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新しい概念の疾患 「仙腸関節不安定症」---新概念疾病“骶骼关节不稳定症”

(2013-01-31 10:25:45)

 
新しい概念の疾患 「仙腸関節不安定症」 2004年10月10日 ~(2012年12月25日更新)
 九州記念病院 整形外科 岡山洋二      
 
(要約)
 
腰痛の大半が仙腸関節痛であり、ぎっくり腰の殆どが仙腸関節捻挫である事が分かり、
仙腸関節内注入を実施して、長期に渡り症状の改善を実証して来ています。
この病態は、仙腸関節が不安定状態になり症状を惹起すると考え、「仙腸関節不安定症」
という新しい範疇の病名が相応しいと考えています。
ところで、文献(2~4,7,11)により、仙腸関節に由来すると考えられる種々の末梢部位
の疼痛が生じている事が分かり、仙骨裂孔より硬膜外に局所麻酔剤を注入するブロック
(仙骨裂孔硬膜外注入)と同様に、仙腸関節内注入により下肢の疼痛やしびれ感も同時
に改善する事が分かりましたが、その機序は暫くの期間謎のままでした。
最適な仙腸関節内注入部位を探すために、イメージ?コントロール下にて仙腸関節内に
造影剤を注入する試みを数回行いましたが、何れも関節内に注入する事が出来ず、これ
までの関節内注入のつもりで行って来ました手技が、全て関節外の局所注射であった事
が分かりましたが、この仙腸関節近傍の局所注射部位は俗に言うトリガー?ポイントの
部位に一致する事も分かりました。(瓢箪から駒の心境です。)
更に、頚部のトリガー?ポイント部位に局所麻酔剤を注入する事で、顔面から頚胸部、
肩甲部から肩関節周囲、更には、上肢全体の疼痛が改善する事が分かり、有名な頚部の
星状神経節へのブロックと同様な症状の改善が認められる事が分かりました。
そこで、文献の検索や模索した結果、交感神経の緊張をブロックする事で動脈の過緊張
状態が解除されて、末梢の血行が増加する事で、血行障害による組織の酸素欠乏(短期
間で現れるブラジキニンによる阻血痛の原因)や栄養障害(中長期間で現れる標的組織
の不全状態の原因)が改善する事が症状を改善する本質である事が分かりました。
以上の臨床経験から、頚部及び腰部のトリガー?ポイントへの局所麻酔薬の注入で所属
する交感神経節のブロックと同様な効果が生じている事が推測されました。
これは、習熟した手技を要し副作用も伴う交感神経節ブロックに代わる、一般臨床医が
容易に実施する事が可能な交感神経のブロックが出来る方法を発見した事になります。
なお、星状神経節ブロックに於ける効果の持続時間は、ある例では1週間程度のホルネ
ル徴候の一つである縮瞳が持続していたとの事から推測すれば、1週間程度の効果の持
続時間があるという事になります。
なお、五十肩(肩関節周囲炎)も血行障害が原因である事を確認していますが、慢性の
経過で非荷重関節である肩関節の上腕骨頭の軟骨の菲薄化が生じて、骨棘形成が極めて
少ない変形性関節症に進行する例も少なからず有るものと考えますと、膠原病と位置づ
けられてはいますが未だに原因不明の状態の関節リウマチも血行障害により発症し進行
する事が示唆されます。
更に、慢性の経過を辿る原因不明の難治性疾患の大半が、血行障害が発症の原因ではな
いかと推測し、血行を改善する事で症状が改善する可能性を考えています。
これらの病態を惹起させている原因が、交感神経の過緊張状態に起因する所属の動脈の
過剰収縮による末梢組織の血行障害と推測し、これらの病態を、「交感神経過緊張症候群」
と呼ぶ事を提案しています。
多くの原因不明の難病の原因が解明されて根治治療法が確立して、対症療法に甘んじて
耐え難い病状に苦しめられている多くの人々の一日も早い回復を願うものであります。
 
 
(はじめに)
 
 仙腸関節の運動痛を主訴として受診する症例の割合は、決して希では無いと考えます。
私が過去約30年間に臨床経験してきました仙腸関節の運動痛を主訴とする新しい範疇
の疾患ではないかと推測している一連の病態についての大まかな印象をご報告します。
これは、経産婦で仙腸関節周囲の疼痛及びX-Pでの腸骨の硬化像を特徴とする硬化性
腸骨骨炎とは全く異なる範疇の疾患(実際は、仙腸関節炎に包含?)と考えています。
現在一般的に行われている腰部及び仙骨部や臀部のルーチンの検査では、仙腸関節の疼
痛の有無を調べる理学検査が疎かになっている為に、従来の通り一辺の検査では、仙腸
関節の病変を見逃す危険性が大であると言わざるを得ません。
仙腸関節の横断面と冠状断面を観察すると、一般的な単純な関節面とは異なり3次元的
に大変複雑な構造を有し、分娩時に胎児の比較的大きな頭部が狭い産道を通過する際に
仙腸関節の強靱な靱帯がホルモン作用にて弛緩して、仙骨部分の骨盤の後方への滑動に
依る産道の拡大を実現する為に都合の良い巧妙な構造を有しているものと推測されます。
 
新しい概念の疾患 <wbr>「仙腸関節不安定症」---新概念疾病“骶骼关节不稳定症”
   
新しい概念の疾患 <wbr>「仙腸関節不安定症」---新概念疾病“骶骼关节不稳定症”  新しい概念の疾患 <wbr>「仙腸関節不安定症」---新概念疾病“骶骼关节不稳定症”  
    
図1(巻末の参考文献(1)のカパンジー著;機能解剖学Ⅲ)に依りますと、仙腸関節の関
節面は、三日月状を呈し、表面を軟骨(仙骨面は硝子軟骨、腸骨面は線維軟骨)で覆わ
れており、中枢側2/3の仙骨面が凹で腸骨面が凸の骨性の構造を持ち、末梢側1/3
が逆の構造を持ち、両面がフィットして逸脱しにくい構造を持っています。
この様な複雑な構造は、仙腸関節の機能(特に分娩時の骨産道の拡大に寄与)上必要な
構造である事は論を待ちませんが、複雑故に疼痛を主訴とする障害が容易に発生する事
も頷けます。
なお、注意すべきは、画像1(CTに於ける仙腸関節の横断面)に於いて仙骨と腸骨の
関節面は広範囲で接着している様に思われますが、画像3(MRIに於ける仙腸関節の
横断面)に於いて実際は腹側の約1/3程度しか実質的に平坦な関節面(お互いの関節
軟骨で密着した状態)としての機能は持っていない事が分かり、残りの背側の約2/3
の部分ではお互いの関節面の遊びを極力抑制するための強靱な骨間靱帯や後仙腸靱帯の
組織が充填されている事が分かります。
 なお、腰椎の末端と仙骨との接合部である仙骨岬角の近くに体重の重心が来る事も、
構造力学的な見地から興味を引きます。
 
 
(年齢及び性差)
 
正確な統計では有りませんが、20歳以下の腰仙骨部痛を愁訴とする症例の30~40
%の割合の決して希な疾患では無いのではないかと考えています。
また、女性の症例が男性の数倍多く経験しています。
 
 
(発症機序)
 
私の経験では、激しいスポーツを行う小、中学の学童期が最も若い年令層でしたので、
体の骨格の成長期(未熟な時期)に、長期に亘る激しい過剰な外力の負荷が仙腸関節に
掛かり続ける結果、関節を強固に固定している靱帯の緩みが生じて更に次第に増悪し、
仙腸関節が不安定な状態に陥り、異常可動性による関節の機械的な刺激で惹起される慢
性の炎症に伴う関節痛を生じさせているものと推測しております。
また、スポーツを経験していない場合は、所謂、ぎっくり腰(仙腸関節捻挫!)を繰り
返す度に靱帯の弛緩状態が慢性化する症例もある様に思われます。
また、周産期の女性の胎児の発育に伴う短期間の急激な体重増加による仙腸関節への負
荷の増大や周産期に分泌されるホルモン(靱帯弛緩作用のリラキシン)の作用による産
道の拡大を目的とする仙腸関節や恥骨結合や仙尾結合部の靱帯の弛緩を契機とする関節
の不安定な状態に起因する仙腸関節や恥骨結合や仙尾結合部の疼痛を惹起する骨盤輪症
候群が有りますが、この状態の遷延化が大きな要因となっている場合も多いと考えてい
ます。
従いまして、仙腸関節の靱帯の緩みに起因する不安定性が仙腸関節の疼痛の病因という
事で、仙腸関節不安定症という病名が適切の様に考えます。
女性が多いことも、靱帯の緩みが原因と考える根拠となります。
なお、仙腸関節痛の病歴が短くて仙腸関節不安定症という病名が相応しくないと判断し
た場合には、仙腸関節の疼痛という症状名として、仙腸関節痛や仙腸関節炎(特に高齢
者)や仙腸関節症という病名も適宜、使用しています。
更に、後述しますが、仙腸関節由来(後述により不正確な表現ですが、考察過程を残す
為に敢えて修正せず)の仙腸関節以外の臀部や陰股部(参考文献5)や下肢の疼痛やし
びれ感や温度感覚の異常(主に足底部に生じる焼ける様な違和感や所謂、冷え性の一部)
等の不定愁訴が伴っている場合は、仙腸関節由来の種々の症状の総称という意味合いで、
仙腸関節症候群という病名も最近使用しています。(現在では、腰部症候群(正式名称は
腰部交感神経過緊張症候群)に集約)
なお、本来は仙腸関節痛が初発症状と思われるが、二次的に仙腸関節痛以外の不定愁訴
が生じ、目下は仙腸関節痛が消失して不定愁訴の症状のみが残存している場合も想定さ
れますので、神経学的診断やMRI等の画像診断で確たる異常所見を認めない場合は、
仙腸関節ブロック(後述により大変困難)を行い、確定診断を兼ねた治療を試みる価値
があると考えます。
また、ぎっくり腰は、大半が仙腸関節の靱帯損傷であり、仙腸関節捻挫!という病名が
適切と考えています。(腰椎捻挫(腰部捻挫)の具体的な部位は何処(ルシュカ関節?))
ところで、精密検査で原因が不明の腰部周囲の疼痛状態を、所謂、腰痛症という漠然と
した病名で一括して対処している現状に於いて、その大半が仙腸関節に起因する疼痛で
あると考えます。
以下の文章は、臨床経験や新しい文献により仙腸関節由来の諸症状の原因が解明されて
きていると考える事柄の経緯を含めて述べています。
 
 
(所見、検査)
 
仙腸関節の運動痛が必発ですが、尾骨との結合部近傍が疼痛の中心である症例もあり、
見落とさない様に注意が必要です。(治療法は同じです。)
なお、仙骨神経領域の臀部や下部仙骨部や尾骨部(比較的多い)や股関節周囲や陰股部
の陰部神経領域や下肢の不特定部位の疼痛やしびれ感が随伴する事があり、一見すると
SLRTやFNSTが偽陽性の場合の坐骨神経痛と誤診される可能性が生じる事があり
ますので、後ほど述べます診断と治療を兼ねた仙腸関節内(後述では間違い)への局麻
剤の注入後に、この様な部位の疼痛の軽減の有無を確かめる事が必要です。
なお、高齢者では、足底部の冷えや焼ける感じやジンジン感等の不定愁訴が度々見られ
ますが、注入後にこれらの症状が改善する場合もあります。
これらの症状が生じる機序は現在の処は不明(後述でほぼ解明された)ですが、注射後
に症状が改善する場合の可能性のある原因を列記します。
 
(1)仙腸関節の近傍を走行している下肢の末梢神経への局所麻酔剤の直接浸潤
(2)仙腸関節を支配している知覚神経の大脳の中枢部位での近接領域に依る関連痛
(3)仙腸関節に付随するに疼痛の閾値を制御するゲート?コントロール機構(仮説)
(4)仙骨神経叢(第4腰神経~第5仙骨神経)と腰神経叢(第12胸神経~第4腰神
   経)との交通枝に依る関連痛
(5)仙骨周辺の自律神経系として、腰交感神経幹神経節や仙骨交感神経幹神経節や尾
   骨神経節があり、陰股部や下肢の不定愁訴の発現に関与している可能性
 
 上記の何れかが原因である可能性がありますが、今後の研究課題(後述で解明)と考
えます。
後日談を申しますと、仙腸関節の関節包を確認する目的で関節造影を試みましたが、イ
メージ下に慎重にコントロールしたにも拘わらず抵抗が強く、関節の極一部(実際は、
実質的な関節面の周辺の仙腸靱帯の組織内にしか造影剤の注入が出来ませんでした。
これは、画像3(MRIに於ける仙腸関節面の画像)から、深い実質的な関節面まで針
先を一直線に到達させる為には、技術的な習熟が必要である事が理解されます。
この事実は、これ迄に行ってきた関節内注入手技の殆どは不成功に終わっていた事を意
味し、図らずも(1)が正しい事を物語っている様にも思われます。
ところで、仙腸関節自体の疼痛と筋肉等の軟部組織の疼痛との鑑別が必要となりますが、
仙腸関節における仙骨部分を前方に移動させる方向に最大の力が加わる立位前屈位での
同部の疼痛の誘発が仙腸関節の疼痛の確定診断と考えています。(仙腸関節のこの方向へ
の外力が3次元構造的に最も不安定な状態になる可能性が示唆されます。)
また、仙腸関節痛の誘発テストとしてのNewtonテストやGaenslenテストと同じ意味合
いとして、あぐらや横座りの姿勢は、仙腸関節に捻りの力が加わり仙骨を腹側に押し出
そうとする力が加わる事で仙腸関節の疼痛を誘発することがあり、あぐらの姿勢で前屈
位を取れば更に鋭敏に疼痛が誘発されますので、仙腸関節の疼痛の誘発試験としては特
に有効と考えています。(仮称;あぐら前屈位試験、靴下を履く動作時)
 
単純X線像では、若年者や成人でも病歴が短ければ全く異常所見は認めない事が大半で
すが、慢性の経過を辿れば、仙腸関節の前後像に於いて仙腸関節の骨硬化(炎症反応の
結果)が仙腸関節に沿った仙骨面及び腸骨面に生じますし、仙腸関節の末梢端に骨棘形
成を認める事もあり、一般的な骨棘形成の機序から推測すると、仙腸関節の不安定性(異
常可動性)が存在した証拠と考える事が出来ます。
但し、骨棘形成や骨硬化像等の変形性関節症(OA)様変化が進行すれば、関節の不安定
性が生体防御の立場から自ずから抑制される事となり、それに連れて関節の疼痛も改善
する事が予想されますので、膝関節やその他の関節と同様に、OA変化と疼痛の程度は
必ずしも比例しない事もあると考えています。
従いまして、仙腸関節の不安定性を定量的に測定する方法の確立も必要です。
仙腸関節へ掛かるストレスの有無で、仙腸関節の不安定性(異常可動性)をCTで計測
する方法を考えていますが、現在の所、非負荷時と負荷時との比較で画像上で関節のズ
レを認める事は出来ていません。(生理的に数ミリの動きがあると考えられています。)
 
尚、SLRTやFNSTで偽陽性となる例が多く、椎間板ヘルニア(MRIでヘルニア
が認められない場合は椎間板症)と誤診される例が多く見られます。
更に、ヘルニア塊が認められても、神経学的な所見と一致しなければ症状を惹起してい
る責任病巣が椎間板ヘルニアと診断する事は出来ません。
当然ながら、ヘルニア塊を摘出する手術を行っても症状が残存する事になります。
但し、椎間板のヘルニア塊の部位が神経学的な所見と一致した場合でも、同部の仙腸関
節由来の不定愁訴が共存している場合もあり、この場合の責任病巣を判定する検査が必
要になります。
一つは、ヘルニアの場合の神経症状は、運動神経と知覚神経の同時障害が殆どであり、
仙腸関節由来の不定愁訴は、後で述べますが運動神経障害は原則として生じる事は無く、
筋力テストで低下が無い事で、ある程度鑑別可能となります。
又、仙腸関節由来の不定愁訴の場合は、知覚神経の障害(温痛覚の低下)も原則として
生じないものと考えますが、異常感覚(知覚過敏状態を反映していると考えられるしび
れ感(整形外科医は、この自覚症状だけで知覚神経の障害と即断し勝ちですが、酒精綿
を用いる温度感覚検査で知覚神経障害の有無の判定は高い精度で可能。)や足底部の焼け
た感じや手足の冷えた感覚(冷え性))が経験される事が多々ありますが、これは、後述
しますが末梢血行の障害に依る阻血状態を知らせるシグナルの場合が大半と考えます。
もう一つは、椎間板ヘルニアが生じている椎間板の造影により、同症状の再現や増悪が
生じる事で、責任病巣がヘルニア塊である事が確定されます。
また、同部の神経根ブロックにて疼痛が改善するかどうかを確認する事も重要です。
ところで、運動神経障害が無く疼痛だけの場合に度々診断されている椎間板障害との鑑
別は、疼痛の誘発試験(SLRTやFNST)に於いて疼痛が誘発される部位が仙腸関
節かどうかを確認する事だけです。
また、仙腸関節(末梢は仙骨の尾骨との接合部近辺まで)に沿って圧痛が認められる事
でも、ほぼ確実となります。
なお、脚長差が有れば、立位歩行時のバランスを取るために、骨盤の傾斜が生じる事と
なり、当然ながら仙腸関節から中枢の脊柱にかけて代償性の側弯が生じ、時々仙腸関節
の疼痛も生じる事となりますので、この様な場合は脚長差を補正する靴形装具等の補装
具の使用を検討する事が必要となります。
 最近度々見かける例として、高齢者の腰部脊柱管狭窄症の術後で下肢の不定愁訴(馬
尾神経性跛行と呼ばれる症状)が残存している例を経験しますが、この一部には責任病
巣が脊柱管内の馬尾神経の障害では無く、仙腸関節由来の不定愁訴であり、実際、仙腸
関節ブロックで症状の改善を認めています。
この様な症例を術前に除外する為にも、是非、仙腸関節由来の不定愁訴の除外診断が必
要です。
腰部脊柱管狭窄症の原因が、馬尾神経を栄養する小動脈の血行障害という研究結果にて、
プロスタグランディンE1誘導体製剤であるリマプロスト?アルファデスク(商品名;
プロレナール錠(大日本住友製薬)、オパルモン錠(小野薬品))やプロスタサイクリン
(PGI2)誘導体製剤であるベラプロスト?ナトリウム(商品名;ドルナー錠(アステラス
製薬))を処方してしびれ感等の自覚症が改善している症例を多く認めていますが、馬尾
神経の栄養血管の血行を改善する作用に加えて、下肢の末梢血管が拡張して組織の血行
が改善する事で、酸欠状態の組織の阻血痛(後述)が改善している可能性があります。
 ところで、他の炎症性疾患(強直性脊椎炎、リウマチ疾患、感染症、etc.)との鑑別が
必要となる様なケースは非常に希と考えますが、他の疾患と鑑別する為の検査(MRI、
骨シンチ、血液検査、生検etc)が必要となります。
関節リウマチでは、手指の関節の亜脱臼や腱の変性断裂の様に結合組織の脆弱性に起因
する病態が多く認められますので、仙腸関節を強靱に固定している仙腸靱帯の病的な緩
みに起因する仙腸関節の不安定性が生じている可能性も否定できません。
今後の検討課題と考えます。
 
 
(治療)
 
ぎっくり腰の予防法としては、前屈(お辞儀)の姿勢が最も危険で有り、この様な中腰
の状態で重量物を抱える動作が最悪と考えますので、腰を落として持ち上げる様に指導
したり、立位での洗面を座位での洗面に変更する事を指導する事にしています。
実際の治療として、下記を行っています。
 
(1)装具療法
   仙腸ベルト(当院では、マックス?ベルトのショート?タイプで代用)による不
   安定な仙腸関節の動きの抑制が目的
(2)温熱療法
   到達深度が深いマイクロウエーブ等による抗炎症効果
(3)牽引療法
   現行の牽引療法は、椎間板の安静が主の目的であると考えられていますが、椎間
   板由来の疼痛は極めて少なく、むしろ、骨盤を牽引する事で仙腸関節への力学的
   なストレスを緩和する事で腰痛(実は仙腸関節痛)を改善しているものと考えま
   す。
   この場合に、仙腸関節の長軸方向のカーブに沿ったやや腹側方向に牽引する事が
   効果的(これは、経験的に行われている)と考えますし、牽引力も体重の半分程
   度(上半身の体重程度)が適当では無いかと考えます。
   兎に角、痛みが生じたり増悪する方向への牽引は禁忌であり、痛みが軽減し気持
   ちが良い方向への牽引や牽引力を微調整する事が必要であると考えます。
(4)薬物療法
   対症療法的な消炎鎮痛剤の服用や湿布の貼付等により、差し当たり疼痛を緩和し、
   交感神経へストレスの負荷を押さえる良い方法。
(5)関節内注入(実は、トリガー?ポイント?ブロック)
   23ゲージの注射針(青針)や高度肥満の場合は青のカテラン針で、カルボカイ
   ン2ml~5ml程度+ステロイド剤でハイコート2mg~4mg程度。
   仙腸関節性の疼痛が強く疑われる場合や、加えて下肢の不定愁訴がある場合は、
   確定診断と治療の目的で、関節内注入を積極的に行う事にしています。
   なお、局麻剤による近傍を通る末梢神経(運動神経)の一過性の軽い麻痺症状の
   発生の可能性(数時間の下肢筋力低下による歩行障害)を予め説明しておく事が
   必要です。
   更に、後日談ですが、最近、仙腸関節の関節包の形態を確認する目的で、腹臥位
   の状態で関節造影を行いましたが、これまでに盲目的に行ってきました関節穿刺
   と同様の調子で関節造影を行いましたところ、何と!、関節腔内には注入出来ず、
   傍脊柱筋(主に横突棘筋?)に沿って中枢側に浸透した状態になりました。
   つまり、これまでの仙腸関節注入の手技として行っていた注入液の殆どは関節外
   に漏れ出していた事になります!。
   ここで、新たに生じた疑問としては、関節外に流出した局麻剤等の注入液により
   仙腸関節の疼痛がいかにして改善していたのかという事です。
   この事実は、仙腸関節及び骨盤周囲の疼痛、更には下肢の不定愁訴の原因を解明
   する上での大きな手掛りになる可能性があります。
   そこで、改めて、透視下にコントロールを行いながら、仙腸関節に造影剤を注入
   する事を試みましたところ、造影剤の一部は関節内に注入されましたが、更に関
   節内に深く注射針を進入しようとしても、骨性の強い抵抗に会い、針を進める事
   が出来ない状態になる事も分かりました。(この理由は既に説明済み)
   また、関節内に造影剤を注入しようとする場合にも強い抵抗があり、造影剤を十
   分に注入する事が出来ませんでしたし、関節全体に造影剤を拡散させる事も出来
   ませんでした。
   これは、画像3(MRI上の仙腸関節の横断面)での空隙内の複雑な構造物(関
   節内の靱帯組織)にて関節腔が隔壁様に分割されていて、空隙となり得る遊びも
   殆ど無い状態にある事を示唆します。
   改めて画像3を観ますと、仙骨のほぼ正中位から針を刺入して、内側に約20度
   注射器を傾けて外側の方向に針を刺入する事が必要であり、針の長さもカテラン
   針レベルの長い針でも、腹側寄りの目的とする仙腸関節の実質的な真の関節面ま
   で到達する事が出来ない可能性があります。
   肥満の方では、皮下の脂肪組織が厚いために、更に長い針が必要になります。
   仙腸関節穿刺専用の長い針の開発が必要と思われます。
   つまり、現在の段階では、仙腸関節内注入は臨床的に手技が容易では無く、目下
   の所、日常診療上の手軽な汎用の治療手技とはなり難い様に思われます。
   最近、超音波エコー検査の整形外科領域への応用が盛んになってきていますが、
   仙腸関節穿刺時の最適なガイド役となる可能性があります。
   ところで、これまでに意図(関節内注入を目的)に反して行ってきました関節外
   注入!?で仙骨裂孔からの硬膜外ブロックと同等の除痛効果がある事も確かであ
   り、この手軽で容易な治療手技を今後も続ける臨床的な意義は大きいと考えます。
   なお、除痛効果の機序としては、硬膜外ブロックは馬尾神経を根こそぎブロック
   する事で、知覚神経や運動神経、更には交感神経を麻痺(これが臨床上の主な効
   果と思われます)させる事で、除痛及び血管拡張効果による一過性の血圧低下を
   認める事となりますが、仙腸関節近傍のブロックは、近傍を大きな神経が存在す
   る事は無く、知覚神経や運動神経をブロックする可能性は無く、後述しますが、
   交感神経を何らかの機序にてブロックする事で、末梢血管を拡張して、阻血状態
   の組織の阻血痛を改善する事で、疼痛や軽い症状としてのしびれ感を改善してい
   るという事になります。
   つまり、その意味では、疼痛の対症療法では無く、原因療法に基づく根治療法と
   いう位置付けになると考えます。
   尚、硬膜外ブロックという神経を直接麻痺させる手技の場合の麻酔効果の時間は
   、手術等の経験から数時間ではありますが、疼痛が改善する効果が数日間持続す
   る事実は以前から不思議な事と考えていましたが、これこそ交感神経のブロック
   による血行増加が血行障害に起因する疼痛(阻血痛)を緩和している本当の原因
   であると考えることが出来ます。
   仙腸関節は膝関節よりも更に深いところに存在する事を考慮し、浅い皮下の局注
   にならない様にする為に、深く刺入する事が必要です。(流石に、皮下の浅いとこ
   ろの局注(筋肉痛の除痛目的)では効果が無い事を経験しています。)
   実際の関注での刺入部位及び注射針の方向は、日本仙腸関節研究会のホーム?ペ
   ージの仙腸関節ブロックの手技の写真をご参照下さい。(この部位は、トリガー?
   ポイントとして汎用されている部位でもあります。)
   私は、腸骨稜より数センチ末梢部で、人差し指と中指を最大に開いた状態で皮膚
   に押し当てて、その部位を各々の爪でマークして左右の刺入部位として、垂直に
   注射針を深く(ブルー針であれば根部まで)刺入して、注射器に余り抵抗がない
   事及び吸引操作で血液の吸引が無い事を確認して注入する様にしております。(こ
   の場合は、確実に実質的な仙腸関節の外!である事をご了承下さい。)
   念のために申し添えますが、この部位の圧痛の有無は関係有りません。
   つまり、従来のトリガー?ポイント?ブロック時の圧痛点に鎮痛目的で行う治療
   方法とは根本的に異なっています。
この部位より末梢部で刺入しますと、後仙骨孔内に刺入する危険性が生じます。
   これ迄の経験から、針を深く進入する事だけに注意すると、例え関節外に漏れ出
   たとしても、除痛効果は十分に達せられるものと考えます。
   なお、注射針を刺入した際に下肢に放散痛が走る場合があり、丁度、神経ブロッ
   ク時に、針先が神経にヒットした時と同様の現象の様でもあり、穿刺部位に近い
   第5腰椎の椎間孔から出た末梢神経(坐骨神経)にヒットした可能性も否定でき
   ません。(後述で解決)
   普通のブルー針という短い注射針を使用した場合にも生じますので、針先が神経
   根の近傍まで達する可能性の有無を検討する必要がありますが、注入後に下肢痛
   が軽減する事も多く、この事実が何を意味しているのかは、今後の重要な研究課
   題と考えます。(後述で解決)
   一つの推測として、仙腸関節が不安定な状態に依り、仙腸関節近傍の第4腰椎か
   ら仙椎にかけての神経根部に微力ではあるが慢性的な機械的な刺激が加わる事に
   より一連の炎症反応が惹起されて動員された炎症細胞から産生される炎症メディ
   エーターを介する神経障害、或いは梨状筋症候群と同様な機序に依り周囲の靱帯
   組織に依る絞扼性の神経麻痺状態(こちらも炎症メディエーターが関与)に陥っ
   ている可能性が考えられ、知覚神経の浸潤麻酔として効果を発現している可能性
   が考えられます。
   抗炎症作用を目的としてステロイド剤を加える事で、炎症カスケードを中断して
   炎症メディエーターの産生を抑制する事となり、局麻剤単独の場合より除痛作用
   時間が大幅に延長する事の理由が、これで説明できるものと考えます。
   
   最近、ラットの仙腸関節の背側の後仙腸靱帯部分に神経の自由終末(侵害受容器)
   が分布している事や、剖検例でこの神経終末はL4,L5の後枝外側枝、S1~S4の
   背側枝より分枝していたとの引用文献(巻末文献(10))を参照する機会を得まし
   た。
   これらが意味する事は、本来は解剖学的に各々の神経支配領域にのみ分布する神
   経の自由終末が仙腸靱帯の領域にも分布している事になり、仙腸関節の不安定性
   に起因する後仙腸靱帯領域への慢性的な機械的なストレスの刺激により惹起され
   た炎症の際に産生された炎症メディエーターを介して、神経の自由終末が興奮し
   て求心性に伝達されて大脳の知覚野に於いて恰も各々の支配領域の神経症状とし
   て感知されている事が推測されます。(後日談ですが、この推測は間違いであり、
   各神経支配領域を司る末梢の交感神経節に興奮が伝達されて交感神経が緊張状態
   になり、交感神経が支配する末梢動脈を収縮させる事でその支配する組織の血行
   が低下して阻血状態に陥り、組織に傷害性の炎症が生じて、そこに分布している
   知覚神経の自由終末が興奮して疼痛(阻血痛)を感じるという事になります。)
   なお、運動神経と知覚神経が随伴している中枢寄りの比較的大きな末梢神経の障
   害に於ける神経症状としての運動神経の障害による筋力低下は、この場合は原則
   的に生じない事となり、末梢神経障害との大きな鑑別点になり得ると考えます。
   又、局麻剤の単独使用の場合(所謂神経ブロック)よりステロイド剤を添加した
   場合の方が遙かに長い除痛効果が得られる事を考えますと、同部での炎症反応が
   慢性的に生じており、一連の炎症反応時に放出される伝達物質を介して神経の自
   由終末の興奮が惹起されているものと解釈すれば、消炎効果が強力なステロイド
   剤にて炎症が沈静化して、炎症反応時の伝達物質の産生が一時的に抑制される事
   で、数日間の鎮痛効果をもたらしている事が推測されます。
   尚、仙骨裂孔からの硬膜外ブロックに於いてもステロイド剤の添加にて除痛効果
   が延長する事実があり、同様な機序である可能性がありますが、今後の研究課題
   と考えます。(神経根部でのヘルニア塊等による機械的な刺激による炎症反応が生
   じて、炎症メディエーターによる疼痛の発現が生じている可能性があります。)
   硬膜外ブロックは関連する領域の神経を根こそぎ確実にブロックする事となりま
   すので、仙腸関節ブロック(注入)でも除痛効果が不十分の場合に切り札的な手
   段として実施する事が望ましいと考えます。   
   これで、仙腸関節由来と考えられる謎多き神経症状の全貌がほぼ解明できる目処
   が立った事になると考えます。
   ところで、殊更に余分な(?)侵害受容器を仙腸関節に配置する事の生物学的な
   意義は、身体の構造上の要の仙腸関節に出来るだけ負担が掛からない様にとの生
   体防御上の徹底的な対策の現れ(傍迷惑な過剰なまでの余分な警報装置の設置)
   であると解釈する事が出来ます。
   以上により、短い青針でも神経の自由終末が存在する後仙腸靱帯まで針先が到達
   する事は可能であり、この部位に分布している神経の自由終末や神経自体に針先
   がヒットした際に神経学上の支配領域(陰股部や下肢)に放散痛が走る事の謎が
   解明された事になると考えます。
   また、深部に存在する事で穿刺の手技が難しい腹側の実質的な仙腸関節内に注入
   するよりも、浅い後仙腸靱帯部に注入する事がより除痛効果が高かったという報
   告(巻末文献(11))もあり、これまでに行ってきた仙腸関節内注入目的の手技(こ
   れからは手技名を仙腸関節ブロックに変更)は、結果的には幸運にも、除痛効果
   が優れたより良い手段であったものと考えます。
   最近は、診察時の丸椅子に座った状態の座位のポジションにて注入を行っていま
   すが、腹臥位や側臥位での注入よりも余分な中枢側への拡散が少なく、無駄が無
   く簡便なポジションであると考えています。(ヤコビー線より1横指末梢の部位)
 
新しい概念の疾患 <wbr>「仙腸関節不安定症」---新概念疾病“骶骼关节不稳定症” 
   
(6)手術療法(骨移植+ステープルやプレート等での固定)
   仙腸関節の不安定性が強く、他の除痛のコントロールが出来ない場合に考慮すべ
   き最後の治療法と考えますが、実際の臨床経験は全く有りません。
   積極的に仙腸関節固定術を行っている医療機関(仙台社会保険病院)もあります。
   なお、この手術も万能では無く、疼痛が残存する症例が少なからず存在するとの
   事で、関節固定により他の隠れた仙腸関節の生理機能(ショック?アブソーバ等
   の働き?)を阻害している可能性や仙腸関節以外の病因を検討する余地があるの
   かも知れません。
   なお、仙腸関節自体の疼痛は、仙腸関節固定により機械的な刺激による関節炎が
   生じる可能性が無くなりますので、当然ながら消失する事になると考えますが、
   仙腸関節近傍のトリガー?ポイント由来の疼痛も改善するかどうかを検討する事
   になります。
   仙腸関節の不安定性が仙腸関節の炎症を惹起し、更に進展して仙腸関節近傍のト
   リガー?ポイントによる種々の症状(仙腸関節症候群)が生じるというシナリオ
   が妥当と考えますと、仙腸関節を固定してもトリガー?ポイントの症状が残存す
   る症例もあるのではないかと考えます。
   そこで、この様な場合には、トリガー?ポイントへの局注を続ける事で、残存症
   状を改善できる事になると考えます。
   下部腰椎間の所謂、辷り症(若年者の無分離辷り症や高齢者の変成辷り症)も、
   同部の椎間板に持続的な剪断力が働く事で生じていると考えると、仙腸関節の不
   安知性に付随する同部の前段力が働く方向への異常荷重状態が原因の可能性があ
   ります。
   辷り部自体や腰椎分離症の偽関節部での疼痛が生じているのかどうかは、これま
   での臨床経験からは確認出来ていません。(一般的に、骨折後の偽関節自体が疼痛
   の原因になった例を経験していません。)
   仙腸関節固定後の疼痛の報告例として文献(12)がありまが、下部腰椎間の辷りが
   椎体間の不安定状態を反映していると解釈すれば、仙腸関節の靱帯に存在する侵
   害受容器に慢性の刺激を与え、炎症が持続して仙腸関節や下肢の疼痛や痺れ感を
   惹起している可能性が考えられます。
   つまり、辷り症がある症例では、仙腸関節の固定に加えて辷り症部位の固定も必
   要かもしれません。
   なお、脊柱全体を通して観ると、生理的に必要な可動域の遊びが必要である可能
   性もあり、固定する結果、その近傍の椎体間の辷りが新たに生じる可能性があり
   ます。
 
 
(さいごに)本論
 
最近の大半の教科書に於いても、以上の様な病態の存在すら殆ど知られていない様です。
この病態の全貌の解明と適切な治療法の確立及び啓蒙が必要と考える次第です。
平成21年11月に日本仙腸関節研究会(http://sentyo-kansetsu.com/about.html)が発足し、
本格的な研究及び啓蒙活動が進められています。
 
 仙腸関節は、何故か、これまで基礎的及び臨床的にも殆ど注目されて来ていませんが、
基礎研究及び臨床的に多くの解明されるべき重要な謎を含んだ大変魅力的な要の関節で
あると考えています。
分娩時の骨産道を拡大させる方向としての骨盤後方への仙骨の滑動やそれに続くと考え
る首振りの運動(推測)等の動きや仙骨と尾骨の結合部の後方への屈曲の機能は、人類
の大脳の進化に伴う頭部の巨大化による分娩時の胎児の頭部の通過障害を解消しなけれ
ばならないという人類存亡の危機を辛うじて救っていると言っても過言では無いと思い
ます。(現在では、分娩前の計測で狭骨盤の場合は帝王切開で解決)
後述しますが、もし、分娩前に仙腸関節がロッキング状態にあると、骨産道がスムーズ
に拡大しない状態に陥り、狭骨盤と同様な分娩障害が生じる危険性が出てきますので、
分娩前にロッキング状態の有無のチェックが必要と思われます。
 
 二足歩行の獲得により前足(両手)が自由となり、道具を器用に作り操る事が可能と
なり、併せて知能の発達を飛躍的に拡大させた人類にとって、仙腸関節は重たい上半身
による剪断力等の強い外力に常に晒される過酷な状態に甘んじてじっと堪え忍んでいる
関節であり、分娩時の骨産道を拡大する目的としての可動域の増大と非分娩時の可動域
の可能な限りの抑制という相反する機能を担っている関節であり、疼痛の好発部位とな
る事は宿命と言わざるを得ません。
 
 ところで、AKA博田法(文献(8))の手技として、側臥位にて仙腸関節の仙骨部に腹
側方向及び中枢側方向に徒手的に外力を加える事で、疼痛がたちまち解消する事もある
との事で、仙腸関節の複雑な3次元構造が災いして、関節の不安定性に起因する関節面
の一部が生理的な関節面から逸脱(脱線?や亜脱臼?)してロッキング状態に陥り、強
い疼痛が持続している病態の存在の可能性が考えられます。
特に、瞬時に強い力が仙腸関節に加えられる事により生じるぎっくり腰に於いては、仙
腸関節を亜脱臼状態に陥らせる可能性が高いと考えます。
ステロイド剤を含む局所麻酔剤を仙腸関節(実は関節外!)に注入したり、仙骨裂孔か
ら局麻剤とステロイド剤を注入(硬膜外ブロック)すると、一般的に3~4日間程度の
疼痛の軽減を認めますが、局麻剤の正味の除痛効果時間である1~2時間程度しか疼痛
改善効果が無い場合には慢性の炎症性の疼痛では無く、この様なロッキング状態にある
為に生じる直接侵襲性の急性炎症性の疼痛の可能性も考慮する必要があるかも知れませ
ん。
余談ですが、硬膜外腔に局麻剤を注入すると硬膜を介して局麻剤が脊柱管内に浸潤して
馬尾神経をブロックする事となりますが、ステロイド剤を加えた場合は、果たしてどの
様な機序で疼痛の抑制時間が飛躍的に伸びるのかという疑問が残ります。
リウマチの罹患関節内にステロイド剤の単独注入を行った場合は、局麻剤の即効性とは
異なり数時間後にジワーリと疼痛が緩和されて来るという事であり、このタイムラグを
考えると、ステロイド剤が関節内から一旦吸収されて血行性に局所の炎症を緩和して疼
痛を抑制するという機序が考えられますので、硬膜外注入の場合も同様の機序が推測さ
れます。
それでは、トリガー?ポイントにステロイド剤のみを単独に注入した場合にどの様な効
果が生じるかは、近く試みる予定です。
尚、AKA博田法の基本概念は仙腸関節の本来の正常な可動域を取り戻す為の治療法とい
う事であり、症状を惹起している病態の想定内容は異なってはいますが、結果的には疼
痛を生じさせているロッキング状態を解除する事によって症状が改善する事になってい
るのではないかと推測しています。
つまり、この様な病態に遭遇した場合には、ロッキング状態を解除する為の何らかの処
置が必要になります。
AKA博田法を踏襲してロッキング状態を瞬時に整復する手技(技術的に高度な習得が必
要)を実施するか、他の方法で解決できるかどうかの検討を行う事になります。
例えば、強い骨盤牽引力で緩徐に亜脱臼が整復される可能性があります。
これは、仙腸関節に於ける仙骨部分を末梢方向にずらそうとする剪断力が立位時(座位
時にも!)には上半身の加重により常時加わっている事になり、ぎっくり腰の時に生じ
る負荷が更に加わった場合に、画像2(CTに依る仙腸関節の冠状断面)に於ける仙骨
の関節面の骨性の隆起部が腸骨の関節面の陥凹部を乗り越えて末梢方向に亜脱臼してロ
ッキング状態に陥るのではないかと考えます。
そこで、骨盤牽引により亜脱臼状態の左右の腸骨部分の関節面が末梢方向に牽引される
事により亜脱臼状態が整復される事になるのではないかと推測します。(腰椎の直接的な
末梢方向への牽引(腰椎牽引)では無く、骨盤つまり腸骨の末梢方向への牽引(骨盤牽
引))
振り返って観れば、腰痛(実は仙腸関節痛の場合)にルーチンの骨盤牽引が臨床的に効
果的な場合の多くが、ロッキング状態が自然に解除されて整復される事で症状が改善し
ている可能性があります。
また、ロッキング状態には無くとも、仙腸関節の隆起部と陥凹部の関節面での長期に亘
る過度な加重や運動に依る外力のストレスに起因する仙腸関節の炎症(これが仙腸関節
痛の最大の要因と考える)も、仰臥位に於ける骨盤牽引により、この関節面での炎症を
惹起するストレスが緩和される事で仙腸関節の炎症が改善し、仙腸関節由来の疼痛が改
善するというシナリオが妥当かもしれません。
そこで、出来るだけ牽引時間を延ばす事が効果的と思われますので、患者さんに簡易骨
盤牽引装置を購入して頂き、自宅での牽引療法を実施する事がベストと考えます。
なお、腹側寄りの末梢方向へ牽引する事が理に叶っていると考えますが、目安は疼痛が
最も軽減する気持ちが良い方向に微調節する事が必要です。
ぶら下がる事も、骨盤以下の末梢部分の体重の重力による牽引作用により、短時間しか
出来ませんが、何時でも何処でも容易く行える牽引療法として大変有効と思われます。
 
 なお、ロッキング状態を臨床上で外見的に判断する事は困難と思われますが、例えば、
ロッキング状態により関節空隙の均一性に歪みが生じている状態を想定しますと、CT
での仙腸関節の冠状断像(画像2)での左右の関節空隙の不均等や、仙骨面の骨性の隆
起部が対応する腸骨側の骨性の陥凹部分との接合状態にズレが生じている等の所見によ
り、ロッキング状態が直接的に確認出来る事になるかも知れません。
この様な画像診断の有効性が確認される事になれば、仙腸関節由来の疼痛の場合のルー
チンの検査法となり得るかも知れません。
なお、産後の頑固な仙腸関節痛の場合は、冠状断像に加えて、分娩時に骨産道が拡大す
る際に生じる可能性が高い仙骨部の後方への亜脱臼を確認するための横断像に於ける隆
起部と陥凹部の接合状態のズレの有無をチェックする為の画像診断が必要になるかも知
れません。
仙腸関節の不安定性が強くて軽度な外力でロッキング状態(容易にぎっくり腰が生じる)
を頻回に繰り返している症例に対しては、仙腸関節固定術が最後の切り札的な治療法に
なるものと考えます。
 
これから述べる事柄は全くの推測の域を出ませんが、頸椎から腰椎にかけての脊柱全体
の土台の位置にある仙骨と左右の腸骨との間の左右の仙腸関節の位置のズレ(例えば、
片側のみの亜脱臼状態)が生じますと、脊柱の土台の骨組織である仙骨が長軸を中心と
して捻れる状態(捻れる方向が左右の仙腸関節の亜脱臼状態を反映)となり、それに伴
い脊柱に捻れが加わる事が想定される事となり、思春期(成長期)の特発性脊柱側弯症
の発症に関与している可能性を検討する価値があると考えます。
つまり、側弯症の症例は、左右の仙腸関節の不揃いの有無をチェックする事が肝要と考
えます。
その簡便な検査法としては、骨盤前後像に於いて、左右の仙腸関節の微少なズレを反映
していると考えられる左右の恥骨の結合部(恥骨結合)に上下のズレ(片側性の亜脱臼
の可能性)が生じていないかをチェックする事で或る程度判定が可能かも知れません。(当
院では、XPの腰椎前後像において、ルーチンで恥骨結合まで含めて撮影する様にして
いますが、恥骨結合部の骨棘形成もたまに見かけますので、画像を見誤らない様に注意
が必要です。)
これが事実であれば、胸腰椎部の特発性脊柱側弯症の根本治療法の道が開かれる事にな
ります。
つまり、胸椎部の側弯は腰椎部の回旋を伴った側弯状態を脊柱全体のバランスを矯正す
る為の生体の合目的の補正反応と考えますと、成長期(骨端線の閉鎖以前)に仙腸関節
の亜脱臼の治療を行うことが必要となります。(骨盤牽引が有効的と考えます。)
なお、特発性側弯症以外で、腰椎部の側弯状態(壮年期以降の器質的な腰椎変性側弯症
や、片側の傍脊柱筋の疲労に起因する機能的側弯状態)を時々見かけますが、この場合
も、左右の仙腸関節の不揃い(片側性の亜脱臼)の有無のチェックが必要と考えます。
たとえば、右の仙腸関節の亜脱臼の場合は、右の仙腸関節の仙骨面が末梢方向に亜脱臼
している事が推測されますので、仙骨を中心に考えますと、右の腸骨面が中枢側にずれ
ている事となり、この状態を反映して、恥骨結合部の左側が中枢側にずれている事が推
測されます。
更に、この状態に於ける脊柱全体のバランスを取るために、代償的に腰椎の捻れを伴っ
た側弯状態(この場合は右に凸と推測)が生じている事が推測されます。
なお、腰椎の回旋方向は、多くの症例を検討する事で一定の法則(例えば、右の亜脱臼
の場合は反時計回り(左回り)?)が或る程度決定されるものと考えます。
なお、片側性の亜脱臼を伴っていない仙腸関節炎による関節痛の場合に於ける、疼痛を
回避する為の無意識の機能的な腰椎側弯状態(例えば、右の仙腸関節のみの疼痛の場合
は、右の仙腸関節への体重の負荷が軽減される様にする為に左側の仙腸関節に体重の負
荷を増加させる方向である右に凸の側弯)が生じる事になりますが、脊柱に捻れ(回旋)
が生じる事は無いと考えます。
なお、片側性の傍脊柱筋の疲労性の疼痛に起因すると考えられる機能性側弯の場合に於
いて、傍脊柱筋の疲労の原因が労作以外に、仙腸関節痛に起因する機能性側弯状態を保
持する為に生じる傍脊柱筋の筋肉疲労である可能性(因果関係が逆)もあり、この場合
は安静にて筋肉疲労が改善する可能性が低い事も留意する事が必要です。
つまり、仙腸関節の疼痛が改善すれば、無意識の側弯状態も自然に改善し、傍脊柱筋へ
の余分な負荷も軽減する事となり、傍脊柱筋の筋肉疲労が自然に改善する事が期待され
ます。
片側の仙腸関節痛をかばう為に無意識のうちに側弯状態となり、他方の仙腸関節への過
度な加重状態が持続すると、こちらの仙腸関節の疼痛が生じる事になるという様に、以
後、交互に左右の仙腸関節痛が生じる様になる事が推測されます。
 更に、両側の仙腸関節に於いて同じ程度の疼痛がある場合は、疼痛回避を目的とする
側弯状態が生じる理屈は無くなり、立位では前屈状態(出っ尻)や後屈状態(ペタンコ
尻)になる事で疼痛を軽減する手段を無意識に行っている可能性があります。
ところで、恥骨結合にズレは無いが恥骨結合間の距離の短縮や拡大が認められた場合は、
左右の仙腸関節の対称的な亜脱臼の可能性が示唆されます。
更に、所謂、出っ尻(骨盤前傾)やペタンコ尻(骨盤後傾)の状態、腰椎無分離辷り症、
腰椎後弯変形、円背変形等にも、検討の対象を広げる必要があるのかも知れません。
更に末梢に目を向けると、仙腸関節と下肢の関節(股関節、膝関節、足関節、足部の関
節及びアーチ等)との相互作用や脚長差を有する例も検討に値するかも知れません。
体重の重心が腰椎と仙骨の接合部の仙骨岬角の近くに存在する事が、重力に抗して歩行
する際に重心の上下の動揺を極力抑制する歩行の仕方が生理学的に効率的で無理の無い
歩行と考えられますので、重心の近傍の仙腸関節に極力無理が掛からない様に進化して
きた事も考えられます。
 
 これから述べる事柄は更に全くの推測に過ぎませんが、頸部の第7頸椎レベル(頸椎
と胸椎の境界領域)の後側方に最も多く経験する圧痛点(トリガー?ポイント)があり
ますが、この部位の圧迫や局麻剤の注射時(青の注射針を痩せ形の方には中程まで刺入
し、2~5ccの局所麻酔剤にステロイド剤を混ぜて、中枢方向に向けて注入)に際し
て、後頸部や肩甲部や上肢に放散痛が生じる例を度々経験しています。
なお、この部位には重要な組織は無く、重篤な副作用が生じる心配は特に有りませんが、
肺尖部への刺入に十分注意する事が必要であり、絶対に末梢方向へ針を向けて刺入しな
い事です。
更に、肩甲骨の内側縁や肩甲骨の中央部等の所謂、漢方のツボに相当する部位でも同様
な症状が生じる事があります。(これでツボの正体が解明されるかも知れません。)
このレベルに於いては、有名な第7頸椎の横突起の前方に存在する星状神経節(交感神
経節である下頚神経節と第1胸神経節が合体して星状の形をした神経節;文献15)が
あります。
これは、腰仙尾椎部に於ける交感神経節に対比されるものと考えます。
仙腸関節由来の不定愁訴(仙腸関節症候群)と鞭打ち損傷時等に生じる交感神経過緊張
状態を背景として生じる難治性の多様な不定愁訴(頭痛は頭皮下の帽状腱膜の血行障害、
嘔気は胃部の血行障害、目眩感は内耳の三半規管の血行障害と推測)を呈するバレリュ
ー症候群との対比も興味を引きます。
鞭打ち損傷時に生じる病態は、外力による頸部のトリガー?ポイント部の過剰運動が生
じる事により、トリガー?ポイント部に傷害性の炎症が生じ、その部位に存在している
末梢神経の自由終末である侵害受容器を興奮させて、続いて近傍の星状神経節に信号が
伝達されて交感神経が過緊張状態(精神的なストレスの要素も加わり)に陥り、多彩な
諸症状が惹起される事になるものと考えます。(安易に用いられている頚椎捻挫とは、一
体どの関節(ルシュカ関節?)の捻挫でしょうか!?)
余談ですが、一般的な交通外傷後の数日間に、全身の筋肉の凝り状態が生じる事が多々
有りますが、交感神経の一過性の過緊張により、全身の血行障害が一過性に生じる為の
症状であり、大半は交感神経の過緊張状態が自然に緩和されて症状が改善する事になり
ます。
なお、仙腸関節領域に於ける巻末の参考文献(10)と同様な神経終末の集簇が同部位
に存在する事を解剖学的に確認する事が必要です。
星状神経節自体(一次性)の不調(異常興奮)の状態では無く、所属している末梢神経
の自由終末よりの慢性的な異常パルスが求心性に星状神経節を賦活し続ける結果として
交感神経の過緊張状態が生じているのであれば、トリガー?ポイント?ブロックが星状
神経節ブロックよりも安全で容易な根本的な治療法になり得るかも知れません。
更に、大半の症例で効果が認められる事になれば、この場合の星状神経節自体の一次性
の継続した異常興奮状態(発作性上室性頻拍の場合の房室結節でのリエントリーによる
頻拍と同様に、神経節での反射的な交感神経の刺激状態の繰り返し)の可能性は否定さ
れる事になるかも知れません。
この結果、一般臨床医にとって、熟練した手技を要し副作用の危険性を伴う星状神経節
ブロックを実施する必要性が減少し、特殊な症例に限定して実施される事となると考え
ます。
以上の様に、仙腸関節由来の神経症状を惹起している一連の神経システムと似通った機
構(新しい概念の頸部症候群であり、正式名称として頚部交感神経過緊張症候群)の存
在が示唆されます。
そこで、新しい概念のもとのトリガー?ポイントのブロックに於いて、どの様な機序で
神経節のシナプスに作用して神経節自体のブロックと同様な効果を達成しているのかと
いう事を解剖生理学的に解明する事が必要になります。
その成果として、頸椎牽引の真の効果も明らかになるかも知れません。
たとえば、臥床位では症状が軽減する場合には、第7頸椎近傍の神経の自由終末に掛か
る頭部の加重による不規則な圧迫が軽減される事になり、頸椎牽引で更に効果が増す事
が期待されます。(骨盤牽引と同様な効果)
なお、起床時に経験する俗に言う寝違い(頚肩甲部痛や腰仙臀部痛)は、睡眠中の寝返
り時に起こす同部の捻れに起因するトリガー?ポイント部の軽度な外傷により生じる炎
症症状と考えます。
頸椎の側弯状態は、片側の頸部の痛みを緩和する為に、反対側の頸部に無意識に頭部の
加重を掛ける結果、生じている可能性があります。(側弯の凸方向の頸部の疼痛が強い。)
頚椎椎間板ヘルニアの場合の頸椎牽引は症状を悪化させる場合が多々ありますので、牽
引の適用から除外すべきと考えますが、頚椎症性神経根症や頚椎症性脊髄症の場合でも
同様に症状を悪化させる可能性を考えます。
上肢の疼痛やしびれ感があり頸椎のMRIで陽性の所見が出た場合に、手術の決定の前に
頸部のトリガー?ポイントに由来する不定愁訴の可能性を除外する事が必要となります。
腰椎のSLRTやFNSTと対比される頸部の末梢神経のテンション?サインとしての
ジャクソン?テストやスパーリング?テストに於いて、頚部のトリガー?ポイントによ
る放散痛と鑑別する事が必要です。
この様にして、全く新しい概念に基づく整形外科領域のエキサイティングなトピックに
なり得るかも知れません。
是非、基礎及び臨床の場で盛んに研究して頂きたいと念願します。 
 
頚部のトリガー?ポイント?ブロックの刺入部位ですが、第7頚痛(隆椎)レベルの位
置から中央に向けてほぼ水平(末梢に向けると肺尖部の刺入による気胸を起こす可能性
が生じます)にブルー針の根本まで刺入し、血液の逆流が無い事を確認して局麻剤(必
要に応じてステロイド剤の添加)を注入する事で治療の目的を達成する事が出来ます。
勿論、従来のトリガー?ポイント?ブロックの様な刺入部位に圧痛が存在する必要は有
りません。
 
ついでに申しますと、仙腸関節由来の不定愁訴の一つに数える事が妥当かもしれないと
考える意外と深刻な悩みである勃起障害(ED)や神経性頻尿や排尿障害や痔疾(静脈瘤)
や慢性の頑固な便秘や原因不明な慢性の下痢や腹痛(過敏性腸症候群等)、陰股部周囲の
不快感(文献5)も、二次性の交感神経過緊張状態に起因する場合には仙腸関節ブロッ
クにより症状が改善する可能性があります。
更に、不妊状態の改善や習慣性流産の予防策として、仙腸関節ブロック(腰部トリガー
?ポイント?ブロック)による子宮や付属器への血行増加策が効果的かも知れません。
また、顔面から胸腹部の自律神経障害(特に交感神経過緊張状態)に起因すると考えら
れている疾患の治療法として汎用されている星状神経節ブロック以外でも、頸部のトリ
ガー?ポイント(ツボ)への局注に於いても同様な効果が認められる可能性があります。
また、反射性交感神経性ディストロフィ-(RSD)や帯状疱疹後神経痛も、障害部位
を支配するトリガー?ポイント(俗に言うツボであり交感神経(?)の自由終末の集合
した部位と考えますが、発症部位が上肢であれば頚部のトリガ-?ポイント、下肢であ
れば、仙腸関節近傍(腰部)のトリガー?ポイントがさし当たり該当すると思われます。)
を特定して、その部位の局注(ブロック)で症状が改善する可能性が示唆されます。
(註;RSDはComplex Regional Pain Syndrome(CRPS)という交感神経が関与(根本原
因が組織の絶対的な血行障害という認識は無い)する一症状に統一する動きがあります
が、全ての症状の主因は交感神経の過緊張の重積状態に起因する組織の栄養血管の過度
な収縮による慢性の血行障害との認識の基では、RSDが最も相応しい疾患群名と考え
ます。)
なお、重症の場合に、常用の鎮痛剤や向精神剤で疼痛の遮断が出来ない場合は、麻薬を
使用する事も辞さない覚悟が必要で有り、ブロック用の局麻剤やステロイド剤も極量使
用し、毎日ブロックを実施する必要があります。
兎に角、交感神経過緊張状態の悪循環(重積状態)を一刻も早く断ち切る手段を採るべ
きと考えます。
RSDの症状が改善した後に、手指の重度な拘縮が残存する場合もありますが、常用の
鎮痛剤の服用とトリガー?ポイント?ブロックを継続しながら、温熱療法(当院ではパ
ラフィン浴)後にマイルド(自制内の疼痛が生じる程度)な手指の可動域訓練を根気よ
く続ける事で完治に近くまで回復する事が可能と考えます。
つまり、手指の拘縮も血行障害が原因で有り、血行改善で殆どの手指の拘縮も改善でき
る可能性があるという事になります。
これは、外傷等の他の原因で生じる全ての関節の拘縮や陳旧性の関節捻挫の慢性疼痛に
も適用できると考えます。
円背変形や亀背変形で脊柱の可動域が制限されている場合に、腰部のトリガー?ポイン
ト?ブロックと背伸びの運動を併用する事で、変形が改善する例を観ています。
尚、RSDの一部の症状としてのXPの所見として診断されるズデック骨萎縮も、血行
障害が原因と考えられていますので、一般に漠然と老化現象と考えられている骨粗鬆症
も、背景として骨組織の緩徐な血行障害が原因である可能性があります。
また、骨折の遷延治癒状態や偽関節が生じ易い四肢骨の特定の部位(栄養血管が乏しい
との解釈)があり、磁気や超音波による仮骨形成を促進させる目的の刺激療法等が度々
試みられていますが、血行を促進させる治療法も試みる価値があると考えます。
更に、下肢の動脈の中等度までの血行障害(器質的な閉塞性動脈硬化症etc.)や静脈瘤
や静脈還流不全(逆流防止弁の不全を除く)に基づく浮腫の一部やある種の不妊症や不
感症等の補助治療法としての効果も期待できる可能性があります。
これまで、心不全や低たんぱく血症や腎不全時以外の浮腫の大半は、静脈還流不全とし
て利尿剤の投与等で対処されてきていますが、RSD時の障害部位の腫脹(浮腫)や一
部の下腿の浮腫が起こる原因として、交感神経過緊張状態による静脈の平滑筋の過収縮
に伴う静脈の収縮が生じて静脈還流が障害されて静脈血の欝滞に伴う毛細管内圧が組織
液の圧を上回る圧の逆転が生じて、毛細血管への組織液の吸収不全が生じて組織の細胞
外に組織液が過剰に貯留している状態の可能性があります。
現に、RSD時に所属するトリガー?ポイント?ブロックを実施する事で、他の症状の
改善と共に浮腫も改善する事を経験しておりますので、頑固な下肢の高度な浮腫の場合
は、トリガー?ポイント?ブロックを行う価値があると考えます。
余談ですが、関節内の滲出液の貯留や正常圧水頭症は、前記の浮腫と発生機序が似通っ
ているのかも知れません。
 交感神経過緊張状態が悪性腫瘍に対する免疫機能を抑制している場合には、交感神経
過緊張状態を改善する事で、本来の抗癌機能を回復させる事が可能と考えます。
精神疾患の範疇である鬱病も交感神経過緊張状態が深く関与している事が知られていま
す。
 次の段階として、中枢神経系にフィードバックする可能性があるトリガー?ポイント
を探すことになりますが、顎関節近傍の東洋医学での「下関」辺りが先ず思いつきます
ので、この部位への麻酔剤の局注で症状の軽減の有無を試すことを計画しています。
なお、第7頸椎近傍のトリガー?ポイントへの局注時に、後頚部から後頭部にツーンと
する様に表現される放散痛が生じる例を経験していますので、この部位での局注で中枢
神経系における交感神経の興奮状態を沈静化させる事が出来るかも知れません。
仙腸関節近傍や第7頸椎近傍は脊柱全体の運動の大きな基点であり、顎関節近傍も同様
な視点から眺めると、新しい運動生理学上の理解が得られるかも知れません。
この手始めとして、外傷性頚部症候群に於いて度々経験する視力障害を主訴とする眼精
疲労は、眼球を動かす外眼筋の疲労状態が本態であり、一般的に行われている外眼筋の
温熱療法(血行増加が目的)が効果がありますので、外眼筋の疲労を惹起している原因
が交感神経過緊張による外眼筋の栄養動脈の持続した収縮(攣縮?)による血行障害が
原因と考えますと、交感神経の緊張を解除する事が根本治療という事になります。
更に、鞭打ち損傷時に生じる頭痛は帽状腱膜の阻血痛であり、めまい感や耳鳴りは内耳
の血行障害であり、嘔気は胃組織の血行障害であり、一過性の上肢のしびれ感や頚部周
囲の筋肉の緊張状態も筋肉組織の血行障害で説明できます。
鞭打ち損傷の数日後に、全身の筋肉の緊張状態がよく見られますが、これは鞭打ち時に
生じる主に精神的な一過性の交感神経過緊張状態に起因する全身の動脈の収縮に依る支
配組織の血行障害が原因と考えます。
また、天候の変わり目になると症状が増悪する事も、交感神経の過緊張状態に於ける周
囲の環境の変化(気圧や湿度)に対する調節機能の過敏反応が関与する現象と考えられ
ます。
 外眼筋を含めて全身の筋肉の疼痛は、糖の分解産物である乳酸の蓄積が原因と考えら
れていますが、更に血行障害が生じて組織への酸素の供給が不足(酸素欠乏状態)する
と、細胞内のミトコンドリアでの酸素を利用したATP(エネルギー源)の産生が不十分
となり、組織のエネルギー不足により生じる阻血痛がその本態ではないかと考えます。
ここで、阻血痛が生じるメカニズムについて少し述べます。
血行障害等で組織が酸欠状態に陥ると、血管内皮細胞が傷害されて血管の内腔の表面の
結合組織層のコラーゲンが露出する事となり、血漿内の内因系血液凝固系の第ⅩⅡ因子
が活性化されて、血漿中の高分子キニノゲンと複合体を形成しているプレカリクレイン
をカリクレインに変化させ、同時に第ⅩⅠ因子を活性化します。
遊離した高分子キニノゲンは、活性化された第ⅩⅡ因子がプレカリクレインをカリクレ
インに変化させる反応を促進させます。
更に、カリクレインは、不活状態の第ⅩⅡ因子を活性化する事で、この内因系凝固反応
を促進する事となります。
また、活性化された第ⅩⅡ因子は、血管透過性を亢進させます。
また、カリクレインは、高分子キニノゲンを分解して、生体内で最大の発痛物質である
ブラジキニンを放出させます。
ブラジキニンは、知覚神経の自由終末(C繊維)の侵害受容器(ポリモーダル受容器))
を興奮させて、発痛(灼け付く痛み)や痛覚過敏や掻痒感をもたらします。
また、ブラジキニンは、毛細血管を構成している内皮細胞のB2受容体に結合し、この
細胞を収縮させて、内皮細胞間の空隙が拡大し毛細血管の透過性が亢進し、組織の浮腫
が生じますが、同時に、NO(一酸化窒素)が産生されて、細動脈の平滑筋が弛緩して
血管が拡張し、収縮期血圧及び拡張期血圧が低下し、心拍数が増加する事となります。
以上の様な阻血時の酸欠状態を起因として一連の反応により生じるブラジキニンがもた
らす疼痛が阻血痛という訳です。
スポーツ等の労作時の筋肉痛は、労作時に必要な血行が十分に補充されない為に生じる
相対的な筋肉組織の酸素不足が原因と考えられますので、トリガー?ポイント?ブロッ
クを実施して血行を増加させる事で症状を改善させる事が可能と考えます。
スポーツの直前に実施すると、筋肉疲労を遅らせる効果も期待できます。
 
ぶどう膜(虹彩、毛様体、脈絡膜)の原因不明の炎症も、栄養動脈の血行不全が発症の
原因の可能性がありますので、同側の頚部のトリガー?ポイント?ブロックを実施する
価値があると考えます。
片頭痛や筋緊張性頭痛やメニエール病(血行不全に起因する内耳の内リンパ水腫に依る
平衡器官である三半規管の機能不全)の場合も、この部位のブロックにて所属する交感
神経の発作的な過緊張状態を解除する事で症状が改善する可能性があると考えています。
後日談ですが、頸部のトリガー?ポイントのブロックで、同部や顎関節症の疼痛が改善
する事が分かりましたので、顎関節近傍に新しいトリガー?ポイントを探す必要は無い
様です。
残る問題は、このブロックで、中枢神経系の血行改善が実現するかどうかですが、後述
の四肢の場合の様な血行の増加による体温の上昇の兆候に相当するサイン(頭に血が上
ってカーッとする感じ?)を見つける事が必要です。
なお、労作性の筋肉疲労(実はこれも労作時に必要とする血行が不足する相対的な阻血
状態と考えることができる)を除いて、首や肩甲部や背腰臀部や四肢の筋肉の凝り感(こ
の極限状態が筋肉の攣縮である所謂こむら返り症であり、寝違いもこの一種)やしびれ
感や異常知覚状態(知覚過敏)や関節の異常所見が無く日頃殆ど歩かない人の股関節や
膝関節周辺の疼痛(鵞足炎や膝窩筋腱炎の本態?)、肘部管症候群様症状や手根管症候群
様症状や尺骨神経管症候群様症状等で、チネル徴候が無く同部の神経の直接的な絞扼に
乏しい場合には、交感神経の過緊張状態に起因する各部の栄養動脈の血行不全(更に阻
血状態が進行し重積状態になるとRSDの一形態である肩手症候群に進展)が原因で生
じる可能性があると考えます。
そこで、絞扼を解除する手術後もしびれ感等の不定愁訴が残存する場合は、同側の頚部
のトリガー?ポイント?ブロックを実施する価値があると考えます。
 股関節や膝関節の疼痛やしびれ感を主訴とするも、XP上でOAの変化が殆ど無く、
諸テストでも陰性の場合に、同側の仙腸関節近傍の局注を行い、主訴が改善する例を多
数経験していますので、一度、試みる価値があります。
なお、幼児期の成長痛(単純性股関節炎?etc.)は、成長期に於ける全身の組織の栄養
の要求度が成長期以降に比べて高い為に、遊び等の運動時に組織の血行の相対的な不足
により、酸欠状態になり阻血痛としての症状が生じているのではないかと考えます。
 
 最近、頸部のトリガー?ポイント部位を指先で圧迫した際に、圧痛と同時に肩関節へ
の放散痛も生じ、この部位が肩関節周囲炎(外傷のエピソードが無く、関節の所見(OA)
も無い)として関節内注入を行っている部位でもありました。
そこで、試しに同部のトリガー?ポイントへの局注を行ったところ、何と!肩関節周囲
の疼痛も改善しましたので、肩関節周囲炎(五十肩)の症状の多くが交感神経の過緊張
状態に依る周囲の栄養血管の阻血状態で生じているのではないかという推測が成
り立つ事になります。
更に、五十肩ではの拘縮を伴う事が多く、これは阻血による筋肉の凝り状態(労
作による筋肉疲労のエピソードが無い慢性の首の凝りや肩の凝りと同様)が本態ではな
いかと考えます。
五十肩の場合は、最も気温が低下する明け方に疼痛の増悪を訴える例が多く認められま
すが、これは気温の低下にて反射的に毛細血管の血行が途絶する結果、血行障害が更に
増悪する事で阻血痛が増加している状態と解釈出来ます。
この様な場合は、肩周囲の十分な保温や使い捨てのカイロの貼付(温熱療法)が疼痛の
増悪防止に効果的です。
五十肩の場合は、肩関節周囲に圧痛点が存在し関節内注入でも十分に疼痛が軽減します
ので、同部に痛みの原因(炎症)が存在する事は確実であり、外傷や労作の要因が無け
れば、阻血により組織の恒常性が実際に障害される事となり、疲弊組織を修復する為に
反応性の炎症が生じ、付随する疼痛(阻血痛)が生じていると解釈する事が妥当と考え
ます。
ところで、拘縮が高度の場合は、早期の改善を目指す為に、肩関節の可動域訓練を力ず
くで行う事が度々行われていますが、耐え難い疼痛を必死に堪えて行う事は交感神経に
強いストレスを与えRSD様の拒絶反応を惹起する危険性があり、関注や温熱療法等で
疼痛が軽減した状態に於いて、自制できる軽度な疼痛が生じる程度に無理なく愛護的に
行う事が望ましいと考えます。
これは、全ての関節の可動域訓練時に共通した重要事項と考えます。
また、同側の頸部のトリガー?ポイント?ブロックにより、罹患関節の血行状態が改善
すると、肩周囲の筋肉の緊張状態や阻血痛も軽減し、暴力的な力ずくの可動域訓練を行
う必要も無く、自然に可動域も改善する事になると考えます。
以上にて、従来より行っている肩関節への関節内注入は、どちらかと言いますと疼痛に
対する対症療法であり、トリガー?ポイントへのブロックが根治療法という位置づけに
なりますが、血行が一時的に改善して一時的に阻血痛が消失しても、楽観して中断する
事無く、完治する迄は継続したブロックを実施する事が重要と考えます。
なお、肩関節の拘縮は自然に改善する事も多く、関節包の癒着による縮小化を原因とす
る関節拘縮は殆どの例で生じないもの考えます。
因みに、上肢や下肢の手術時に駆血帯にて血行を遮断する際に生じる最も強い阻血痛は、
温痛覚を麻痺させる部分麻酔(脊椎麻酔や硬膜外麻酔)に於いてブロックする事が出来
ますので、痛覚の受容体を介する刺激に分類することが出来ると考えます。(以前の間違
った記述を訂正しています。)
駆血帯を巻いた部位は、深部の動脈の流れを遮断する為に、通常の収縮期血圧の数倍の
圧力を駆血帯のカフ内に加えていますので、この圧迫により皮膚の圧を感知する圧覚の
受容器に強い刺激となり、これが駆血痛という形で知覚される事になります。(交感神経
とは無関係です。)
ところで、麻酔の深度に比例して、血管運動神経、温痛覚、触覚、圧覚、運動神経の順
に麻痺が生じますので、圧覚は深い麻酔深度でブロックされる事となり、通常の部分麻
酔では十分な圧覚を麻痺させるだけの麻酔深度には余り達する事が無い事が、部分麻酔
下に於いて駆血痛が残存する原因という事になります。
全身麻酔下に於いて、術中の侵害刺激を悪夢の様に覚えている例もあるとの事ですが、
これは知覚神経の侵害受容器が痛覚の刺激として中枢の知覚神経野に信号を送り続けた
結果です。
温熱療法は、局所の体温を上げる事により反射的に同部の毛細血管を拡張させて血行を
増加させる事で新陳代謝(組織の老廃物の除去と栄養の取り込み)を促進させる結果、
疲労した組織の回復を計る理学療法ですが、交感神経過緊張状態による血行不全により
惹起された組織の疲労症状を改善する目的の為にも理に叶った治療法と考えます。
なお、冷罨法は、皮膚温を下げて毛細血管の血行を低下させる事となりますので、外傷
に起因する損傷を受けた組織の修復の為の炎症よる強い疼痛が生じる急性期(数日間)
の除痛目的以外での使用は禁忌と考えます。
この様な新しい治療法により、肩関節周囲炎の概念が変更される可能性があり、長期に
渡る耐え難い疼痛(狭心症や心筋梗塞の場合と同様な阻血痛であり、疼痛が中枢性に交
感神経を刺激して更なる阻血状態の悪循環に陥っている状態)が短期間の内に改善する
可能性があります。
疼痛や拘縮が高度の場合は、疼痛部位への直接的な除痛を目的とする関注により関節周
囲の疼痛を改善し中枢神経系(痛みの中枢)を介する交感神経系への刺激(重積状態)
を軽減し、更に、頸部のトリガー?ポイントへの局注により末梢の知覚神経(?)より
求心性に所属する交感神経節への刺激をブロックする事で、これら2つのルートを介し
て興奮している所属の交感神経節を沈静化する事となり、障害を受けている肩関節周囲
の組織への血行が改善して阻血痛が軽減し疲弊している関節の修復も促進される事にな
るものと推測しています。
今後、症例を増やして、この推測の妥当性の有無を確かめる予定です。
ところで、例えば尿管結石の場合の疼痛が背腰部に放散痛として感じられても、同部位
に圧痛点は無く同部位の局注でも疼痛が全く改善しない事となりますが、これは単なる
関連痛という幻の症状であり、容易に鑑別する事ができます。
 尚、特に肩関節に負担が掛かる様な重労働の職歴や外傷の既往も無い例で、関節炎(XP
上、骨棘に乏しく軟骨の減少が特徴的で関節リウマチに似た所見)を認める事がありま
すが、五十肩の阻血状態が長期に渡る結果、関節組織の栄養障害による関節軟骨の再生
(恒常性を維持する為のターン?オーバー)不良が生じている可能性を考えます。
これと同様な機序で、股関節や膝関節や足関節にも関節軟骨の再生不良に起因する関節
炎が生じている可能性があります。(関節リウマチとの関連が今後の課題です。)
ここで、関節軟骨の菲薄化について、一つの推測を行います。
現行の考えでは、軟骨の菲薄化は、磨り減る割合が再生の割合を超える為に生じている
との考えが主流です。
非荷重関節である肩関節や肘関節等がある上肢では、この考えは該当しない様に考えら
れますし、RAの場合の荷重が掛からない部位の軟骨も一様に菲薄化する事を考えます
と、磨り減るのでは無く、軟骨の再生と吸収のターン?オーバーのサイクルに於ける再
生の能力が低下する事で関節軟骨の菲薄化が生じると考えることで、全ての辻褄が合う
事になると考えます。
つまり、関節の軟骨を栄養する血行が潤沢に保たれている場合は、加重関節に掛かる負
荷(負荷時には血行が増加する)の程度に応じて関節軟骨の再生能が磨り減り具合より
低下すると関節軟骨の菲薄化が生じる事になりますが、運動負荷が掛からない場合にも
軟骨の栄養が不足(血行障害に依る酸素や栄養の絶
対的な不足)すると、リウマチの様に関節軟骨全体の菲薄化が生じる事となると推測し
ます。
関節軟骨の損傷時にも、軟骨の再生障害が生じることが度々経験されますが、再生を促
進させる治療の研究が進められていますが、血行を増加させる事も大きな効果をもたら
す可能性があると考えます。
XPにて認められる関節の不安定状態に対する生体の防御機能反応としての骨棘形成は、
ある意味、血流が豊富で防御機能が余裕を持って行われている証拠と考える事が出来ま
すので、骨棘形成が乏しく関節軟骨の菲薄化や関節面の骨硬化のみが認められる場合は、
組織の血行障害が長期間生じた結果と判断する根拠となるものと考えます
一方、労作性や荷重性や関節の形状異常や関節の不安定性等の過剰な負荷が掛かる状態
の関節炎のXPの所見は、経年的に修復反応としての骨棘が生じる事が一般的です。
過剰負荷による関節軟骨の菲薄化は、関節組織の相対的な栄養不足で生じている可能性
がありますので、変形性関節症の中期迄の症例では、当該関節の栄養血管の血行を促進
させる事で、数ヶ月の期間で観察すると、関節軟骨の増加を認める事になるかも知れま
せん。
外傷時以外に生じるこの様な関節の障害は、関節に掛かる過剰負荷の状態に対応すべき
血液(酸素や栄養)の供給が不十分な結果生じる相対的な血行障害が原因と考える事が
出来ます。
つまり、東洋人に多い内側型の変形性膝関節症に於いて、肥満や下腿の内反変形(O脚)
が大きな原因となっている事は確実ですが、力士の様に更に過剰な肥満体型でも簡単に
は変形性膝関節症にはならない事を考えますと、相対的な膝組織への血行障害が変形性
膝関節症の大きな病因となっている事も十分考えられます。
なお、関節痛の際に、局麻剤やステロイド剤を関節内に注入する事を常套手段として行
っていますが、関節包の内側の関節腔内に知覚神経の自由終末が存在しているのかどう
か、文献に詳しくありませんが、些か疑問と言わざるを得ません。
但し、関節内に注入する事で、確実に疼痛を軽減する事が出来ていますので、この治療
法を変更する必要性はありませんし、疼痛による交感神経過緊張の悪循環を断ち切るた
めにも必要な治療法と考えます。
この様な疑問の発端は、仙腸関節内注入のつもりで行ってきました手技が実際は関節外
のトリガー?ポイントへの局注であった事であり、それでも仙腸関節の疼痛が改善して
いたからです。
ところで、膝の関注時に足先に放散痛が生じる事があり、新しい神経システムの存在が
示唆されます。(勿論、注射針が腓骨神経等の末梢神経にヒットした可能性はありません。)
この様な機構が他の多くの関節の近傍に存在する可能性があります。(今後の課題です。)
ただし、注射針の刺入時の疼痛による中枢性の交感神経の一過性の過緊張状態で生じて
いる可能性を排除する必要があります。
同部の関節包外に局麻剤を注入して下腿の血行増加の有力なサインである暖かい感じが
生じるか否かを確かめる予定です。
 特に、狭心症や心筋梗塞や阻血性のイレウス等の強い疼痛時に、中枢性の交感神経の
過緊張状態が悪循環を生じて重積状態に陥っている可能性がありますので、先ずは麻薬
剤等の強力な鎮痛剤の投与を行い、疼痛の重積状態を断ち切ることが重要と考えます。
人工膝関節置換術直後の膝の可動域改善目的の膝の自動可動域訓練機(機械による力ず
くの関節運動)を使用中に生じるRSD様症状は、この様な機序が本態と考えます。
そこで、自動可動域訓練機の操作は、訓練時の痛みの程度に応じて患者自身が自由に運
動の強弱をコントロール出来る様して、必ず自制の範囲内で緩徐に行う事が肝要であり、
運動の前に病室までホットパックの出前を行い、患部を十分に暖めて、血行改善による
関節の運動痛を柔らげ、関節周囲の軟部組織の緊張状態を緩和した状態に準備する事が
肝要です。
なお、マッサージも簡便で効果のある治療法ですが、こちらも必ず患部を暖めて、血行
を改善して筋肉の緊張が低下した状態で行うと、マーサージによる血管のポンプ作用で、
更に血行を改善する作用を増幅する効果をもたらします。
尚、持続硬膜外麻酔により人工膝関節置換術後の数日間の最も強い疼痛を軽減する事は、
RSD様症状の発現を予防する為にも大変有効な処置と考えます。
また、術直後よりトリガー?ポイント?ブロックを行う事も、血行障害による関節拘縮
の発現を予防する為にも有効と考えます。
この処置は、拘縮が生じやすい肩関節や肘関節の外傷直後にも拘縮の予防的効果がある
と考えます。
 ところで、全ての圧痛部位への慣習的な局注よりも、交感神経の過緊張状態を惹起し
ているトリガー?ポイント(頚部では第7頸椎近傍、腰殿部は腸骨稜より数センチ末梢
部の仙腸関節近傍)の部位に存在すると推測される末梢神経の自由終末をブロックする
事がより根本的でより包括的な治療法になると考えます。
つまり、単なる圧痛部位は組織障害が生じて局所に炎症が生じている部位の事であり、
知覚神経の自由終末が存在する部位に圧迫という刺激が加わる事により疼痛が増加する
事となりますが、トリガー?ポイントは知覚神経の自由終末以外に所属の交感神経節に
求心性に信号を伝える神経の自由終末が存在している部位(同部の圧迫に依り圧痛以外
に交感神経の一過性の過緊張による阻血痛と考える放散痛が生じる)と解釈されます。
トリガー?ポイントに的確にヒットした場合には、局所麻酔剤による麻酔効果にて所属
部位(例えば、上肢や下肢)のホワァーとすると表現される様な暖かい感じや軽くなっ
たと表現される様な症状が改善した感じが生じる事を度々経験しますが、これは、所属
の交感神経節がブロックされて血管が拡張して血行が増加した為に生じる局所の体温の
上昇の感覚と解釈されます。
 
ここで、本来は限りある全身の血液の循環を必要(全身の各組織の恒常性(正常な働き)
を保つ)に応じて各組織に適切に分配する目的で、全身の血行動態(外的要因や内的要
因に左右される)を見据えて、各組織の血行の過不足無い調節を行う働きを担っている
交感神経系が様々なストレスにより異常緊張状態に陥り、全身の血行の精緻なバランス
を巧妙に保っている正常な調節機能が破綻する結果、全身の所属する各組織の栄養血管
の血行不全をもたらし組織障害を惹起しているのではないかという病んだ機構の全体像
(仮称;交感神経過緊張症候群)が見えてきた様に思います。
交感神経系の過緊張状態を惹起するストレスの最も重要な因子は持続する疼痛であり、
疼痛により交感神経の過緊張状態が生じて血管が収縮して阻血状態となり、阻血痛によ
り更に交感神経が過緊張状態になるという様に悪循環が生じる事になると考えますので、
先ずは、疼痛を緩和する処置が最優先される事になります。
なお、トリガー?ポイントのブロックで所属の組織の血行が改善する事は、多くの臨床
的な経験から確かな事実ですが、これが単なる疼痛を緩和することで中枢的(気分的)
に交感神経の過緊張状態を改善する結果、末梢の血行を改善している可能性があります。
但し、四肢の末梢部の疼痛に対して、頸部や腰部のトリガー?ポイントのブロックを行
った場合でも、四肢の血行が改善(暖かい感じ)し疼痛が改善する事実を考慮すると、
疼痛部位では無いトリガー?ポイントのブロックで、交感神経の過緊張状態が改善して
いる事は確実であり、矢張り、トリガー?ポイント部に交感神経系を賦活する末梢神経
の自由終末が存在していると仮定する事が最も理に叶っていると考えます。
解剖学にて、腰部のトリガー?ポイント部に神経の自由終末が存在する事が証明されて
います。(巻末の参考文献11)
次の段階として、この神経が求心性にどの様な神経システム(望むらくは交感神経節)
に接続しているかを解剖学的に確かめる事が必要になります。
ところで、もし、この様に想定する神経が存在した場合に、どの様な生理的な意味があ
るのかという疑問が生じます。
一つの案としては、交感神経の適度な緊張状態(これが消失すれば、血管の収縮を行っ
ている血管の平滑筋が弛緩して血管腔が拡張して血圧が急速に低下する事で、虚脱状態
であるショック状態になる。)を保つ為に、体外の環境の変化に対応する為の体表面の温
度等のセンサーによる常時監視機構と共に、頸部や腰部等の生体にとっては末梢の重要
な部位に神経終末(センサー)を設置して所属する交感神経節に絶えず適当な刺激信号
を送り続けているのではないかという考えです。(脳幹部の網様体賦活系の作用に対比?)
そこで、トリガー?ポイント部に外的な運動等のストレス(異常負荷)が加わり、同部
に機械的な刺激に対する炎症反応が生じて疼痛等の刺激要因が加わると、侵害受容器で
ある神経終末から過剰な刺激信号が交感神経節に送り続けられる事になり、交感神経が
過緊張状態に陥ることになるという推測です。
なお、この様な継続的な交感神経節の賦活状態が持続して、交感神経節自体の異常興奮
状態が発生すると、トリガー?ポイント?ブロック等で神経終末のブロックを行い末梢
の刺激信号が消失しても交感神経自体の異常興奮状態が持続する事態も想定される事に
なり、この場合は星状神経節ブロック等の交感神経節自体のブロックが必要となります。
 
 交感神経過緊張状態に依る血行障害(酸素欠乏や栄養不足)に起因する重篤な疾患と
しては、動脈の攣縮を起点として生じると考える胃?十二指腸潰瘍(ストレス潰瘍であ
り、血行障害に依る粘膜保護機能の低下(バリアの破綻)に続発する細菌(ヘリコバク
ター?ピロリ)の感染による慢性化)や膵炎や狭心症や心筋梗塞や脳梗塞(アテローム
血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞)、スロー?ビールスの感染症と考えられている脳脊髄の変性
疾患、中枢神経系の血行障害に伴うと考える様々な神経精神疾患(統合失調症、鬱病、
パニック障害、認知症(アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、老年期認知症、
多発性脳梗塞に伴う脳血管性認知症)、パーキンソン病、てんかん発作、片頭痛等)、手
掌多汗症、甲状腺ホルモンの分泌障害、副腎の機能障害、膵臓の機能障害(糖尿病)が
考えられます。
しゃっくり(?り、吃逆、?)とは、横隔膜(または、他の呼吸補助筋)の強直性痙攣
および、声帯が閉じて「ヒック」という音が発生することが一定間隔で繰り返される現
象で、ミオクローヌス(myoclonus:筋肉の素早い不随意収縮)の一種であると定義され
ていますが、これも、こむら返り症と同様に横隔膜の筋肉の血行障害であると考え、頚
部のトリガ-?ポイント?ブロックを毎日行う事で発作を消失させる臨床効果を認めて
います。
脳萎縮の典型が脳梗塞である事を考えますと、脳の特定部位の萎縮が生じる原因として、
当該部位の血行障害が病態の背景にある可能性を検討する必要があると考えます。
この様な疾患の背景として、持続する精神的なストレスが存在する可能性を検討して、
精神的なストレスを緩和する対処法の検討も必要と考えます。
 糖尿病性の末梢循環障害(栄養血管の血行不全による組織(腎臓や網膜等)障害や末
梢神経炎)は、インシュリンによる組織への栄養の取り込みが障害されている事に加え
て、栄養血管を栄養している細動脈が交感神経が過緊張にて収縮して酸欠や栄養障害と
いう二重苦の状態にあり、交感神経過緊張状態を改善する事により障害組織の改善が期
待されます。(巻末の文献15を参照)
なお、悪性関節リウマチやリウマチ性多発筋痛症に合併して生じる動脈炎も、同様に動
脈を栄養している細動脈の血行不全による酸欠及ぶ栄養障害が原因で生じている可能性
があります。
 
 関節リウマチ(RA)も、発症や増悪の主因として血行障害(”朝のこわばり”の持
続時間が血行障害の程度の目安?)の可能性も再検討する価値があると考えます。
その他の関節においても、起床時には強ばった感じや脱力感があり、少し運動している
内に調子が良くなるとの訴えは、夜間の就寝時には、心臓の拍出量が昼間よりも低下し
(心臓を休めるアイドリング状態?)、血圧が必要以下に低下する事を防ぐ為に血管が収
縮して血行が障害されているが、起床後に心臓の拍出量の増加に伴い血管が拡張してく
る事による末梢循環の改善がその本態の可能性があります。
 1999年に、関節リウマチの発症機序に関するレポート(文献20)を書き、最近で
は関節軟骨の再生不良が発症の原因であり、再生不良の原因は骨髄に存在する軟骨を生
成する軟骨細胞及び幹細胞の機能不全という推論に至っておりましたが、更なる根本原
因は長い間思い当たらなかった訳ですが、関節組織の血行不全による酸素欠乏状態や栄
養障害の結果、骨芽細胞や軟骨芽細胞等の機能不全や関節組織の形態維持機能の障害が
生じていると推論すれば、全ての辻褄が合致するのではないかと考えます。
但し、依然として説明が出来ない所見として、指のPIP関節まではRAに罹患する事が
一般的ですが、末梢のDIP関節の罹患は極めて少なく、もし循環障害が原因であれば、DIP
関節がより血行障害によるRA症状を呈する可能性が高いという推測が当然と思われる
からです。
最近、約40年来のRAでプレドニゾロンというステロイド剤を一日10mg服用を続
けている事で、皮膚の萎縮が高度となり僅かな接触で大きな皮膚の剥離創を繰り返して
いる高齢の患者を経験し、皮膚の萎縮を改善させる目的でステロイド剤を中止したとこ
ろ、全く無症状であった多関節の腫脹と疼痛が約1週間後に再燃し、改めてステロイド
剤の効果を再認識したところです。
つまり、ステロイド剤は、一般的な消炎効果と共に、関節の一連の炎症反応に於いて、
再燃の引き金となると推測される或る種の反応を強くブロックする役目を行っている事
が示唆されます。
そこで、RAは、他の関節炎と同様に血行障害を起因として発症するが、血行障害が組
織の恒常性を司る未知の機構の破壊まで及ぶ事で、リウマチ特有の関節破壊が生じる可
能性が示唆されます。
つまり、この機構の破壊により常に炎症(本質は修復機能)が生じ得る状態にあるが、
ステロイド剤がこの反応を抑制している事が示唆されます。
更に、一般的な炎症反応は修復が達成されると速やかに消退する事が常ですが、RAの
場合は組織の恒常性を司る機構の破壊により修復が達成されない事が慢性の炎症を繰り
返す原因ではないかと考えます。
 
生体にとって、末梢(特に手指の末端部)組織は、常に外的な負荷(侵襲)に晒される
可能性が高く、十分な血行を必要とする為に、予備の循環機構が存在している可能性は
如何でしょうか?
この可能性を示唆する病状としての手指のDIP関節の過剰なまでの骨棘形成を呈する
ヘバーデン結節は、血行が豊富である証拠(外力に対する骨棘形成という防御反応にお
いて、骨棘の材料を潤沢に利用した結果)かも知れません。
なお、下肢の末梢である足趾の場合は、冷え症(リウマチに付随する例が多い)の訴え
や爪や足趾間の真菌症の好発部位(対して手指の爪や手指間の真菌症は極希)を考慮す
れば、この部位の血行の予備機能は存在しないと考えます。
余談ですが、強直性脊椎炎や変形性関節症の一部の骨棘形成が異常に亢進している病態
に於いても、血行が異常に増加している可能性を検討すべきと考えます。(交感神経低緊
張症候群?)
ところで、反対の現象と考える慢性の呼吸不全や心不全時に現れる太鼓ばち様の手足の
指の末節部の腫大(ばち指)は組織の酸素欠乏状態による細胞の壊死後の線維化を反映
している可能性があります。
また、RAに於ける関節障害のタイプが強直型(関節が固定した状態)とムチランス型
(関節の破壊が高度で、関節の軟骨下骨まで破壊されて関節機能が破綻した状態)に大
きく大別されて、混合型は極めて希である事の理由は、現在のところ不明です。
一つの推論として、軟骨を作る軟骨細胞だけの機能障害では関節軟骨の消耗後は関節が
強直状態となる結果これ以上の関節の破壊が進行する事はなく、一方骨細胞の機能障害
も平行して生じる場合は、骨の再生が障害を受ける為に軟骨下骨の再生不良も生じると
いう考えですが、依然として、混合型が極めて少ない事の理由の説明は出来ません。
RAは、関節軟骨の形成(恒常性を維持する為の軟骨再生のターン?オーバー)不全に
加えて、骨棘形成も極めて乏しいという観点から、骨形成(恒常性を維持する為の骨再
生のターン?オーバー)不全が生じる程に血行障害が進む事で、関節破壊(正確には、
骨組織の再生不全)まで進行したムチランス型が生じる事になるものと考えますと、四
肢の左右の関節の血行障害がほぼ均等に生じているものと仮定すれば、混合型が極めて
少ない事の理由が説明できる事になります。
また、RAの関節の関節液の牽糸性(粘稠性)が低下している状態は、通常では数cc
の関節液が炎症性の浸出液で希釈されている状態を除いて、関節の滑らかな動きを保つ
潤滑の役目を主に担っている関節液の主成分としての正常な高分子ヒアルロン酸の合成
が組織の栄養不足により阻害されている結果と考えますし、関節滑膜の増生や関節水腫
(関節内への浸出液の貯留)は、飢餓状態の関節組織を正常に保とうとする関節の保護
作用(炎症の本来の目的)の現れではないかと考えます。
さらに、関節の骨組織のパンヌス様の破壊像を認めますが、これは、血行障害により骨
組織が壊死状態に陥り、後に生じた死腔を瘢痕組織(線維組織)や滑膜により埋めよう
とする自己修復反応の現れと考えます。
ところで、現在は上肢の関節のRA症状に対しては同側の頚部のトリガー?ポイントへ
の注入(ブロック)、下肢の関節のRA症状に対しては同側の仙腸関節近傍(トリガー?
ポイント)への注入(ブロック)を行い、症状の軽減を検証中です。
半世紀以上の長期に渡り全世界の研究所で癌の研究の次に研究費が費やされているRA
の病因が未だに未解決という事は常識的に大変不可解であり、自己免疫疾患という前提
を一旦白紙に戻して、病因の解明及び根本治療に向けて新しい第一歩になる事を期待し
ます。
自然の仕組みを解明する学問である物理学は、実験事実が最優先されますが、医学の場
合は、疾病の臨床所見(最も重要な患者の訴え、理学所見、各種の画像診断、血液検査
等)が当然ながら病態を客観的に表している訳であり、もっと臨床の場の所見を重要視
すべきと考えます。
特に、患者の訴えは、安直に気のせい(精神疾患との誤診)と解釈する事無く、最良の
教師に勝る値千金の重要な示唆を与える可能性を常に考慮しておく事が必要です。
不安状態が強い場合は、ストレスによる交感神経の緊張を緩和する鎮静目的で向精神薬
の併用も有効と考えます。
関節組織の阻血状態を作成した動物モデルに於いて、RA様の関節変化を惹起できるか
どうかも、是非、実施して頂きたい重要な基礎実験となります。
最近、RAの強直型の場合に、症状が増加している状態で局所の熱感は当然として患側
の上下肢全体の熱感を伴う例を経験する事となりましたが、トリガー?ポイント?ブロ
ックで症状(疼痛)の改善どころか増悪したとの訴えがあり、急性増悪時には、逆効果
となる可能性がある事を経験する事になりました。
急性増悪期には血行が増加している可能性があり、ブロックにて更に血行を増加させる
事で、炎症反応を亢進させて疼痛を増悪させている可能性があります。
なお、ついでに申しますと、一般の高齢者の方で足の裏が灼けるように熱いとの訴えが
時々ありますが、この状態は血行がむしろ亢進している事が示唆される事となり、この
場合はトリガー?ポイント?ブロックで血行を更に亢進させる結果、症状を増悪させる
事になる可能性を十分に考慮する事が必要と考えます。
今後、これらの点に十分注意しながら治療方法を臨機応変に選択する必要があります。
ところで、慢性の関節炎を呈する変形性関節症の場合は、骨棘が生じて、加重部の軟骨
の厚さが減少し、関節液の増加と関節液の性状は粘稠性の低下は殆ど無く、滑膜の増生
やデブリスと呼ばれる関節の老廃物(壊死組織)も少ない(デブリスが多い場合はRA
との合併状態の可能性)のが特徴的な所見ですが、軟骨の機能維持に重要な働きがある
関節液の主成分であるヒアルロン酸の関節内注入や楔状の足底板による膝の加重面の反
対側への移動や肥満の軽減等の長期に渡る努力にも拘わらず、一向に軟骨の厚さが増加
する兆しが殆ど認められない例を度々経験します。
なお、関節液の増加は、組織の血行障害時に度々認められる局所の浮腫の一形態とも考
えられます。
関節軟骨の再生不良は、外傷時にも度々経験し、軟骨再生を促進するホルモンの研究が
行われていますが、RAの場合と同様に関節の血行障害が生じている可能性を考えます。
 なお、他に病因が解明されていない疼痛を主訴とする疾患(リウマチ性多発筋痛症、
筋筋膜性疼痛症候群、線維筋痛症等)の原因は、血行障害が発症の発端ではないかと考
えますので、トリガー?ポイント?ブロックで症状の改善の有無を調べる意義があると
考えます。
また、原因不明の慢性疲労症候群の病因が全身組織への血行障害であれば、両頚部及び
両腰部のトリガー?ポイント?ブロックによる中等動脈の血管の拡張による血行改善に
て症状が軽快する可能性がありますので、試す価値が十分にあると考えます。
腱鞘炎は臨床的に大変頻度が高い疾患ですが、腱鞘組織(プーリー)の血行障害による
線維化(肥厚)が原因の多くを占めている可能性があり、ロッキングやスナッピングを
呈するまでに進行した場合は、腱鞘内での屈筋腱の滑動を物理的に阻害している腱鞘の
切離術が必要ですが、中等度までの場合は、腱鞘内への局麻剤やステロイド剤の注入が
行われていますが、同側の頚部のトリガー?ポイント?ブロックが効果的で有り、同部
の手指のPIP関節の屈曲拘縮を伴う事も多く、ブロックで拘縮が改善する可能性があ
ります。
また、デュプイトレン拘縮は、手掌全体の血行障害により生じる組織の瘢痕化(結合織
化)の可能性があり、血行の改善により手指の拘縮が改善する可能性があります。
 若年大腿骨頭壊死や大腿骨頭すべり症は、成長痛と同様に、成長期に必要な股関節の
血行障害(骨頭壊死は骨組織の酸欠及び栄養障害、すべり症は軟骨組織の酸欠及び栄養
障害)が大きく関与している可能性があると考えます。
 
 ところで、間質性肺炎は肺組織の間質部(及び実質部?)の血行障害に起因する酸素
の欠乏状態や栄養不足による細胞の壊死後の線維化と考えます。
また、肝硬変も、肝細胞へのウイルス感染やアルコールによる障害や有毒物質の蓄積に
よる細胞死後の線維化という事になりますが、血行不全による栄養や酸素の欠乏により
症状が加速されている可能性があります。
なお、これらの顕著な例が、脳梗塞によって生じる脳の血行途絶領域である障害部位の
線維化(結果的には脳萎縮に見られる側脳室の拡大)という事になります。
 
 余談ですが、各組織の悪性腫瘍(主に癌)の発生は、成熟細胞のDNAが各種の要因
で突然変異を生じて幼若化して悪性腫瘍に変化するという説が長らく信じられてきまし
たが、現在では、幹細胞から成熟細胞への分化の際の細胞分裂時の紡錘糸による染色体
の牽引機能の不全による染色体(DNA)の分配のエラー(悪性腫瘍の核が正常な2倍
体以上の染色体数を生じる原因)が悪性腫瘍化の大きな原因という事が判明しています
ので、その組織への血行障害による栄養障害が生じる事が幹細胞の機能不全(細胞分裂
時の紡錘糸の材料不足)をもたらす大きな要因となっている可能性があります。
細胞分裂時の紡錘糸の牽引機能不全を生じるもう一つの可能性は、血行障害時に生じる
酸素欠乏状態がミトコンドリアに於けるATP産生を阻害する事で、紡錘糸の牽引時に必
要なATP(エネルギー源)が不足する為である可能性があります。
 なお、腫瘍組織では、腫瘍細胞の増殖の為に豊富な酸素と栄養を必要とする事から、
腫瘍組織には栄養血管の増生(腫瘍の悪性度である増殖度に比例?)を伴う事が多く、
兵糧責め目的の治療も試みられていますが、この新生血管は交感神経の支配からは逸脱
している可能性が高く、むしろ血行が豊富である事を逆手にとって、腫瘍の栄養動脈に
選択的に高濃度の抗がん剤を注入し、戻しの静脈路を可能な限り狭めて高濃度な抗癌剤
が腫瘍組織に長くと留まる様な方策を講じる事がより効果的ではないかと考えます。
 再生不良性貧血等の骨髄抑制状態も、血行障害に起因する骨髄の幹細胞から赤血球等
が分化する際の材料不足が発症の原因の可能性があると考えます。
 各種の要因で進行する慢性腎機能障害(特に急増している糖尿病性腎症)の場合も、
栄養血管の血行改善策を再検討する価値があると考えます。
なお、腎障害時に伴う蛋白尿の出現の原因は、腎の栄養不足による腎の血液濾過を担う
糸球体の半透膜の材料不足に起因する半透膜の破綻が原因の可能性があります。
長期透析患者やRA歴が長い患者に生じるアミロイドーシスは、マクロファージの貪食
能では処理できない食べ残しであるアミロイドというタンパクが全身の組織に沈着する
難治性の疾患であり、透析のシャント側の手根管の横手根靱帯に沈着して手根管症候群
を併発する事が多く認められます。
一般的に手関節近くの橈骨動脈と近傍の橈側皮静脈との吻合を行い、血流が増加し拡張
した橈側皮静脈の中枢側の数十センチの皮膚を毎回の透析時の穿刺部(血液の引きと戻
しの2カ所)としていますが、このアミロイドの沈着は、橈骨動脈の血流の多くを静脈
に逃がすことで生じる末梢の血行障害(酸欠状態)であるスチール症候群によるものと
考えられています。
すると、RAも血行障害で生じていると考えますので、RAにアミロイドーシスが合併す
る事も頷けます。
アミロイドが処理できないという事になると、増加を阻止するしか治療の方法は無い事
になりますが、組織の血行を増加させる事でアミロイドの生成を抑え、沈着の増加によ
る病状の悪化を防ぐ事が可能になるかも知れませんし、新陳代謝が亢進した組織では、
酸素欠乏状態及び飢餓状態で元気を無くしたマクロファージに活力が戻り、アミロイド
を少しは貪食して処理し、アミロイドの沈着を減少させる事が出来るようになるかも知
れません。
 また、コントロールに難渋する高血圧状態の場合は、交感神経過緊張の重積状態(極
限状態が悪性高血圧?)が背景にある可能性を再検討すべきと考えます。
実際、頸部や腰部のトリガー?ポイント部への局麻剤の注入(ブロック)の数分後に血
圧の低下(収縮期血圧が10~20低下)を認めています。
ブロック後に軽い低血圧発作(めまい感)を生じる事もありますので、この様な交感神
経を介する血圧低下の効果は決して極小ではない事が解りますので、比較的大きな動脈
の拡張により血行が大幅に増加している事も推測できます。
頚部や仙腸関節近傍のトリガー?ポイントのブロック時には、実施前と実施後(約30
分)に血圧を測定して、急激な血圧の変動による副作用(TIA等)に対処する準備を
整えておく事が必要と考えます。
これは、汎用に行われている仙骨裂孔よりの硬膜外ブロック時の血圧変動のチェックに
準じれば良いと考えます。
高齢者の場合は、ブロック時に使用する局麻剤(当院では1%カルボカイン)の合計が
5ccを超えない事が、急激な血圧低下によるTIAや脳梗塞の発症を予防する為にも
肝要と考えます。
尚、この血圧降下作用は、これまでの一般的な降圧剤とは異なった機序に基づいている
と考えますので、突発的な高血圧時(交感神経過緊張状態)の簡便な応急処置法として
大変有用である可能性があります。
ある種のアレルギー疾患(アトピー性皮膚炎、気管支喘息等)も、交感神経の関与を再
検討する価値があると考えます。
特に、アトピー性皮膚炎は、様々なストレスが発症の誘因となるケースが多く、交感神
経過緊張状態に基づく皮膚の血行障害が外敵から防御する皮膚のバリアの機能を低下さ
せている可能性があります。
また、気管支喘息も、交感神経過緊張状態に基づく血行障害が外敵から防御する気管の
粘膜のバリアの機能を低下させている可能性を検討すべきと考えます。
この様に、皮膚や口腔や腸管等の粘膜のバリア機能が、虚血状態に起因する酸欠や栄養
障害により破綻する病態(潰瘍)が各組織で生じている事が推測できます。
円形性脱毛症は強いストレスが原因と考えられていますので、酸欠や血行障害が原因で
生じると考えられている禿(ハゲ)も、交感神経の緊張状態をブロックする事で改善す
る可能性があります。
 性ホルモンの分泌低下に起因すると考えられている更年期障害(自律神経失調様症状)
も、自律神経の不調の状態の機序を再検討する価値があると考えます。
交感神経過緊張状態が癌免疫機能を抑制する事が知られていますので、交感神経過緊張
状態を解除する事で癌免疫機能も含めて全体の免疫機能を高める事ができると考えます。
 
遺伝的要素が強い低血圧傾向が長寿の最も大きな要因と考えられていますが、この本質
は、これまでに述べました病態である血行不全となる交感神経過緊張状態が全身的に生
じる事により全身の血圧が上昇して高血圧になるパターンとは反対の状態にあり、全身
の臓器への血行が障害無く潤沢に維持されている為に全身の各臓器の老化を防いでいる
事を物語っているものと考えます。
交感神経の過剰興奮性が抑制されている状態であり、副交感神経優位の状態の可能性?
一見すると、低血圧の状態は末梢組織への血行が低下している様に感じますが、心不全
やショック状態で無ければ、血液の一回拍出量は殆ど同じであり、血液の通路(血管腔)
が狭いと血流に抵抗が生じて血圧(血液という液体の圧力)が上昇(高血圧)する事と
なり、末梢への血流量も低下する事となりますが、血液の通路(血管腔)が広いと血流
に抵抗が生じる事が無く血圧が上昇する事も無く、末梢への血流量も低下する事があり
ません。
つまり、高血圧状態は、末梢組織の血行不全状態を暗に示しているものと考える事が出
来ますので、血圧の正常化が如何に重要であるかが理解できますが、末梢動脈の血行を
改善(例えば交感神経の過緊張状態の改善)する事で血圧(動脈圧)を正常化する事が
肝要と考えます。
そこで、心拍出量を低下させる事で高血圧状態を改善しようとする試みは、末梢動脈の
血行不良状態を更に悪化させる可能性があります。
なお、脳梗塞時の一過性の高血圧状態は、脳の血行を増加させて脳虚血状態を改善しよ
うとする生体の防御反応であり、無闇に血圧を低下させる措置は脳虚血状態を悪化させ
るだけであり、予後を悪くさせる大きな要因となりますので注意が必要です。
高血圧が原因で生じる脳卒中(脳出血や脳梗塞)や虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)
の予防として降圧剤が使用されていますが、更に、他の組織の虚血状態により生じると
考える多くの難治性の慢性疾患の症状を改善させている可能性も見逃すことは出来ない
と考えます。(疫学調査を期待します。)
老化現象(骨粗鬆症、皮膚の萎縮、老人性難聴(+耳鳴)、白内障、緑内障の一部、老視、
老年期認知症等)は、経年的な緩徐な血行障害による各組織の疲弊状態の可能性があり、
血行を増加させる事で、多少の若返りが可能になるかも知れません。
又、血行を改善する事で、損傷組織の修復を促進させる可能性があり、各組織の陳旧性
の障害(腎障害、肝障害、心不全、呼吸不全、気管支喘息発作、脳卒中後遺症、外傷後
の関節の拘縮、難治性の褥瘡、足部の爪真菌症等)が改善する可能性があります。
現に、血圧降下剤の一部で、腎保護作用(腎機能の悪化を阻止する作用)を認めていま
すが、この本質は、交感神経の過緊張状態に依る腎臓を栄養している動脈の平滑筋の過
剰収縮に起因する血行障害状態(この状態が高血圧)に於いて、血圧降下剤の働きによ
り交感神経の平滑筋への収縮作用を阻害し血管が拡張(この結果、高血圧が改善)して
血行を改善し酸素や栄養の供給が改善する事で腎臓の組織の飢餓状態を改善している事
が示唆されます。
 
動脈硬化は高血圧の原因では無く、関節の不安定性を補強しようとする生体防御を目的
の骨棘形成と同様に、高い血圧に耐える為に動脈壁を補強しようとする生体防御の結果
(動脈肥大?)の可能性があります。
血中のLDL濃度が高くなると、動脈壁にLDLが付着する様になり、これを処理する
内皮細胞の能力が限界を超えると、LDLは酸化LDLとなり、血中の単球が血管内皮
より進入してマクロファージとなって酸化LDLを異物として貪食(泡沫細胞化)して
不死化(アポトーシスを起こさない状態)して動脈壁内に居座る事で、動脈壁のアテロ
ーム硬化が促進されるとの事ですが、更に、動脈壁の栄養血管の血行が相対的に低下し
て血管内皮細胞の機能が阻害され、酸素欠乏や栄養不良による動脈壁の硬化(線維化や
石灰沈着)へと進展するプロセスが考えられます。
 
尚、血圧の測定を上腕動脈で行う事が一般的ですが、左右差が見られる事も多く、全身
の血流状態を反映すると考えられる血圧を客観的に反映する測定方法(一案としては、
簡易では左右の上腕動脈の血圧の平均値や、精密ではドップラー流量計による大動脈の
血流速度(血圧に比例)の測定)を確立する必要があると考えます。
頸部や仙腸関節部のトリガー?ポイントの本来の生理学的な意義は目下の所よく分から
ないという事が本音ですが、外部の環境状態(温度や湿度や気圧(≒酸素分圧)等)を
感知する交感神経系の自由終末(?)及び知覚神経の自由終末が比較的に高密度に存在
している所という事が言えると考えます。
これを示唆する症状としては、天気が悪くなる(低気圧)時に、症状の悪化を生じる事
が度々ありますが、低気圧が交感神経過緊張状態という過敏状態(過剰反応状態)を更
に増悪させる事で生じているものと考えます。
これらの部位に外力による負荷が掛かり過ぎた場合に、本来の自律神経の機能から逸脱
した状態(交感神経の過緊張状態や正反対の虚脱状態(ショック状態))に陥る事になる
のではないかと推測します。
 
 ここで、総括的な纏めを致します。 
仙腸関節の疼痛の存在に初めて気付いてから約20年になりますが、最近、仙腸関節の
疼痛以外に、予想だにしない同側の臀部から下肢にかけての不定愁訴(俗に坐骨神経痛
と呼ばれている症状名ですが、坐骨神経領域の疼痛という意味で使用する事が適切)に
も仙腸関節近傍のブロックで効果が認められる事が分かり、更に、第7頸椎レベルの左
右の後頚部のトリガー?ポイントのブロック(頸部トリガー?ポイント?ブロック)で
も同側の上肢や顔面や胸腹部の諸臓器の阻血状態に起因する諸症状を改善する可能性が
強くなってきました。
ここで、改めて述べますが、頸部と腰部のトリガー?ポイントはこれまでに述べました
部位に限定して使用していますし、これまでの臨床経験から、この左右の合計4カ所の
ブロックで全身の交感神経の過緊張状態を改善できる可能性があるものと考えています。
背腰部痛(主に筋肉の阻血痛)の場合のトリガー?ポイント?ブロックを実施する際に、
頚部トリガー?ポイントと腰部トリガー?ポイントの守備範囲の境界は、大体、頸胸椎
の境目から仙腸関節までの距離のほぼ中間位である事を経験しています。
内臓の栄養血管に関する守備範囲の境界に付いては、臨床経験が殆ど有りませんので、
これからの課題です。
仙腸関節内注入のつもりで行ってきた手技が仙腸関節外の注入である事が分かった時点
では、同部の注入がトリガー?ポイント?ブロックという認識は全くなかった訳ですが、
頸部のトリガー?ポイント?ブロックとの様々な類似点を考察した結果、これまでの腰
部の注入が同部のトリガー?ポイントへの注入であった事が分かり、瓢箪から駒の例え
の様に、トリガー?ポイント?ブロックの真の効果が、所属の交感神経の過緊張状態を
ブロックする事で阻血状態の組織の血行が改善し、阻血痛が改善する事が判明したもの
と考えています。
つまり、従来のトリガー?ポイント?ブロックは、局所麻酔剤を使用する事で、除痛効
果が主たる目的で実施されていますが、実際の効果は、硬膜外ブロックや疼痛部位への
局所麻酔剤の注入の様に直接に疼痛をブロックする訳では無く、血行障害による酸欠に
よる阻血痛が生じている組織の血行を改善する事で、酸欠状態を改善する事で、疼痛が
改善するという事になります。
この意味する事柄は、対症療法的な除痛対策に限らず、組織の血行障害に起因する多く
の病態を、根本から改善する(根本治療)可能性を秘めているという事になります。
現在、多くの鎮痛剤が疼痛時に対症療法として使用されていますが、交感神経の過緊張
の悪循環を断ち切る一手段としての効果は期待できますが、生体防御機能にとって緊急
時の局所安静を要求している大切なアラームのスイッチを切る事になり、病状を悪化さ
せる原因になりかねません。
上肢や下肢の様々な不定愁訴が有りますが、俗に言う神経痛なる症状名は本当に神経自
体の疼痛であるのか、大変疑わしいと思う様になりました。
難治性の神経痛と固く信じられている帯状疱疹後神経痛も、トリガー?ポイント?ブロ
ックで疼痛の改善を認めていますので、阻血痛ではないかと考えています。
椎間板ヘルニアの急性期の耐え難い疼痛は代表的な疼痛として特に有名ですが、これは、
ヘルニア塊による神経根周囲の圧迫による神経を含めた周囲の組織の阻血痛ではないか
と考えます。
その根拠は、神経根部は周囲が椎間孔という骨組織が存在し、ヘルニア塊による圧迫の
圧力を周囲に逃がすゆとりが少なく、圧迫のダメージが大きくなる為と思われますが、
それ以外の脊髄や馬尾神経の部位では、ヘルニア塊の圧迫が生じても、のれんに腕押し
の状態で圧力が逃げる余裕がある為に、ヘルニア塊による直接的な圧迫による阻血状態
や神経の圧迫症状(神経麻痺)が免れる事になるもの考えます。
尚、知覚神経の障害によるしびれ感は阻血時のしびれ感(知覚過敏な状態が主)と鑑別
を要しますが、知覚検査にて判定可能です。
ここで、従来から行われているトリガー?ポイント療法について、少し説明します。
アメリカのTravellとSimons氏によって、1983年に「トリガーポイント?マニュアル」
という本が出版されてから、トリガーポイントに関連した研究が世界中に広がりました。
トリガーポイントの概念は、慢性の疼痛部位に二次的に生じる疼痛の引き金(トリガー)
の部位との事であり、私が使用しているトリガー?ポイントとは基本概念がことなりま
すが、トリガー?ポイント部位の圧痛に伴う関連痛的な症状も似たところが有ります。
勿論、基本概念は異なっていますが、身体の同一部位の症状であり、基本概念に基づく
解釈の違いだけという言う事が出来ます。
これは単なる偶然のこじつけかも知れませんが、頸部のトリガー?ポイントから肩関節
更に上肢にかけての構造と、腰部のトリガー?ポイントから股関節を経由して下肢にか
けての構造は、本来は四足動物の前足と後足の関係であり、二足歩行に進化した関係で、
肩関節が非加重関節になった以外は、運動生理学上は殆ど同じ様な機能を継承している
ものと考えますと、頸部と腰部のトリガー?ポイントが神経生理学的に同様な機能状態
にある事は、必然的な結果かも知れません。
今後、ブラック?ボックスの状態にある臨床経験に裏打ちされた頸部と腰部のトリガー
?ポイントに関する解剖生理学よる構造及び神経生理学による神経機能の徹底的な解明
によりホワイト?ボックス化されて、最適なトリガー?ポイント部位が同定され、最適
な薬物及びその適量が決定される事を期待します。
その結果、交感神経系の新しいシステムの全貌が明らかになる事を期待します。
頚部のトリガー?ポイント?ブロックは、星状神経節ブロックと同様の血管の拡張作用
による血行の増加が認められる事から、交感神経節における過剰な刺激の伝導を阻害し
ている事が推測されますが、どの様な機序で刺激の伝導がブロックされているのかは不
明です。
また、これまでの臨床の経験上、1回のブロックで3~4日間の症状の改善が認められ
ますが、血管が拡張して血行が増加している期間が正味どの位であるかは不明です。
なお、ブロックの数分間後に血行改善が認められますが、阻血痛の改善が直ちに認めら
れる場合もありますが、数時間後に効果が出てくる事もありますので、この点の説明を
十分に行っておく事も必要です。
星状神経節のブロックの場合も同様な疑問があります。
今後、解剖生理学に於いて、その全貌が解明される事を切に期待します。
 交感神経による血管の収縮作用でα1の作用を選択的にブロックするα1ブロッカー
としてのドキサゾシンメシル酸塩(商品名;カルデナリン錠(ファイザー株式会社))は、
1日1錠の服用で血圧降下作用が持続するという事で、レイノー症状を改善する作用も
あり、末梢の血行障害を持続的に改善する可能性があります。
尚、α受容体遮断薬においては血圧降下に伴いフィードバックとして生じる反射性頻脈
が副作用として生じるという問題点がありますが、α1β遮断薬であるカルベジロール
(商品名;アーチスト錠(第一三共株式会社)、カルベジロール錠(ニプロファーマ株式
会社))は頻脈の原因となるβ1受容体も同時に阻害するため、副作用を未然に防止可能
となりますが、気管支喘息等には使用禁忌となります。
内服という最も簡便な治療方法という最大のメリットを生かすという意味で、その他の
降圧剤も、今後、末梢血行改善薬としての効果を試してみる価値があると考えます。
この様に、緩徐な降圧剤に依る持続した血行増加を期待する治療手段をベースとして、
疼痛増悪時にパルス療法的にトリガー?ポイント?ブロックを短期間に集中して行う事
で、トリガー?ポイント?ブロック単独の場合よりも更に有効な治療効果をもたらす事
が期待されます。
 
ここで振り返って考えますと、仙腸関節の不安定性を起因とする仙腸関節炎に伴う疼痛
だけを想定しておりましたが、その他の交感神経の過緊張状態に依ると考えられる不定
愁訴を伴う事が多く、老年期に発症する仙腸関節痛の場合は、様々なストレスで生じる
交感神経の過緊張状態に起因する仙腸関節周囲の組織の血行不全による仙腸関節周囲の
阻血痛である可能性が高くなるのではないかと考えています。
更に振り返りますと、少年期の仙腸関節不安定症に起因する仙腸関節周囲の疼痛も、暫
く経過する内に、仙腸関節周囲の阻血性の疼痛が主体となっている可能性があります。
これらの症状の病態を統一的に大局的に扱おうという主旨で、これらの症状を惹起して
いる本態が交感神経の過緊張状態という事で、「交感神経過緊張症候群」という新しい概
念の疾患群を提唱したいと思います。
又、これまで使用している仙腸関節のブロックを、今後、腰部のトリガー?ポイントの
ブロック(腰部トリガー?ポイント?ブロック)という手技名に変更したいと思います。
治療目的は、従来のトリガー?ポイント?ブロックとは異なりますが、手技上は、保険
点数上の従来のトリガー?ポイント?ブロックに準じて行っていますので、保険点数上
の手技名も従来のトリガー?ポイント?ブロックで宜しいのではないかと考えています。
但し、従来のトリガー?ポイント?ブロックとは基本概念が異なりますので、別の手技
名に変更すべきとの指摘があれば、その時に適当な手技名に変更する事にします。
(例えば、交感神経ブロックと変更して、レセプト点数はトリガー?ポイント?ブロッ
クの半分程度)
この2カ所(左右併せて4カ所)のトリガー?ポイントのブロックで、交感神経の過緊
張状態にて生じている全ての血行障害に起因する組織の病態を改善できるかどうかは、
今後の臨床上の検証にて明らかになると思います。
なお、頸部のトリガー?ポイントが関与する症状&疾患を一括して頸部交感神経過緊張
症候群(略して頚部症候群)と呼び、腰部のトリガー?ポイントが関与する症状&疾患
を一括して腰部交感神経過緊張症候群(略して腰部症候群)と呼ぶ事を提案します。
疼痛の原因は様々ですが、外傷や過剰負荷等の外的要因が無くて、生じる疼痛の多くが
血行障害に起因する阻血痛の可能性が高い事を念頭に置いて、検査、診断、治療を実施
する事が肝要と考えます。
なお、交通事故等の外傷により惹起される頚部周囲の多彩な症状を外傷性頚部症候群と
いう症候群名で総称していますが、腰部周囲の多彩な症状に対して、外傷性腰部症候群
という症候群名を付ける事を提案します。
以前は、ぎっくり腰の場合は、大半の病態が仙腸関節の捻挫と判断して、仙腸関節捻挫
という病名を付けておりましたが、現在では純粋な仙腸関節捻挫は極めて少ないと判断
し、外傷性腰部症候群が最も相応しい病名と考えています。
脊椎の圧迫骨折や下肢の骨折後に生じる頑固な腰部周囲の疼痛は、骨折痛という最大級
のストレスにより交感神経が過緊張状態となり、血行障害の悪循環が生じている状態(外
傷性腰部症候群)であると考えられます。
私は整形外科の一開業医であり、トリガー?ポイント?ブロックや関節内注入や鎮痛剤
やパップ剤の処方や理学療法程度の月並みの治療方法しか知りません。
最近、交感神経が関わる病態についての文献を検索しておりますが、多くの先人達の様
々な考えに基づく治療(オリジナルのトリガー?ポイント?ブロック療法、温熱&冷罨
療法、ツボと呼ばれる部位への鍼灸治療、カイロプラクティック療法、各種の指圧によ
るマッサージ療法、精神療法、薬物療法、食事療法、運動療法等)が行われている現状
を目の当たりにしますと、その目指すところは交感神経の過緊張状態を如何にして改善
するかという只一点に集約する事が出来るという感を強くします。
余談ですが、鍼治療で血行が改善する事になると考えますが、ブロックとは正反対の神
経終末を刺激する事で、何らかの作用機序にて交感神経の過緊張状態を改善している事
になるものかも知れません。
星状神経節や腰仙尾部の交感神経節の局麻剤等によるブロックが熟練した手技を要する
のに対して、トリガー?ポイント?ブロックは手技が極めて容易な為に、一般臨床医で
あれば内科系や外科系を問わず副作用の心配も殆ど無く実施できるという大きなメリッ
トがあります。
交感神経過緊張症候群の可能性(文献15参照)がある場合は、トリガー?ポイント?
ブロックを積極的に実施する価値があると考えます。(なお、必要以上の乱用は厳に慎ま
なければなりません。)
トリガー?ポイント?ブロックは、現在の保険診療上は、関節内注入等の様な週一回の
縛りはありませんので、重症の場合は毎日実施する事で最大の効果を期待できますし、
ブロックの効果は3~4日間持続する場合が大半ですので、3日に一回程度のブロック
を8回程度継続(約1ヶ月間)する事で、多くの例で略治に近い状態まで改善できるも
のと考えています。
また、初回のブロックで効果(疼痛やしびれ感の改善)が認められた場合は、他の鎮痛
剤等の対症療法とは異なり、疾患自体を治す効果がある事を説明し、連続してブロック
を実施して一気に症状を回復させる為に集中して治療を行う事が肝要です。
また、初期の強い疼痛による交感神経の過緊張の悪循環を断ち切る為の意味合いでの鎮
痛剤の短期間の服用は理に叶った手段であると考えますが、長期に渡り漫然と鎮痛剤の
連用を続ける事は、原因である血行障害による阻血痛(アラーム)を抑制する効果だけ
であり、疼痛という症状が抑制される事でトリガー?ポイント?ブロックが十分に行わ
れなくなると、血行障害に依る組織障害の進行を阻止し組織の状態を改善する事が出来
なくなり、シャルコー関節の病態に似た病状の進行を来す可能性がありますので、屯用
の鎮痛座薬で我慢する様に指導しています。
なお、改めて注意事項を申しますと、80歳以上の高齢者の場合は、一回のブロックに
使用する局麻剤(当院では1%カルボカイン)の合計が5ccを超えない様に注意して、
急激な血圧低下による脳虚血状態(一過性脳虚血発作(TIA)や脳梗塞)の発症の防
止に努める必要があります。
星状神経節照射療法(星状神経節に深達性の高い波長帯高密度近赤外線のレーザー光線
を照射する治療法;文献15)は、温熱療法の一種と考えますが、治療効果に優れてい
るとの事であり、トリガー?ポイント?ブロックよりも更に容易で副作用が極めて少な
く、注射は絶対拒否という場合や幼小児(特に、血行障害が原因と考えられる成長痛に
推奨)にも抵抗なく勧められるという良い事尽くしという事で、一般臨床医全てに薦め
られる治療法という事が出来ます。
ブロックに比べて治療効果が今一不確実且つ照射時間(≒効果時間)が数十分と短い事
と高価な機器の購入が玉に傷というところでしょうか!?
更に、腰部のトリガー?ポイント(或いは、同領域の交感神経節)への照射でも或る程
度の効果が期待できるものと考えます。
星状神経節自体への照射と対応する頸部のトリガー?ポイントへの照射で、症状改善に
優位差が生じる可能性があります。
星状神経節照射が、神経やシナプス自体にどの様に作用して神経ブロック様の効果を生
じるのか興味がありますので、この結果が待たれます。
例えば、近赤外線を照射する事による組織の温度上昇により星状神経節を栄養している
血管を拡張させる事で星状神経節の機能を正常化させている可能性もあります。
この様に考えると、トリガー?ポイント?ブロックでも、交感神経節自体の過緊張状態
を改善する働き並びに、交感神経節自らを栄養する血管の拡張により交感神経節の栄養
不良に起因する異常状態をも改善するという二重の働きを行っている可能性があります。
更に立ち戻って、交感神経の過緊張状態を惹起する原因は様々なストレスである事が言
われていますが、心因性及び外因性のストレスが原因で交感神経が過緊張状態となり、
近傍の栄養血管の収縮による交感神経節の栄養不良状態が生じる事で交感神経節の異常
興奮状態に拍車が掛かるという様な悪循環が生じている可能性があります。
その中で、疼痛が交感神経を過緊張させる最大のストレスと考えますと、外傷や術後の
疼痛を如何に軽減するかが、直近のRSDの発症や治癒の遷延化を未然に防ぐ為の有効
な手段と考えます。
また、不安状態は交感神経を比較的軽度に刺激する事になりますが、長期に及ぶ事で、
多くの重篤な疾病を引き起こすことになると考えますので、その兆候が認められたら、
躊躇せず不安状態を取り除く手段を講じることが肝要と思います。
頚部や腰部のトリガー?ポイントを圧迫すると、圧痛と共に所属の領域に放散痛が生じ
る事の機序は不明ですが、一つの案として、トリガー?ポイント部位に存在する温度の
知覚神経の自由終末を圧迫する事で反射的に交感神経を緊張させて所属の動脈を収縮さ
せて血行を低下させて組織の一過性の酸素欠乏状態を惹起して阻血痛が生じている可能
性があります。
そこで、その部位が交感神経の適度な緊張状態を保つ為の末梢のセンサーの役目を果た
しているのではないかと想像しますと、同部に局所麻酔剤を注入する事で、センサーの
機能を一次的にブロックして交感神経の緊張状態が緩む事で、動脈の収縮が低下して、
末梢の血行状態が改善するというシナリオは如何でしょうか?
今後、交感神経過緊張症候群に関して各科の専門家による大局的な研究(視床下部の自
律神経系の中枢と末梢の自律神経節(交感神経節)及び全身の臓器の栄養動脈(大動脈
から中小動脈を経由して細動脈までの平滑筋、更に直接酸素や栄養の供給や二酸化炭素
や老廃物の排除を行う一層の内皮細胞から成る毛細血管(全身で約1500億本で全長
約10万kmで地球を約2周半する長さ)の入り口に於いて血液の流れを調節している
平滑筋であるスフィンクター)や、静脈系の粗な平滑筋に接続している交感神経の膨大
なネットワークの生命維持に必須な時々刻々変化する各組織に必要な血流を過不足無く
瞬時に対応し、全身の血行のバランス(血圧が高からず低からず)を常時統合的に司っ
ている機能の全貌の解明)や、その成果に基づく新たな病態の発見や新たな治療法の開
発を期待します。
現在、高血圧の治療剤(降圧剤)の大半は、交感神経が支配する動脈の平滑筋の緊張を
弛緩する機序を利用する事で血圧を低下させて、動脈硬化や脳卒中や狭心症や心筋梗塞
の発症を予防するという目的で使用されていますが、血管を拡張させる事で、末梢の支
配領域の血行を改善させることが、意図以外で行われている本来の主要な目的ではない
かと考えます。
今後、交感神経過緊張状態を緩和して阻血状態の末梢循環の改善に特化した薬剤の開発
も期待します。
なお、スフィンクターは、主に寒冷刺激(皮膚外の温度の低下)で収縮して毛細血管の
流れを遮断し、バイパスの役目をしている直前の動静脈吻合を通り静脈系に戻る事で、
組織を循環する血液の温度の低下を防ぐ働きを担い、寒冷刺激が無くなって元の弛緩状
態に戻るまでに30~40分程度の時間が掛かりますので、トリガー?ポイント?ブロ
ック(ブロック後、数分以内で効果が発現)の標的器官では無いと考えます。
そこで、温熱療法がトリガー?ポイント?ブロックを補完する簡便な治療法と考えます。
 現代は飽食の時代という事で、飢餓という概念が一般的に忘れ去られようとしている
現在に於いて、飽食の時代故のインシュリンの相対的更には絶対的な欠乏による組織へ
の栄養の取り込み障害による組織の飢餓状態が生じる糖尿病と同様に、組織への酸素や
栄養の供給路としての血管の交感神経過緊張状態に依る持続した狭窄状態により組織の
緩徐な酸素欠乏状態を伴った飢餓状態(ダブル?パンチ)が進行する事で、多くの慢性
の疾病が発症して進行増悪しているのではないかというシナリオが成り立つと考えます。
生体のホメオスタシスの中核を司っている自律神経系の内で主に内臓系を支配している
交感神経と拮抗的に機能している副交感神経(迷走神経)の機能異常も視野に入れて、
これからも研究すべきと考えます。
また、自律神経系は生命維持(約50兆個もの細胞の集合体としての調和のとれた営み)
に必須の全身の組織への的時適量な血液循環の分配の統括を行っているだけでは無く、
ホメオスタシスを維持する為の内分泌系(各組織の機能を調節する多種多様なホルモン
の分泌)や免疫系(壮大で精緻な防衛機構や組織構造の維持機能)にも深く関わってい
る事を忘れる事は出来ません。
私がこれまでに述べました事柄は、交感神経過緊張状態に対するトリガー?ポイント?
ブロックという臨床治療上の乏しい経験に基づく病態の全体像のほんの一断面を垣間見
る事で推測した極めて単純化した見解であり、知識や理解力の不足から生じる多くの間
違いや勘違いが混在している可能性があります。
今日迄に、急激に血行が途絶する疾病に関する病態の解明及び治療法はほぼ確立されて
いると考えますが、軽度に血行が障害されて緩徐に病態が進行する疾病に関する研究は
殆ど行われていないという印象がありますが、この様な病態を想定する事で、これまで
の病態の研究に於いて重要な空白部分が埋められる事で、新しい知見が得られる可能性
が大であると考えます。
また、未だに原因が不明の難病の場合に、虚血状態など全く無縁と考えられている場合
にも、一度、所属のトリガー?ポイントにブロックを行い病状の経過を観察する価値が
あるかも知れません。
それぞれの臨床の場で採否を決定されるべきと考えます。
皮膚表面の血行動態は、サーモグラフィーで視覚的に簡便にリアルタイムに経過を観察
出来ますので、四肢の血行不全状態及び治療効果を確認する最良の検査法と考えます。
また、左右の肘窩部での上腕動脈でのブロック前後の血圧測定も上体の血行改善を確認
する簡便な方法であり、下体の場合は足背動脈の血圧測定が簡便です。
なお、サーモグラフィーでは内臓の血行の動態を観察する事は出来ませんので、血圧の
変動で、間接的に血行の変動を観察する事になります。
RAの重症度の指標を血液中の特異的な物質(CRP、リウマトイド因子、抗CCP抗体等)
の濃度及び赤血球沈降速度(ESR)で計ろうとする試みがありますが、組織の阻血状態
の程度を、特異的に簡便に検査する方法の確立も必要と考えます。
このレポートは、2011年10月頃より次々と新しい文献に出会い、徒然に思い付い
た事柄を書きたい放題(多くの間違いや勘違いが存在する可能性があります)に書き足
してボリュームが急激に膨らんで来ました。
このレポートは、現行の原因不明の多くの疾患の病因の解明と治療法の開発に、全く新
しい視点から一石を投じる事を目的としています。
これを試金石として、未だに病因が解明されず原因療法が出来ずに多くの人々が苦しん
でいる疾病の病態の解明及び根治治療に向けての何らかのヒントにでもなれば幸いです。
今後、自律神経系を中核とする3大機能の連携に関わる生命維持の為のホメオスタシス
の総合的な解明に基づく病態の解明及び原因治療の戦略の確立が必要になると考えます。
 様々なストレスで惹起される「交感神経過緊張状態が万病の元」であり、「ストレスを
解消する事が最良の健康法と病気の予防法」という古くて新しい内容の些か誇大広告気
味のスローガンを掲げたいと思います。
 
最後に「仙腸関節不安定症」から「交感神経過緊張症候群」への発展の経緯を箇条書き
にして、このレポートの締めくくりと致します。
 
(1)仙腸関節不安定症の発見
1990年頃から、腰痛症と呼ばれるゴミ溜的な病名(症候群)の大半は、仙腸関節の
疼痛に違いないと思う様になりました。
それまでは、仙腸関節は骨性癒合状態にあり全く可動性がない関節という誤った認識が
整形外科一般の常識でしたが、僅かな可動域を有する事が多くの研究より明らかになっ
ていましたので、病的な過度な可動状態となり、それが原因で起こる仙腸関節の疼痛が
生じる例が多くあることを確認するに至り、仙腸関節不安定症という新しい範疇の病名
を提案しています。
そこで、他の関節内注入と同様に、仙腸関節に局所麻酔剤とステロイド剤を注入して、
同部の疼痛を改善出来ることを実証してきました。
所謂、ぎっくり腰は、仙腸関節の捻挫が大半である事も実証し、仙腸関節内注入で劇的
な症状の改善を実証してきました。
 
(2)下肢の不定愁訴の解釈の変更の切っ掛け
下肢の疼痛やしびれ感は神経症状であるとの従来の常識を私も堅く信じ、この様な症状
が認められるとMRIの検査を行い、神経所見が認められると脊椎外科の専門医に相談
する事を行って来ました。
この常識の嘘が、以後に述べます血行障害に起因する組織のエネルギーの産生に重要と
なる酸素の欠乏状態が惹起する阻血痛(絞扼痛やしびれ感)を見逃す原因でした。
数年前に、仙台社会保険病院の村上栄一先生の仙腸関節由来の下肢の不定愁訴に関する
論文を見て、その様な解釈もあるとの事で、従来の神経障害一辺倒の考えを修正する切
っ掛けとなりました。
 
(3)仙腸関節内注入の誤り
その後、前記の臨床医の他の文献で、仙腸関節刺入は簡単には行えないとの事を知り、
どの部位から注射針を刺入すると失敗無く関注が出来るのかという疑問を解決する為に、
被験者を募り、合計3回の仙腸関節造影を試みましたが、全て関節外にしか造影剤が注
入出来ず、結局、関節造影を行うことが出来ませんでした。
これは、刺入角度を約20度外側に向け、カテラン針よりも長い針でなければ、関節腔
内に到達しないという事で、一般臨床の場で容易く行える手技では無い事が分かりまし
た。
つまり、これまでに行ってきました仙腸関節内注入の手技は、悉く関節外の皮下の局注
に過ぎなかった事が分かりました。
 
(4)下肢の不定愁訴の解釈
仙腸関節内注入として長い間信じて実践して来ました手技(実際は、仙腸関節近傍の局
注)で、臀部や尾骨部の疼痛、さらには股関節(陰股部)周囲の疼痛も同時に改善する
事を経験し、仙骨裂孔よりの硬膜外ブロックと同様に、神経自体のブロックの効果であ
ろうと一時期は解釈していましたが、同部位に末梢神経の本幹が存在することは無く、
大きな疑問でした。
2011年8月頃に、当院の脊椎外科専門医の吉田正一医師から同部に分布する末梢神
経に関する文献を頂き、これらの神経組織が何らかの作用に関係しているのではないか
という感触を掴みました。
 
(5)末梢血管の拡張作用の発見
これまでの仙腸関節近傍の局注で、下肢が熱く感じる様な症状が出現する事を発見し、
同時に血圧の低下も伴う事により、血管が拡張し血行が増加して組織の体温が上昇した
結果である事を確信しました。
そこで、神経生理学の文献を調べた結果、交感神経が血管の収縮を司っているという事
が分かり、交感神経の作用をブロックする事で、血管が拡張して血行が増加して下肢が
熱く感じる様になるという推測を行いました。
 
(6)交感神経過緊張状態により惹起される病態の発見
以上の推測を纏めますと、仙腸関節近傍の局注は、神経のブロックによる神経痛を改善
しているという従来からの常識の線上ではなく、専ら交感神経をブロックして支配血管
を拡張し、血流が増加する事で、阻血状態による症状(阻血痛)が改善するのではない
かという結論になります。
血行が低下すると、支配組織の酸素欠乏状態や栄養障害が生じる事になります。
酸素欠乏状態で惹起される症状として、組織で産生されるブラジキニンによる近傍の末
梢の知覚神経の刺激による疼痛やしびれ感(異常知覚としての過敏状態)が出現する事
となります。
また、血行障害が長期に渡り緩徐に続く事により組織の破壊(線維化)が生じるのでは
ないかと考えています。
なお、しびれ感は、改善するまでに比較的長いトリガー?ポイント?ブロックの治療を
要する事を経験しておりますので、組織の軽微なダメージが生じている事を示唆する症
状と考えます。
ところで、シャルコー関節は、自己防衛の警告の目的の疼痛の発生がブロックされてい
る為に関節の破壊が制限無く進行する病態として捉えられていますが、その背景に中等
度の血行障害が生じている可能性があります。
 そこで、何らかのストレスを起因とする交感神経の過緊張状態が生じる事がこれらの
病態の原因ではないかとの推測から、交感神経過緊張症候群という新しい範疇の疾患群
の存在を考えています。
これまで、上肢や下肢のしびれ感や疼痛は、専ら神経障害が原因である様に一般常識的
に理解されておりますので、血行障害に依る症状であるとの発想に繋がらなかった事も
無理からぬ事と思います。
 
(7)頚部の不定愁訴との関連
頚部の疼痛に対して、局麻剤とステロイド剤の局注が一般的にルーチンとして行われ、
良好な治療効果を認めてきています。
或る時、頚部の基部である第7頸椎近傍の局注の際の注入時に、頭の方までツーンと来
るとの訴えや熱くなったとの感想により、ここも仙腸関節近傍の局注と同様に、何から
の作用により、交感神経がブロックされて、血管を拡張させる事による血行障害の改善
が病態を改善している本態である事を発見しました。
第七頸椎近傍に存在する交感神経節である星状神経節のブロックで、多くの難治性の不
定愁訴を改善する事が以前より実証されています。
つまり、交感神経節をブロックする事で、支配する血管を拡張して血流を増加させる事
は疑いのない事実であり、血行障害に陥っている組織の血行改善がこのブロックの真の
作用である事となります。
そこで、手技が極めて容易なこの部位の局注で、習熟を要する星状神経ブロックと同等
な効果を期待できる可能性を見い出した事になります。
 
(8)従来のトリガー?ポイント?ブロックや中国の鍼灸治療との関連
以上により、仙腸関節近傍の腰部の局注と第7頸椎近傍の頚部の局注により、ほとんど
全身の交感神経のブロックを達成させる事が出来る目処が立った事になりますが、従来
から診療上の点数として認められているトリガー?ポイント?ブロックとの関連性を考
えますと、疼痛の改善(除痛)を目的に行われているこの手技も、本質的には局麻剤に
よる注射部位近傍の直接的な鎮痛作用よりも、交感神経のブロックによる血管拡張作用
による阻血痛の改善が効果の本質であると考えます。
そこで、頚部と腰部の局注を、従来のトリガー?ポイント?ブロックとは治療目的の概
念が異なりますが、(新しい概念に基づく)トリガー?ポイント?ブロックと呼ぶ事にし、
保険点数上も、この手技でレセプトの申請を行う事にしました。
鍼も交感神経の過緊張を改善する事で症状の改善をみているものと推測しています。
 
(9)これからの解決すべき課題
頚部と腰部の局注により交感神経がブロックされる機序は、目下のところ不明です。
腰部は、前に述べました文献でその手掛かりが掴める可能性がありますが、頚部は白紙
の状態です。
交感神経系は、末梢の要所に神経節を有し交換神経の刺激伝達の調節を行っていますが、
末梢神経の自由終末のセンサーに於いて、周囲の主に温度環境の変化を逐次交感神経節
に信号を送り続けている事で適度な交感神経の信号が末梢の動脈の平滑筋を働かせて、
血管を適度に収縮させる事で、限りある大切な血液の全身の組織への配分に於いて、不
必要な余分な血行を制限する事で、末梢循環を適度に調節している事が推測されますが、
このセンサーが密に集合している部位(トリガー?ポイント)を局所麻酔剤により麻酔
する事により、このセンサーの働きがブロックされる事で、交感神経節への刺激信号が
ブロックされる事となり、星状神経節の直接的な局麻剤によるブロックと同等な全身の
交感神経節のブロックが成立している機序が推測されます。
尚、ステロイド剤を添加する事で、血行改善効果が増強又は延長するかどうかの判定は
未定ですが、酸欠状態の組織では炎症が遷延化して持続している事が多く、炎症を一時
的にも断ち切るという目的では理に叶った事であると考えます。
トリガー?ポイント?ブロックは、3~4日効果が持続する例が大半ですので、症状が
強い例では毎日、確実に症状が改善する為には、少なくとも週2回のブロックが必要と
考えています。
トリガー?ポイント?ブロック後に1週間程度で症状の再発が無ければ、一応、病状が
寛解又は治癒状態にあると判断していますが、その後、症状が軽度再発した場合は、週
一回又は2週に一回程度のトリガー?ポインと?ブロックを行って経過をみる事にして
います。
これまでの経験上、頚部のトリガー?ポイント?ブロックの効果が星状神経節ブロック
と同程度で効果時間も同程度(3~4日)という事で、星状神経節ブロック時の麻酔剤
による神経のブロック時間はせいぜい1~2時間と考えますと、トリガー?ポイント?
ブロックでの交感神経のブロック時間も同程度であると推測されます。
すると、血行改善時間も同程度の1~2時間という事になりますが、血行が改善し酸欠
状態が改善する事で直近の阻血痛が改善する事になりますが、1~2時間の血行改善に
より、症状に表れない組織の疲弊状態が改善して余力が戻る事で、その後の血行障害状
態に於いても、3~4日間はトリガー?ポイント?ブロック前の状態迄には戻らないの
ではないかという推論が出来ます。
そこで、血行の改善時間の延長策として、2時間置きに連続してトリガー?ポイント?
ブロックを行う事や、更にはトリガー?ポイント部の皮下にチューブを留置して持続的
に麻酔剤を注入する方法等で、最大の効果を期待できる事が推測されますが、局麻剤の
極量の問題や最適な継続回数や予期せぬ副作用等も含め、今後の課題とします。
最近、約20時間というこれ迄の局麻剤では最長の作用時間を誇るポプスカインに注目
し、重症例に対する治験を考えています。
 ところで、交感神経の支配組織にも温度センサー様の神経終末が存在し、血流の低下
による組織温度の低下を感知して、交感神経節に求心性の神経信号が送られている事も
推測される事となり、トリガー?ポイント部(神経が密に集約している交差点的な存
在?)でこれらの神経を局所麻酔剤でブロックする事で、交感神経節への信号を遮断す
る結果、組織への血行が増加するというシナリオも考えられます。
今後、神経解剖学による新しい末梢神経組織の発見と神経生理学による作用機序の解明
が期待されます。
 
なお、五十肩(肩関節周囲炎)も、肩関節組織の血行障害が発症の原因という確信に至
っておりますが、この病態が遷延化すれば、組織の栄養障害に依る関節軟骨の菲薄化が
進み、変形性肩関節症に進展するものと予想しています。
荷重関節である股関節や膝関節等の変形性関節症は、荷重過多が原因で発症し進展する
ケースが大半ですが、非荷重関節である肩関節に生じる事を以前より不思議に思ってい
ましたが、遷延化した血行障害に起因する組織の栄養障害により、組織の恒常性の維持
の為の材料不足が生じ、主に軟骨のターン?オーバーが不十分となる事により関節の保
護膜的な役目を担っている軟骨の菲薄化が生じ、最終的には関節破壊が生じる事になる
ものと考えます。
また、肘関節や手関節や指関節や股関節や膝関節や足関節にも、血行障害による五十肩
(肩関節周囲炎)と同じ病態(肘関節周囲炎や手関節周囲炎や指関節周囲炎や股関節周
囲炎や膝関節周囲炎や足関節周囲炎等)が生じ、変形性関節症に進展する事が考えられ
ます。
特に、臼蓋の形成不全が無い一次性の変形性股関節症やO脚やX脚が無い痩せた人や殆
ど歩けない人でも変形性膝関節症に進展する例を度々経験しています。
この考えを進めますと、自己免疫疾患(膠原病)であろうとの考えから、今日まで癌に
次ぐ膨大な研究にも拘わらず、未だに病因の究明にも至らず研究が停滞気味である関節
リウマチの現状を観るに付け、血行障害が病因の本態に違いないと考えています。
 最近、頚椎症性脊髄症という頚部脊柱管の狭窄による頚髄の絞扼に起因する疾患につ
いて、その病因について考えています。
頸椎の運動時に最も可動性が高い領域に後発しますので、その部位の血流が他の部位に
比べて高い必要があると考えますと、相対的な血行不全が生じて瘢痕組織が生じ増加す
る事で、脊髄を絞扼する結果が生じることになるのではないかと考えます。
なお、頚髄症では手指のRSD様の拘縮が併発している例を高頻度に見かけますが、こ
れは、頚髄の絞扼による二次的な変化ではなく、平行して血行障害が手指に及ぶ事で生
じていると考えることが妥当と考えます。
 
 関節や脊柱管に生じる血行障害(栄養障害)に起因する疾患に対応して、バリアーの
血行障害(栄養障害)に起因するバリアーの機能障害なる一連の病態(仮称;バリアー
障害症候群)が考えられますが、以下主な例を列挙します。
皮膚病(皮膚のバリアーの栄養障害)、胃十二指腸潰瘍等(腸管壁の栄養障害により、胃
痛(阻血痛)→胃炎→潰瘍形成→ヘリコバクター?ピロリ感染による慢性化)、間質性膀
胱炎(膀胱壁の栄養障害による膀胱壁の潰瘍)、気管支喘息等(気管支壁の栄養障害)、
血管炎(血管内皮細胞の栄養障害)等が挙げられます。
尚、最も簡便な検査の一つである検尿の際の尿の酸性化の度合いが、腎尿路系の組織の
血行障害に起因する酸欠状態を示唆する指標となる可能性があります。
 
 血行障害に起因する疾患としては、急性障害である脳血管障害(一過性脳虚血発作や
脳梗塞)や冠状動脈の血行不全(狭心症や心筋梗塞)が有りますが、慢性の血行障害に
より生じる病態の概念としては、交感神経の過緊張状態に起因する慢性の血行障害によ
り生じる様々な病態の可能性が殆ど考慮されていない事が現状の様です。
なお、動脈自体の病変(閉塞性動脈硬化症、バージャー病、糖尿病性末梢動脈病変等)
による二次的な血行障害の病態がありますが、これらの病因も動脈組織自体の血行障害
や栄養障害に起因するものであろうと推測しています。
そこで、その他の難治性の多くの疾患の病因も、交感神経過緊張状態に起因する慢性の
血行障害ではないかと推測しています。
そこで、次の段階として、論より証拠の如く、診療の場で手技が極めて容易で副作用も
極めて少ないトリガー?ポイント?ブロックを積極的に行い、治療効果を確かめる事が
先決と考えます。
 
尚、最近、感染や外傷や炎症を惹起する何らかの疾患以外で、末梢循環障害とは正反対
の末梢循環亢進と考えられる慢性的な組織の温度の上昇の例を経験していますが、この
様な病態にある疾患群の存在が示唆されます。
これが、交感神経の低緊張により惹起される末梢動脈の平滑筋の収縮低下による末梢循
環の増加が生じているかどうかを確認する必要がありますが、兎に角、トリガー?ポイ
ント?ブロックで症状の悪化が認められています。
また、トリガー?ポイント?ブロックにて、胸腹部の絞扼感及び肛門からの出血を生じ
た例(大腸ポリープの既往有り)を経験していますが、トリガー?ポイント?ブロック
が予期せぬ症状(新しい知見の発見の可能性)を惹起した可能性が有りますので、細心
の注意が必要です。
また、例えば、右腰部のトリガー?ポイント?ブロックを行った場合に、対側である左
の腰部から下肢や上体の疼痛等の症状が改善する例を認めていますので、交感神経系の
システムとして、一部の組織の異常事態に際して、交感神経の中枢の管理下に於いて、
お互いに張り巡らされている交通枝を介して人体全体の恒常性を保とうとする機能が働
いている証拠ではないかと推測されます。
 
肝不全状態である肝硬変や肺不全状態である肺線維症の場合は、心不全時の心筋の栄養
動脈である冠状動脈の血行改善の為のバイパス手術や動脈の内径の拡張の為のステント
設置等に似た血行改善の為の手術や処置は行われているのでしょうか?
認知症やパーキンソン病や鬱病等の中枢神経系の疾病が、血行障害が原因であれば、脳
の動脈の血量を増加させる事(ステントの設置等)で、症状の改善(根本療法)が可能
となるかも知れません。
 
プラセボ効果という本来は全く薬効のない偽薬を投与する事で、多少なりとも症状の改
善を見る事がありますが、現行では心理的な効果として理解されていますが、服薬して
症状が改善するという期待感からストレスが改善し、交感神経の過緊張が和らぎ、或る
程度の血行が改善する事で血行障害に起因する症状が改善している可能性があります。
裏を返しますと、どうせ効かないだろうと患者を懐疑的で絶望的な感情に陥らせると、
ストレスが改善する事は無く、症状の改善が認められない事となり、逆プラセボ効果と
も呼ぶべき交感神経を逆に緊張させる方向に向かわせる可能性があると考えます。
そこで、様々な癒し効果を治療の場に導入する動きは、患者の精神的な落ち込みを救済
する理に叶った方法であると考えます。
 
私は一整形外科医であり、一般的な文献及び臨床上の治療経験を元に、これまでの拙い
論理推論を行って来ています。
今後は、神経解剖学、神経生理学等の基礎分野に於ける病態の解明及び、その成果を元
にした更に効率的な治療法の開発を期待します。
   
(はじめに)
 慢性関節リュウマチ(以下RA)は、未だ発症機序が不明な自己免疫疾患とし
て認識されているが、炎症の主なターゲットが関節であり、その特異な経過を辿
ることに着目し、その病因について一つの提案を試みたい。
 
(RAの関節病変の特異性)
 RAの患者が骨折や捻挫を受傷し、ギプスにて固定された関節の炎症が一時的
にも鎮静化する事が、しばしば経験される。
この事実は、関節運動に伴う機械的なストレスが及ぼす関節面の微細な傷害が、
RAの関節炎を惹起、増悪させる因子ではないかという事が示唆される。
 関節は、保護膜としての関節軟骨にてその表面がコーティングされているが、
関節運動により絶えず軟骨が摩耗する結果、それを補修する為に軟骨の再生修復
が摩耗と同じ速度で行われてはじめてその組織の恒常性が保たれる。
この様な補修過程は、関節軟骨に限らず生体のあらゆる組織で常時行われている。
骨組織における吸収と再構築の繰り返しも、一見無駄な様で重要な意味があるの
だろう。
 生体の恒常性を保つシステムをホメオスタシスとよんでいるが、生体の各組織
の形態を正常に構築し維持管理するシステムも当然存在するものと思われる。
RAは、このシステムが障害される為に、関節軟骨の再生が不良となり、更に、
運動に伴う機械的なストレスにより、関節の破壊が起こり、その際に遊離される
各種の誘導物質を介してRA特有の一連の炎症反応が生じている可能性は如何で
あろうか!?
例えば、一般的な関節内骨折の場合は、骨折が引き金となる一連の炎症反応が生
じて損傷部位の修復に関与し、短期間の内に炎症が収束する事となるが、RAの
場合では、損傷部位の修復が起こらず、一連の炎症細胞が本来の目的を失い迷走
した状態に陥っている可能性は如何であろうか!?
 RAでは、変形性関節症(OA)で特徴的な骨棘形成が認められないのは何故
であろうか?。
これは、外敵からの攻撃に曝されても、なすがままに任せて殆ど防御反応や修復
機転を惹起ようとしないいわゆる無抵抗主義そのものを連想させる。
また、RAの関節軟骨はOAでの荷重面でのその摩耗とは対象的に、単なる摩耗
だけとは考え難い関節軟骨全体の消失を生じる事実は、傷害破壊された関節組織
を修復し形態を維持する機構が障害されていることを示唆するものといえよう。
 RAには大きく分けて2つのタイプがあり、終末に関節の強直を生じるタイプ
と関節の大規模な破壊を生じるタイプ(ムチランス型)である。
RAが発症した関節は、そのいづれか一方のタイプに集束し、殆ど混合の状態を
呈することがないことも興味深い事実である。
強直型は、関節軟骨(及び軟骨下骨組織)に限局した修復の障害により、軟骨が
消失し、その関節保護作用が低下した結果、軟骨下骨組織への軽微なストレスの
傷害により小規模の破壊を繰り返して、OA様の強直状態に陥ったものであり、
一方、関節破壊型は、関節全体に及ぶ修復機構の障害により、更に原型を止めな
い状態まで関節が破壊吸収され尽くしたものと考えたら如何であろうか。!?
 RAの終末には、炎症が自然に消退してしまう燃え尽きた状態になるが、この
事実も、破壊されるべき組織が消滅した結果、破壊が停止し、破壊物質から遊離
し炎症反応を惹起する誘導物質の産生もなくなった状態と考えたら理解し易い。
人工関節の手術後には、関節炎が消失し再発がなくなる事実も、手術時に関節の
大部分を切除する結果、破壊されるべき関節組織が消失する為であろう。
  最近の疫学調査により、最強の抗炎症剤であるステロイド投与群と非投与群と
では、ある期間後の関節破壊の程度に有意差がなかったとの驚くべき報告がある。
また、RAの炎症の中心と考えられている滑膜を切除する手術術も、遠隔成績で
は非手術例との予後に有意差がないとの報告もある。
これらの事実は、現在正しいと考えられているプロセス(何らかの原因で滑膜炎
等の炎症が生じ、これが関節軟骨、更には関節そのものを破壊する)が本当に正
しいのかという疑問を投げかけるものである。
つまり、このプロセスとは因果関係が逆である、関節の微少破壊が炎症を生じさ
せている可能性を検討する価値が大いにあると思われる。
 
(さいごに)
 個体発生では、一個の卵子が受精後、急速に細胞分裂を繰り返しながら個体の
各組織の形態形成を実に巧妙に整然と行っているが、形態形成が完成後の各組織
の形態の修復維持機構についての研究は、まだ端緒についたばかりであろう。
 当然、この機構が障害される病態の存在が予想されるが、この概念もまだ確立
されておらず、今後の研究の成果に期待したい。
 RAがこの範疇の疾患である可能性を考慮し、研究の視野と視点を拡大するこ
とが、RAの正体を暴き、根本的な治療法の発見の近道となるであろうと考える
ものである。
RA以外のいわゆる自己免疫疾患群やハンセン病、シャルコー関節、急速破壊型
の関節症、特発性脊椎側わん症、骨系統疾患、変性疾患等も、一度はチェックす
べき疾患であろう。
 老化現象の多く(特に骨粗しょう症)も、生体の形態維持機能が生理的に低下
した結果であると考えることが出来る。
また逆に亢進した状態として、強直性脊椎炎等の骨過剰形成の病態が考えられる。
成長ホルモン過剰による巨人症や末端肥大症を考えるとき、RAの治療に役に立
つ可能性も一考に値すると思われる。

 

孙医生读后感:医学博大精深,穷毕生也难全明其理,不断学习,不断进步。

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