女性 芥川龙之介 (转载)
(2017-12-28 13:51:24)
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女性芥川龙之介日本随笔 |
分类: 芥川龙之介专辑 |
女性
芥川龙之介
雌蜘蛛沐浴着盛夏的阳光,在红月季花下凝神想着什么。
这时空中响起振翅的声音,突然一只蜜蜂好像摔下来似地落到月季花上。蜘蛛猛地举目望去。寂静的白昼的空气里,蜜蜂振翅的余音,仍然在微微地颤动着。
雌蜘蛛不知什么时候蹑手蹑脚地从月季花下边爬出来。蜜蜂这时身上沾着花粉,向藏在花蕊里的蜜把嘴插了进去。
残酷的沉闷的几秒钟过去了。
在红月季花瓣上,几乎陶醉在花蜜里的蜜蜂后边,慢慢露出了雌蜘蛛的身子。就在这一刹那蜘蛛猛地跳到蜜蜂头上。蜜蜂一边拼命地振响着翅膀,一边狠狠地去螫敌人。花粉由于蜜蜂的扑打,在阳光中纷纷飞舞。但是,蜘蛛死死咬住不松口。
争斗是短暂的。
不久蜜蜂的翅膀不灵了,接着脚也麻痹起来,长长的嘴最后痉挛着向天空刺了两三次,这就是悲剧的结束。是和人的死并无不同的残酷的悲剧的结束。——一瞬间之后,蜜蜂在红月季花下,伸着嘴倒下去了。翅膀上,脚上,沾满了喷香的花粉……
雌蜘蛛的身子一动也不动,开始静静地吮吸蜜蜂的血。
不知羞耻的太阳光,透过月季花,在重新恢复起来的白昼的寂静中,照着这个在屠杀和掠夺中取胜的蜘蛛的身子。灰色缎子似的肚子,黑琉璃一般的眼睛,以及好像害了麻风病的。丑恶的硬邦邦的节足——蜘蛛几乎是“恶”的化身一般,使人毛骨悚然地爬在死蜂身上。
这种极其残酷的悲剧,以后不知发生过多少次。然而,红月季花在喘不过气来的阳光和灼热中,每天仍在斗艳盛开……
过了不久,蜘蛛在一个大白天,忽然像想起什么似地钻到月季的叶和花朵之间的空隙,爬上一个枝头。枝头上的花苞,被地面酷热的空气烤得将要枯萎,花瓣一边在酷热中抽缩着,一边喷放着微弱的香味儿。雌蜘蛛爬到这里之后,就在花苞和花枝之间不断往还。这时洁白的、富有光泽的无数蛛丝,缠住半枯萎的花蕾,渐渐又缠向枝头。
不一会工夫,这里出现一个好像绢丝结成的圆锥体的蛛囊,白得耀眼,在反射着盛夏的阳光。
蜘蛛做完了巢,就在这华丽的巢里产下无数的卵。接着又在囊口织了个厚厚的丝垫儿,自己坐在上面,然后又张起类似顶棚的像纱一样的幕。幕完全像个圆屋顶,只是留一个窗子,从白昼的天空把凶猛的灰色的蜘蛛遮盖起来。但是,蜘蛛——产后身体瘦弱的蜘蛛,躺在洁白的大厅中间,月季花也好,太阳也好,蜜蜂的翅音也好,好像全忘记了,只是专心致志地在沉思着。
几周过去了。
这时蜘蛛囊巢里,在无数蛛卵中沉睡着的新生命苏醒了。对这件事最先注意到的,是在那白色大厅中间断食静卧的、现在已经老了的母蜘蛛。蜘蛛感觉到丝垫下面不知不觉在蠢动着的新生命,于是慢慢移动着软弱无力的脚,咬开把母与子隔离开的囊巢顶端。无数的小蜘蛛不断地从这儿跑到大厅里来。或者不如说,是丝垫变成了百十个微粒子在活动着。
小蜘蛛马上钻过圆屋顶的窗子,一哄拥上通风透光的红月季的花枝。它们的一部分拥挤在忍着酷暑的月季的叶子上。还有一部分好奇地爬进喷着蜜香的层层花瓣的月季花里去。另有一部分已经纵横交错于晴空之中的月季花枝与花枝之间,开始张起肉眼看不清的细丝。如果它们能叫的话,在这白昼的红月季花上,一定会像挂在枝头的小提琴在风中歌唱那样,鸣叫轰响。
然而,在这圆屋顶的窗子前边,瘦得像个影子似的母蜘蛛,寂寞地独自蹲在那儿。不只这样,而且过了好久,连脚也不动一动了。那洁白大厅的寂寥,那枯萎的月季花苞的味儿——生了无数小蜘蛛的母蜘蛛,就在这既是产房又是墓地的纱幕般的顶棚之下,尽到了做母亲的天职,怀着无限的喜悦,在不知不觉之间死去了。——这就是那个生于酷暑的大自然之中,咬死蜜蜂,几乎是“恶”的化身的女性。
一九二○年四月作
女
芥川龍之介
雌蜘蛛めぐもは真夏の日の光を浴びたまま、紅い庚申薔薇こうしんばらの花の底に、じっと何か考えていた。
すると空に翅音はおとがして、たちまち一匹の蜜蜂が、なぐれるように薔薇の花へ下りた。蜘蛛くもは咄嗟とっさに眼を挙げた。ひっそりした真昼の空気の中には、まだ蜂はちの翅音の名残なごりが、かすかな波動を残していた。
雌蜘蛛はいつか音もなく、薔薇の花の底から動き出した。蜂はその時もう花粉にまみれながら、蕊しべの下にひそんでいる蜜へ嘴くちばしを落していた。
残酷な沈黙の数秒が過ぎた。
紅い庚申薔薇こうしんばらの花びらは、やがて蜜に酔よった蜂の後へ、おもむろに雌蜘蛛の姿を吐はいた。と思うと蜘蛛は猛然と、蜂の首もとへ跳おどりかかった。蜂は必死に翅はねを鳴らしながら、無二無三に敵を刺さそうとした。花粉はその翅に煽あおられて、紛々と日の光に舞い上った。が、蜘蛛はどうしても、噛みついた口を離さなかった。
争闘は短かった。
蜂は間もなく翅が利きかなくなった。それから脚には痲痺まひが起った。最後に長い嘴くちばしが痙攣的けいれんてきに二三度空くうを突いた。それが悲劇の終局であった。人間の死と変りない、刻薄な悲劇の終局であった。――一瞬の後のち、蜂は紅い庚申薔薇の底に、嘴を伸ばしたまま横よこたわっていた。翅も脚もことごとく、香においの高い花粉にまぶされながら、…………
雌蜘蛛はじっと身じろぎもせず、静しずかに蜂の血を啜すすり始めた。
恥を知らない太陽の光は、再び薔薇に返って来た真昼の寂寞せきばくを切り開いて、この殺戮さつりくと掠奪とに勝ち誇っている蜘蛛の姿を照らした。灰色の繻子しゅすに酷似こくじした腹、黒い南京玉ナンキンだまを想わせる眼、それから癩らいを病んだような、醜い節々ふしぶしの硬かたまった脚、――蜘蛛はほとんど「悪」それ自身のように、いつまでも死んだ蜂の上に底気味悪くのしかかっていた。
こう云う残虐ざんぎゃくを極めた悲劇は、何度となくその後繰返された。が、紅い庚申薔薇の花は息苦しい光と熱との中に、毎日美しく咲き狂っていた。――
その内に雌蜘蛛はある真昼、ふと何か思いついたように、薔薇の葉と花との隙間すきまをくぐって、一つの枝の先へ這い上った。先には土いきれに凋しぼんだ莟つぼみが、花びらを暑熱に※(「てへん+丑」、第4水準2-12-93)ねじられながら、かすかに甘い※(「均のつくり」、第3水準1-14-75)においを放っていた。雌蜘蛛はそこまで上りつめると、今度はその莟と枝との間に休みない往来を続けだした。と同時にまっ白な、光沢のある無数の糸が、半ばその素枯すがれた莟をからんで、だんだん枝の先へまつわり出した。
しばらくの後のち、そこには絹を張ったような円錐形えんすいけいの嚢ふくろが一つ、眩まばゆいほどもう白々しろじろと、真夏の日の光を照り返していた。
蜘蛛は巣が出来上ると、その華奢きゃしゃな嚢の底に、無数の卵を産み落した。それからまた嚢の口へ、厚い糸の敷物を編んで、自分はその上に座を占めながら、さらにもう一天井ひとてんじょう、紗しゃのような幕を張り渡した。幕はまるで円頂閣ドオムのような、ただ一つの窓を残して、この獰猛どうもうな灰色の蜘蛛を真昼の青空から遮断しゃだんしてしまった。が、蜘蛛は――産後の蜘蛛は、まっ白な広間のまん中に、痩やせ衰えた体を横たえたまま、薔薇の花も太陽も蜂の翅音はおとも忘れたように、たった一匹兀々こつこつと、物思いに沈んでいるばかりであった。
何週間かは経過した。
その間に蜘蛛の嚢の中では、無数の卵に眠っていた、新らしい生命が眼を覚ました。それを誰より先に気づいたのは、あの白い広間のまん中に、食さえ断たって横よこたわっている、今は老い果てた母蜘蛛であった。蜘蛛は糸の敷物の下に、いつの間にか蠢うごめき出した、新らしい生命を感ずると、おもむろに弱った脚を運んで、母と子とを隔てている嚢ふくろの天井を噛かみ切った。無数の仔蜘蛛こぐもは続々と、そこから広間へ溢あふれて来た。と云うよりはむしろその敷物自身が、百十の微粒分子びりゅうぶんしになって、動き出したとも云うべきくらいであった。
仔蜘蛛はすぐに円頂閣ドオムの窓をくぐって、日の光と風との通っている、庚申薔薇こうしんばらの枝へなだれ出した。彼等のある一団は炎暑を重く支えている薔薇の葉の上にひしめき合った。またその一団は珍しそうに、幾重いくえにも蜜の※(「均のつくり」、第3水準1-14-75)においを抱いだいた薔薇の花の中へまぐれこんだ。そうしてさらにまたある一団は、縦横に青空を裂さいている薔薇の枝と枝との間へ、早くも眼には見えないほど、細い糸を張り始めた。もし彼等に声があったら、この白日の庚申薔薇は、梢こずえにかけたヴィオロンが自おのずから風に歌うように、鳴りどよんだのに違いなかった。
しかしその円頂閣ドオムの窓の前には、影のごとく痩やせた母蜘蛛が、寂しそうに独り蹲うずくまっていた。のみならずそれはいつまで経っても、脚一つ動かす気色けしきさえなかった。まっ白な広間の寂寞せきばくと凋しぼんだ薔薇の莟つぼみの※(「均のつくり」、第3水準1-14-75)と、――無数の仔蜘蛛を生んだ雌蜘蛛はそう云う産所さんじょと墓とを兼ねた、紗しゃのような幕の天井の下に、天職を果した母親の限りない歓喜を感じながら、いつか死についていたのであった。――あの蜂を噛み殺した、ほとんど「悪」それ自身のような、真夏の自然に生きている女は。
(大正九年四月)

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