く伸びた腕
彼女の声が鳴いた “わたしは生きている”
彼女は今日も種をまく
愛しい季節を見送って
変わらぬ彼女の物語
いついつまでも 続くでしょう
肆、はいかぶり
編曲、ミックス:オッカ
作曲、作詞、歌唱:浮森かや子
たいようがネヂを巻いてゐる
拗ぢくれた世の幕があがる
舞台の主役はわたくし
はいかぶりでございます
煤け汚れて 塵のやうなわたし
オイルかぶり 光るふりした
べとつくからだに泥が貼り付く
其れでも美しくなりたかった
かがやくスパンコヲルの海
とびこみ纏ふ 贋の星屑
けれど何故だらう
鏡に映る世界でいちばん醜いわたし
くるり廻る ひとりで踊る
薄いドレスに 硬い靴はゐて
観客席はがらんどうよ
どなた様も御相手が余所にゐる
いつか醜いわたしが壊れ
ぐしやりと地面に突っ伏したなら
あなたは立ち止り拾ひ上げ
あわれみ泣いてくれるのだらうか
ららら らららら…
其れでも美しくなりたかった
伍、十三番開放口
編曲、ミックス:大貫理音、KAISE
作曲、作詞、歌唱:浮森かや子
橙の月が まあるく浮かぶ
八番目の廊下 階段を三度降り
はしれ はしれ 遠くで鐘は鳴ってゐる
黄金と赤色の まあるい苹果
壊れかけた鍵をかばんに
みえた みえた 古ぼけ薄ぼけた文字
どこかの国の いけないかぞへ
天国に行きたい訳ぢやない
粉になった 錆び色のひかり
さらさらこぼれて床におちる
さあ 出ていかう
開け放たれた扉のむかうへ
きしむ蝶番 ひえた空氣
ゆれる ゆれる 僕らの目のいろ
はしれ はしれ 遠くで鐘は鳴ってゐる…
陸、曲芸団のゆめ
編曲、ミックス:オッカ
作曲、作詞、歌唱:浮森かや子
其処は妄想の曲芸団
優しい道化が呉れたの
折り目だらけの切符
泣き笑い顔で“おいで”と
暗い天井は天鵞絨(ビロード) 吊るされた軽銀の星
空中ブランコの役者が派手な衣装で宙返り
世にも美しい雄叫びをきいた
気高きライオン ひとめで虜に
群青と橙の舞台の上で
高らかに哮る わたしの英雄
あなたが此方をふり向いたときに
夢のなかに居るのだと思った
悲鳴あげる回転木馬 目に痛い色彩の洪水
誰もかたちを持たず 心地よい作り笑い
ライオンのして呉れる旅のおはなし
世界はそんなにも美しいのね
黄金のたてがみに額をうずめて
幸福と愛しさが満ちてく
あなたの眸に映る曲芸団のなかに
わたしが居れば良いのに
“そんな曲芸団は何処にもないよ”と
深い霧のなか 誰かに云われた
ねえきいて頂戴
ほんとうのわたしは
暗い部屋で手遊びをしているの
あなたに会うことを 夢見ていたのよ
此処は わたしの妄想の曲芸団
気がつくと 其処は冷めた暗い部屋
ラメの紙ふぶきさえ消えたけど
曲芸団で覚えた歌や踊りを 扉を開け披露してみせるの
あなたの見た美しい世界で
漆、まつげうさぎと踊り子の旅
編曲、ミックス:オッカ
作曲、作詞、歌唱:浮森かや子
いざゆかん!
柔らかな爪先を高くあげ 白い踊り子たちが駆け抜ける
苔生した谷は夜露をふくみ 星くずのようなひかりがともる
野ばらのかおる森で 蜜蜂が黄金いろの綿毛をふるわせる
うろこのような青い屋根の窓で 甘いカルメラがとろける午后
あかりで飾るポプラの並木 影をのばしておててをつなぐ
虹いろの水蒸気をこえて ゼラチンの海を跳ね彼らはゆく
列をなす踊り子たちの旅 かろやかに世界を駆けめぐる
立派な襞襟を風にあそばせ 誇り高くどこまでも
群れで微睡むフラミンゴたちが 喇叭の音を合図に宙をとぶ
ポラリスから靡くアウロラは 磨きあげた鎧のかがやき
赤い頬した幼子のつむりに ミルクの王冠をのせてすすむ
小さな踊り子たちの旅 たからかに世界を飛びまわる
長いお耳をびんと立たせて 誇り高くどこまでも
ひそやかにこぼれた涙のあとを 銀いろの粉が ふわりすべる
列をなす踊り子たちの旅 かろやかに世界を駆けめぐる
立派な襞襟を風にあそばせ 誇り高くどこまでも
らったらった らった たん
捌、ラプンツヱル
編曲、ミックス:Iruma
Rioka
作曲、作詞、歌唱:浮森かや子
石積みの塔の天辺で歌ふ
頬をなぞる冷たい木枯らし
髪を垂らすわ
名前を呼んで
わたしを閉ぢ篭めた 愛しいひと
王子様なんて 追ひ返して
いつまでもここで遊びませうよ
あなたしか要らないわ
ラプンツヱル ラプンツヱル
あの聲を 夢の中でも 待ちわびる
止して頂戴 ほかの声で呼ばないで
こわがらないで 細い其の手は
どこでどなたを撫でていらしたの
甘い言葉は 誰のおさがり?
そんなものやめて 御食事にしませう
カヌレを焼いて 愛らしくリボンも掛けたの
少し寂しいけれど 御留守番は得意だわ
ラプンツヱル ラプンツヱル
この眸は あなたを始めに映した
ラプンツヱル ラプンツヱル
呪はれ 祝福され 芽吹いたの
日ごと夜ごと紡ぐ歌は
あなたに褒めて欲しかった
ラプンツヱル ラプンツヱル
天蓋の内で 永遠に待つのでせう
ラプンツヱル ラプンツヱル
いつまでも 御伽噺が終らない
ラプンツヱル ラプンツヱル
世界で あなたしか欲しくないから
ラプンツヱル ラプンツヱル
世界で ひとりきり わたしのなまえ
玖、幸福なおばけ
編曲、ミックス:りでる
作曲、作詞、歌唱:浮森かや子
寂しい汽笛 ひびいた夜に
あなたは ひとりで泣いてゐました
美味しいパン 召し上がれ
やわらかな おべべをだうぞ
なんでも 差しだすのだけど
あなたは 泣きやまない
ちひさな暗がりの劇場で
きこえない あぶくの聲
愛を告げる台詞だけ 何度も繰りかえした
からだを透けて 風が通りぬけた
如何やら わたしはみえないらしい
角砂糖いかが?
てのひらの それは
こぼれて ぢべたに星座を造る
いまは泣いてゐるけれど
いつか立ちあがるでせう
あかるい聲に 呼ばれて
ここに わたしをおいて
宝物のやうに 髪を撫で乍ら
終幕の台詞を 練習してゐるの
わたしは ここに ゐるけれど
あなたは こちらを みないから
電燈のした ささめく 白い彼等とおんなしね
ふたりの夜の 天鵞絨(ビロード)の幕に
ほころび産まれるまで
あなたをまもるわ
拾、暗やみ動物園
編曲、ミックス:小狐丸
作曲、作詞、歌唱:浮森かや子
それは 町のはずれの動物園
わたしは檻の中で ふるえているのです
暗やみ 幾つもの目が光る
チカチカ パチパチ
ここは暗やみ動物園
夜の天幕を裂く鳴き声 宝石の色をした鬣(たてがみ)
渦を卷く大きな角 鞭のように宙を舞う尻尾
駆け巡る空想が 臆病なわたしを脅かす
自分で組み立てた ガラクタの檻は脆い
世界中の何もかもが 牙をむいている気がして
檻のなかで 息をひそめ
暗やみの向こうに目を凝らす
あっちで吠えて こっちが唸り
今夜もちっとも眠れない
望遠鏡は檻の外で 今夜も星が見えないの
そろり 差し出した手に
つめたいおみずを掛けられました
わたしがいけないの?
けだものは わたしなの?
檻の外の獣たちが 本当は美しいことを
知っているの けれど こわいの
暗やみの向こうに何かがある
ねえ 如何したら許してくださる
御仕置きをしては呉れませんか
檻の鍵は どこに隠しただろう
あこがれた花の 棘が痛くて じぶんをとじこめたの
檻の外の獣たちが 愉快な音楽の中で
引っ掻き合って 愛し合って
わたしも其処で踊れるかしら
薄汚れた裸足の娘を 誰もが指差し 嗤うだろう
けれど檻のそとに出たのなら
たより無い肢でも 歩き出せる
こわい こわい くらやみ
わたしは何処でも歌えるわ